今オフの大きな話題として主力QBたちのトランスファー(転校)が目立ちました。日本の大学ではあまり馴染みがないかもしれませんが、アメリカの大学選手が出場機会を求めて大学を鞍替えすることはよくあることです。しかし今年ほど主力だった選手が先発の座を奪われてトランスファーを決断したという年はなかったように思えます。特にそれはQB選手に顕著でした。
その先鋒がミズーリ大に転校した元クレムソン大のQBケリー・ブライアント(Kelly Bryant)。そして目玉選手とされていたのが元アラバマ大のQBでオクラホマ大に転校したジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts)。またジョージア大からはジャスティン・フィールズ(Justin Fields)がチームを去ってオハイオ州立大にトランスファーすれば、それを受けてオハイオ州立大のテイト・マーテル(Tate Martell)がマイアミ大に編入・・・。大御所チームが有能選手を多く抱きかかえる副作用とでも言えるでしょう。
【関連記事】トンランスファーの新時代到来?
そしてそのトランスファーの波に遅れることなく新天地を目指してチームを飛び出したのがノートルダム大のQBブランドン・ウィンブッシュ(Brandon Wimbush)です。
ウィンブッシュは2017年時の先発QBで、2016年の4勝8敗という惨敗シーズンから10勝3敗と復活を演出した主力メンバーでした。機動系のQBであるウィンブッシュはその脚力で多くの見せ場を作ってきましたが、パサーとしての能力に不安はついて回り、2018年度はついに先発の座を後輩のイアン・ブック(Ian Book)に奪われてしまいます。結局チームはブック体制となり、ウィンブッシュはブックが怪我をして欠場を余儀なくされたフロリダ州立大戦で先発出場した以外はブックのバックアップに徹していました。
プレー資格をあと1年残しているウィンブッシュが出場機会を求めてノートルダム大からトランスファーすることは自然の流れともいえましたが、先月ウィンブッシュのトランスファー先がセントラルフロリダ大であることが明らかになりました。
セントラルフロリダ大といえば年明けのピフィエスタボウルでルイジアナ州立大に敗れるまで25連勝という大記録を打ち立てた、「グループオブ5」カンファレンス群の急先鋒であります。そしてセントラルフロリダ大は昨シーズン中にチームの大黒柱でもあったQBマッケンジー・ミルトン(McKenzie Milton)が膝に選手生命に関わる大怪我を負うという状況に置かれています。「グループオブ5」チームながらハイレベルでプレーし続け、さらには来年の先発QBに絶対的な選手が不在であることから、ウィンブッシュが転校先にセントラルフロリダ大を選んだのでしょう。
ミルトンには是非とも全快してもらってまたフィールドで活躍する姿を見たいところですが、それが不確かである中試合出場経験のあるウィンブッシュを招き入れることはセントラルフロリダ大にとっても大きなプラスだといえます。
とはいってもウィンブッシュがセントラルフロリダ大で先発の座が保証されている訳ではありません。昨年ミルトン不在中のチームを率いたダリエル・マック(Darriel Mack)も先発QBの座を確固たるものにするためにウィンブッシュの挑戦を受けて立つからです。マックは昨年3試合に先発出場。619ヤードに3TD(1INT)のパス、さらにランで5TDを記録した選手。ウィンブッシュはパスに磨きをかけない限り転校先でもバックアップ止まりという状況に陥りかねません。
過去には同じノートルダム大出身QBのマリク・ザイール(Malik Zaire)がフロリダ大に、それ以前にはイヴァレット・ゴルソン(Everett Golson)がフロリダ州立大にそれぞれ転校するも両人とも転校先で不発に終わっています。ウィンブッシュは果たしてこのセカンドチャンスを活かすことが出来るでしょうか。