Play Like A Girl – エクストラポイント【2020年度第13週目】

Play Like A Girl – エクストラポイント【2020年度第13週目】

第13週目のカレッジフットボール界を最も沸かせたもの・・・。

それはアラバマ大vsアーバン大の「アイロンボウル」でもなく、ノートルダム大vsノースカロライナ大のACC対決でもなく、アイオワ州立大vsテキサス大の死闘でもありませんでした。

それはSEC(サウスイースタンカンファレンス)でも弱小とされるヴァンダービルト大の女性キッカー、サラ・フラー(Sarah Fuller)さんでした。

ヴァンダービルト大では先週の初頭にチームのキッカー界隈でコロナ感染者が出てしまい、FGを蹴れる選手が居なくなってしまうという切羽詰まった状況に陥ります。そこで白羽の矢が立ったのは同大学女子サッカー部でGKを務めていたフラーさんでした。

女子サッカー部GKのフラーさん(Credit: blacksportsonline.com)

フラーさんの所属する女子サッカー部は11月22日にSECトーナメントの決勝戦に進出し第1シードのアーカンソー大に3対1で勝って見事カンファレンスタイトルを確保。フラーさんも先発GKとして出場し3つのセーブを記録するなど勝利に貢献。

その優勝の余韻に浸る間もないまま火曜日のフットボール部の練習に既に顔を出したフラーさん。この時はまだデレク・メイソン(Derek Mason)監督も彼女を起用することを明言はしていませんでした。しかし試合日が近づくに連れ彼女の出場が濃厚的になってくるとメディアはこのストーリーに食いつきフラーさん及びヴァンダービルト大フットボール部に注目が集まります。

御存知の通りアメフトは男子のスポーツだというのが世間一般的な認知のされ方です。激しいコンタクトを余儀なくされパワーとスピードが必須となるこのスポーツは男性選手で埋め尽くされています。しかし実は女子の中にもアメフトをプレーしたいという人は想像以上にいるのです。

実際女子リーグ(National Women’s Football Association=NWFA) も存在し、また高校レベルやそれ以下に視線を落としてみると男子に混じってプレーする女子の姿もちらほら見ることが出来ます。

丁度2年前のスーパーボウルの際に放映された「NFL100」のCMの中にもサム・ゴードン(Sam Gordon)さんというアメフト大好きな女子高校生がフィーチャーされたほどです。

またカレッジフットボール界でもこれまで一握りではありますが女性選手として出場した記録は残っています。最近では2015年度にケント州立大のキッカー、エイプリル・ゴス(April Goss)さんが実際に出場してFGを決めたことがまだ記憶に新しいですが、今まで出場してきた女性選手は全て中堅カンファレンスや格下ディビジョンでの話。今回フラーさんが所属するヴァンダービルト大はカレッジフットボール界でも最高峰と言われる「パワー5」カンファレンス群に属するチーム。もし本当に彼女が試合に出場すれば史上初となる「パワー5」ゲームに出場する女子選手となるのでした。

そして11月27日には正式にフラーさんが遠征先であるミズーリ大へチームとともに移動することが分かり、いよいよこの歴史的瞬間が現実のものになる可能性が高くなってきました。

練習でもGKとして鳴らしたキック力を見せつけて準備は万端!

またフラーさんはヘルメットの後ろに「Play Like A Girl」のフレーズを刻んでプレーすることが事前に明らかになり巻いた。このフレーズには女の子でもプレーできる!というメッセージが込められていますが、元はと言えばチャリティー団体である「Play Like A Girl」に起しています。この団体はスポーツ活動や教育活動を通して女の子たちに勇気や希望を与えることを目標としており、今回のフラーさんの行動に直に通ずるものがありました。

そうして全米中の注目がここまで0勝7敗のヴァンダービルト大に集まっていきます。フラーさんの起用はここまで無敗で苦しむメイソン監督の安い猿芝居だなどと揶揄する声もあるにはありましたが、その大部分の声は彼女の挑戦と彼女を起用しようとしたメイソン監督のオープンマインドな姿勢に称賛を送るものでした。

当日になってもESPNが彼女の動向を一挙手一投足追うほどの加熱さを見せていましたが、当然彼女としては試合に出ることになればベストを尽くすことを最優先にキックオフに向けて集中していきます。

そしていよいよキックオフ。前半はヴァンダービルト大の攻撃から始まるということでフラーさんの出番はおそらくTD後のPATかFGとなると予測されその時を全米中が今か今かと固唾を飲んで見守ったのですが・・・。

この日ヴァンダービルト大は試合開始からミズーリ大にやられっぱなし。TDはおろかFGのチャンスも得ることが出来ないまま失点を重ね21対0と一方的な試合展開。フラーさんの出番はないままハーフタイムを迎えます。

しかし後半はヴァンダービルト大のキックオフから試合再開。ここでとうとうフラーさんが登場!

フラーさんのキックオフは低い弾道で飛び何度かバウンドして相手リターナーが35ヤードラインでキャッチしてそのままダウン。飛距離は正直出ませんでしたが、メイソン監督曰く「作戦通り」ということで見事に試合に出場してカレッジフットボールの歴史に名を刻んだのです。

フラーさんに今回この様なチャンスが巡ってきた背景にはチームのキッカーたちが試合に出れなくなったという特異な状況がありましたが、その他にも大学の授業がリモートで行われておりキャンパス内から急遽キッカーをトライアウトさせるという事ができなかったという事も挙げられます。現役でなくても高校時代にキッカーをしていた学生は探せば居たかもしれなかったのです。

またいたとしてもそこから健康診断をし、コロナ検査をして結果を待ってからチームに合流していたのでは間に合わなかった可能性もあります。しかしフラーさんは前述のように直前まで女子サッカー部で活動しており、健康診断や定期的なコロナ検査は既に済んでおりそのハードルは解消されてたのです。

このような状況が揃ったから出場できたとも言えるのかもしれませんが、ここはフラーさんが成し遂げた偉業を心から祝福したいと思います。

当然そう思っている人は全米中に大勢居たのですが、その中には聞いたことのある名前も多々。

グランドスラムを達成もした女子テニス界の偉人、ビリー・ジーン・キング(Billie Jean King)氏。

NFLニューイングランドペイトリオッツのKニック・フォーク(Nick Folk)。

ヴァンダービルト大のOBでMLBロサンゼルスドジャースの投手デヴィッド・プライス(David Price)氏。

元オクラホマ大監督のボブ・ストゥープス(Bob Stoops)氏。

米女子サッカー界のレジェンド、ミア・ハム(Mia Hamm)氏。

同じく女子サッカー界から史上最高の守護神、ホープ・ソロ(Hope Solo)氏。

NFLワシントンフットボールチームのロン・リヴェラ(Ron Rivera)監督。

とにかくおびただしい数の称賛の声が挙がったのですが、一番心温まったのは以下のようなツイート。

フラーさんを含めその他全ての前人たちが道を示すことでこれから若い女の子たちが大きな夢を持って将来に向かっていくためのインスピレーションが生まれる・・・。それはアメフト選手になることに限らず、世間的に無理だとされるようなことに挑戦していく気持ちを湧き立たせる限りないパワーです。

ただ残念なことにこの試合でフラーさんの出番はこの後半開始のキックオフのみ。というのもチームはなんとミズーリ大に41対0と完封負けしPATもFGもキックオフのチャンスも二度と巡ってこなかったのです。

そしてこの結果0勝8敗となってしまったヴァンダービルト大はメイソン監督を日曜日に解雇。フラーさんを起用したというフェアリーテイルだけでは彼の監督の座を守り切ることは出来なかったということでしょうか。

しかしフラーさんはチームのキッカーたちが復帰してきた後もチームに残って行動を共にしたいと願っているようです。ひょっとしたら今一度彼女の勇姿が見れるチャンスが訪れるかもしれません。もともとフットボーラーではないフラーさんの両親がそれを望んでいるかどうかは別問題ですが(危険を伴うという面で)。

今年は新型コロナの影響で常に崖っぷちに立っているような心境に立たされてきましたが、そんな中でもこの様なストーリーが生まれたことに嬉しさを感じ、また同時にカレッジフットボールならではの素晴らしさを再確認したのでした。

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