2023年度のカレッジフットボール、特に開幕当初話題をかっさらったのは、元フロリダ州立大CBでNFLでも伝説的な活躍をし、「プライムタイム」というニックネームで鳴らしたディオン・サンダース（Deion Sanders）監督の初年度となったコロラド大でした。
「コーチプライム」とも呼ばれるサンダース監督は、2020年から2022年までNCAA1部の下部サブディビジョンであるFCS（フットボールチャンピオンシップサブディビジョン）に所属するジャクソン州立大でカレッジ監督デビュー。1年目は新型コロナウイルスの世界的流行で短縮シーズンとなり戦績は4勝3敗でしたが、2期目の2021年は11勝2敗、3期目の2022年は12勝1敗と大躍進。所属するSWAC（サウスウエスタンアスレティックカンファレンス）のタイトルを2連覇するなど監督としての腕を世間に見せつけました。
そして昨年からFCSよりもさらに上のFBS（フットボールボウルサブディビジョン）、その中でも最上級カンファレンス群と言われる「パワー5」に類されるPac-12カンファレンスのコロラド大に新監督として就任。彼のポピュラリティー、そしてジャクソン州立大でのサクセスもあり、コロラド大への注目度はここ最近のカレッジフットボール界では群を抜く大きさでした。
その興奮度は当然地元でも最大級で、春の紅白戦には4万人を超えるファンが詰め掛けましたが、これは過去9年間の紅白戦の観客数の総数を上回るという記録。
Boulder's spring game before vs. after Deion Sanders took over 🤯
— Bleacher Report (@BleacherReport) April 22, 2023
The Coach Prime Effect
(via @nikkiedwardsss) pic.twitter.com/P1IvE0i82x
またシーズン開幕前に売り出されたシーズンチケットは1996年以来の完売。1980年代から1990年代にかけては強豪として知られ、Big 8カンファレンス（現在のBig 12カンファレンス）のタイトルを3連覇し、1990年にはナショナルタイトルを取るほどまでのチームでしたが、最近では見る影もなく過去17年で勝ち越せたシーズンがたったの1度（2016年）と散々な有様に。だからこそサンダース監督がついにコロラド大に過去の栄光を取り戻してくれると期待度が上がっているわけです。
そのサンダース監督の初陣となった2023年度シーズンは開幕から3連勝を飾り最高で全米19位にまで躍り出ます。特に初戦となった前年度準優勝チームのテキサスクリスチャン大戦は45対42と劇的なアップセットを演じて見せましたが、この試合を放映したFOXスポーツはなんと驚きの726万人の視聴者数を記録。周囲の予想を上回るこれ以上ない出だしを見せました。
ただその後は地力の差が出て黒星がかさみ、結局終わってみれば4勝8敗と惨敗。前年度の1勝11敗よりは進歩したとはいえ、チームとしては満足できる結果とは到底かけ離れた結果。厳しい現実を突きつけられた形になりました。
ただ、新生コロラド大の復活をこの目で見たいと本拠地であるフォルサムスタジアムに足を運んだファンの数は前年度までと比べると圧倒的に増加。それは経済効果にも如実に現れたのでした。
試合のチケットの売り上げ、ホームゲームにやっていたファンの宿泊費や交通費、飲食費、グッズの売り上げなどの総計は7210万ドル（1ドル100円計算だと約72億円、150円計算なら100億円超）、さらにその影響で地元のビジネスや新たな雇用なども含めると、サンダース監督1年目のコロラド大フットボールの経済効果は試算で1億1320万ドル（100円計算で約113億円、150円計算なら170億円超）なんていう数字も出るほどです。
試合では負け越しましたが、コロラド大、およびコロラド大のあるコロラド州ボルダーは相当潤ったということが言えそうです。それだけでもディオン・サンダース監督を新監督に起用したことは大成功だったということでしょうね。
ただやはりそういったフィーバーは結果がついてこなければ熱も冷めてしまうもの。サンダース監督2年目の2024年度、彼らはサンディエゴ州立大の新HCに就任するためにオフェンシブコーディネーターだったショーン・ルイス（Sean Lewis）氏を失いましたが、その後釜にかつてクリーブランドブラウンズやニューヨークジャイアンツでHCを務めたこともあるパット・シューマー（Pat Shurmur）氏を指名。シューマー氏は昨年もコロラド大でルイス氏とともにオフェンスをコールしていましたが、ルイス氏が去った後ソロのプレーコーラーとして昇格。
オフェンスにはサンダース監督の実の息子であるセドゥア・サンダース（Shedeur Sanders）や両面スターのトラヴィス・ハンター（Travis Hunter）が健在ですが、果たしてシューマー氏のプレーコーリングでコロラド大は勝ち越し、そしてそれ以上を成し遂げることができるでしょうか？
