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マック・ブラウン監督の秘策

マック・ブラウン監督の秘策

先週無事に終了した「早期サイニングピリオド」。ここで進学先を決めてサインをしてしまった高校生リクルートたちはクリスマス休暇前にストレスフリーで家族との時間を過ごせることでしょう。

参考記事早期サイニングピリオド終えて・・・【前編】

参考記事早期サイニングピリオド終えて・・・【後編】

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ベースボール・マガジン社 (編集)

成功を続けるノースカロライナ大のリクルーティング

ところで、3日間のサイニングピリオドを終えた時点での全米リクルーティングランキング247sports.com)をちょっと見ていただきたいと思います。

247
1テキサスA&M大
2アラバマ大
3ジョージア大
4オハイオ州立大
5テキサス大
6ペンシルバニア州立大
7ノートルダム大
8ノースカロライナ大
9ミシガン大
10オクラホマ大

トップ10の面々はカレッジフットボール界で強豪と見なされているチームばかりですが、その中にそうではないノースカロライナ大が8位に食い込んでいます。

ノースカロライナ大といえばどちらかと言うと男子バスケットボール部で有名。あのマイケル・ジョーダン(Michael Jordan)氏もこの大学出身で全米優勝も6度達成している超名門です。しかしアメフト部といえばナショナルタイトルは未だ獲得したことはなく、カンファレンス(ACC/アトランティックコーストカンファレンス)タイトルも1980年に獲得して以来遠ざかっています。つまりアメフト強豪校というには歴史的に観て程遠いわけです。

そんなノースカロライナ大が今年はリクルーティングにおいて8位と躍進。実は2019年が30位だったのに対して2020年と2021年には14位とトレンドとしてはここ2〜3年はリクルーティングで成功を収めてきていたのです。それに大きく貢献しているのがマック・ブラウン(Mack Brown)監督の存在です。


マック・ブラウン監督の経歴


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ブラウン監督といえば1998年から2013年まで名門テキサス大を率いていた人物。この間テキサス大はナショナルタイトル1度(2005年度)、Big 12カンファレンスタイトル2度、地区優勝6度、二桁勝利シーズン数9度(9年連続:2001年から2009年)を達成。ブラウン監督のテキサス大での総合勝敗数は158勝48敗でこれは同大学のレジェンド、ダレル・ロイヤル(Darrell Royal)氏の167勝に次いでテキサス大史上2番目の記録です。

そんなブラウン監督ですが、2010年に19年ぶりに負け越しシーズンを味わい、2011年から2013年までは勝ち越しすらすれどタイトル争いには絡めず、結果的に2013年度シーズン後に監督の座を追われてしまいました。(本人は辞任だと言っていますが)

ただ、ポスト・ブラウン体制のテキサス大のここまでの勝ち負けを見ると、チャーリー・ストロング(Charlie Strong、ジャクソンビルジャガーズLBコーチ)氏、トム・ハーマン(Tom Herman、シカゴベアーズアナリスト)氏、スティーヴ・サーキジアン(Steve Sarkisian、現監督)氏の合計勝敗数が53勝46敗と決して勝ち星に恵まれているとは言い難く、ブラウン監督を解雇してしまったことが良い決断だったのかどうかはわかりません。

そんなブラウン監督はテキサス大を追われた後、5年ほど米スポーツ専門局ESPNのカレッジフットボール解説者を務めていましたが、2018年度シーズン後にノースカロライナ大がラリー・フェドラ(Larry Fedra)を解雇するとその後釜に現場を離れていたブラウン監督を起用することを決定したのです。

参考記事UNCがフェドラ監督を解雇→ブラウン氏が新監督として復帰

実はテキサス大に赴任する前にブラウン監督は10年間ノースカロライナ大を率いていました。1996年と1997年に2年連続10勝を獲得した手腕を認められてテキサス大に引き抜かれたのです。というわけで今回のブラウン体制は第2次ブラウン体制ということになります。

凄腕のリクルート師


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1998年から2009年までの12年間、テキサス大はブラウン監督指揮下で128勝27敗という驚異的な戦績を収め、勝率は何と82パーセント。この間先にも述べたとおり2005年にナショナルタイトルを獲得していますがこの時のQBはヴィンス・ヤング(Vince Young)氏。そのタイトルゲームでのサザンカリフォルニア大の一戦は「世紀の一戦」として今も語り草です。

また彼がリクルートした訳ではありませんでしたが、1998年度のチームにはハイズマントロフィーを獲得したRBリッキー・ウィリアムス(Ricky Williams)氏がいましたし、他にもDLブライアン・オラクポ(Brian Orakpo)氏、WRロイ・ウィリアムス(Roy Williams)氏、CBアーロン・ロス(Aaron Ross)氏、RBセドリック・ベンソン(Cedric Benson)氏、QBコルト・マッコイ(Colt McCoy、現アリゾナカーディナルス)などの選手がブラウン監督によってテキサス大にリクルートされました。

良いポテンシャルを持つ高校生をリクルートして入部させることはチームを強くするためには必要不可欠なこと。それは昔も今も変わりませんが、テキサス大という絶対的なブランド力とブラウン監督のリクルーティング力によってテキサス大は一時代を築いたのです。

残念ながらテキサス大での最後の4年間は結果が伴いませんでしたが、それでも2012年にはリクルーティングランキングでアラバマ大に次ぎ2位を確保していましたから、ブラウン監督体制でのテキサス大のリクルーティングは往々にして上手く行っていたのです。

約5年のブランクを経て現場に戻ってきたブラウン監督。フェドラ監督体制では試合に負けてリクルートを失うという負のサイクルにハマっていたこともあって、ノースカロライナ大ではブラウン監督の巧みなリクルーティング術に期待が集まりましたが、初年度からいきなり結果を出して全米14位。翌年の2021年度も14位とそこまで戦績が良くなかったにもかかわらず5つ星選手の勧誘に成功するなど早くも得意のリクルーティング力を発揮しています。

そして今年全米8位。全米に32人ほどしかいない5つ星リクルートを2人も勧誘することに成功。2019年度が7勝6敗、2020年度が8勝4敗、そして今季2021年度はここまで6勝6敗と決して目からウロコが出るような戦績を残しているわけではありません。それにも関わらずリクルーティングで成功しているということはやはりブラウン監督らコーチ陣の高校生を説得できる、自分たちの良さを売り込むことが出来る能力に長けているからと言えるでしょう。

リクルーティングのためなら・・・


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リクルーティングの力でテキサス大を強くしたブラウン監督だからこそその重要さが身にしみていることでしょうが、ノースカロライナ大においてこんな逸話もあります。

今年の春、ノースカロライナ大のキャンパスがあるチャペルヒル市に住居を構えるブラウン監督は家を引っ越しました。この引越し先というのがキャンパスから約0.98マイル(約1.5キロメートル)の距離にある場所だったのですが、なぜこの場所にわざわざ引っ越したのかというその理由が凄い。

というのはキャンパスに近いところに引っ越したおかげで彼の家がキャンパスから半径1マイル以内になったからです。

なぜこれが重要なのかと言うと、NCAA(全米大学体育協会)のリクルーティングルールを掻い潜る秘策だからです。

NCAAのルールによると、「キャンパスの半径1マイル以内ならその範囲内であれば非公式のリクルートたちの大学見学活動が可能になる」というものです。

この話を掘り下げる前に、「公式の大学見学(Official Visit)」と「非公式の大学見学(Unofficial Visit)」に関してお話しておくべきでしょう。

評価が高く、大学側が是が非でも勧誘したい選手には「Official Visit」をオファーすることが出来ます。「Official Visit」の場合その見学に要する移動費や宿泊費などをすべて大学が持つことが出来ます。「Official Visit」は各大学に付き一人一回きり。そしてリクルート側は合計5校からの「Official Visit」待遇を受けることが出来るのです。トップリクルートにしてみればどの5校からの待遇を受けるかは悩みどころです。

一方「Unofficial Visit」はそれに掛かる費用はすべてリクルート持ち。その代わり見学できる回数に制限はなく、来たければいくらでも見学に来ていいのです。

そしてこの「Unofficial Visit」で大学見学に来たリクルートたちは、上に紹介したNCAAのルールによりキャンパスから1マイル以内にあるブラウン監督の家にも訪問、ないしブラウン監督が彼らを家に招待することも可能になったのです。監督直々の歓迎を受けることが出来れば高校生さらにその家族は自分たちが非常に重要なリクルートとして認識されているのだと思うでしょうし、そうなれば彼らがノースカロライナ大に進学すると心が傾くことでしょう。

リクルーティングがチーム育成において超重要だと分かっている(もちろんどのコーチも分かっていることでしょうが)ブラウン監督だからこそここまでの事をやってのけるんですね。

あとはこのリクルーティング力でかき集めたタレントたちをいかに起用するかですが、それはまた別の話・・・。

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