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早期サイニングピリオド終えて・・・【前編】

早期サイニングピリオド終えて・・・【前編】

12月15日から17日の3日間、カレッジフットボール界では早期(アーリー)サイニングピリオドを迎え、全米に散らばるリクルートたちが志望校に進学することを公にして書類にサインを行い、長かったリクルーティング活動に終止符を打ちました。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

早期サイニングピリオドとは?

そもそも早期サイニングピリオドとは何か?「早期」というからにはこの後にもサイニングピリオドがあると想像がつくと思いますが、元来高校生リクルートたちが進学先を決めて書類にサイン出来る日は毎年2月の第1水曜日と決まっていました。これを「ナショナルサイニングデー」と呼びますが、リクルーティングの集大成はこの「ナショナルサイニングデー」と相場が決まっていました。

ただ、リクルート(大学チームから勧誘を受ける高校生選手)の大半は2月の前の時点で既に進学先を決めており、いち早くこのリクルーティング活動を終えたいと思っている高校生はたくさんいます。

リクルーティングは普通高校2年生ごろから始まり、高校生たちは約2年間多くの大学のコーチからの勧誘を受け、キャンパスを訪問し、家族と進路相談をしながら過ごすわけですが、この一連の活動は容易にリクルートたちを疲弊させます。志望校を公表してもサインをするまではオフィシャルにならないので、他大学のコーチたちは万が一でも気持ちが変わらないかと勧誘を続けてくる場合もあります。

そういった高校生たちのストレスを軽減するために設けられたのが早期サイニングピリオド。すでに進学先を完全に決めてしまっている高校生たちが2月まで待たなくてもいいように12月後半に3日間だけサイン出来る日を設けたのが2017年のこと。そして驚くべきことに初年度となった2017年の早期サイニングピリオドでは予想を上回る7割以上のリクルートたちがこの期間に書類にサインを行なったのです。


早期サイニングの問題点

高校生たちのリクルーティング活動を前倒しに終わらせるという点では早期サイニングピリオドの導入は当初の目標を大いに達成したと言えました。しかしその裏で始まってみて分かった問題点も指摘されています。

その最大のポイントは早期サイニングピリオドがボウルシーズン真っ只中だったこと。これによりボウルゲームに出場するチームのコーチたちはチームの練習の傍でリクルーティングの最後の追い込みを兼任しなければならなくなったのです。特にCFP(カレッジフットボールプレーオフ)に出場するチームにとっては練習に向けて手は抜けませんし、リクルーティングにおいても意中の選手たちが確実に自分たちのチームに進学するように念を押す活動をしなければならず、コーチ陣にとっては負担が倍増になったのです。

またレギュラーシーズンが終わる12月初頭からはチームの成績いかんで監督以下コーチ陣が一新されることも少なくありません。その場合、例えばある大学に1年以上前からコミットしていた高校生がいたとして、その大学の監督が早期サイニングピリオドの直前に解雇されてしまったとしたら、この高校生にとってはその大学に進学するかどうかは死活問題です。その監督の下でプレーしたいと進学を決めたのに蓋を開けてみたらコーチ陣が一掃されていたら進学先を再考しなければならないかもしれないのです。

実際今年は12月に入りオクラホマ大リンカーン・ライリー(Lincoln Riley)監督がサザンカリフォルニア大へ移籍したり、ノートルダム大ブライアン・ケリー(Brian Kelly)監督がルイジアナ州立大に移籍したりとコーチ市場は大にぎわいでしたが、ライリー監督がいるからオクラホマ大へ進学を決めていた選手にとって彼のいないオクラホマ大には魅力を感じなくなって進学を取りやめるとしたリクルートは後を絶ちませんでした。

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そして突如としてリクルートに穴ができてしまったオクラホマ大はこの時点からその穴埋めをすべく他のリクルート候補に土壇場でオファーをしなければならなくなります。しかしたったの2週間ですでに気持ちを固めてしまっている高校生の進学先を変えるのは至難の技です。

こんな感じで早期サイニングピリオドは年を追うごとにカオス化しており、これを問題視したNCAAはこのシステムについて廃止も含めて協議に入るという噂も出ています。

現在のリクルーティングランキング

今年の早期サイニングピリオドはボウルゲームが始まる直前に3日間設定されましたが、予想通りその大半のリクルートたちが初日の12月15日にサインを終えました。

高校生リクルートの動向を追うメディアも立派に存在しており、「247」や「ライバルズ(Rivals)」、さらにはスポーツメディア大手「ESPN」も高校生たちを専門に追いかけるチームがいます。そのメディアたちはそれぞれ高校生たちを格付けし、能力のあるセンスを星の数5から1までの5段階評価(もっともメディアに出てくるのは星3から5までですが)に振り分けます。どの星の選手をどの数だけコミットさせることに成功したかによって各リクルーティングメディアはランキングを発表します。現時点でのランキングは以下のようになっています。

247ライバルズ
1テキサスA&M大アラバマ大
2アラバマ大テキサスA&M大
3ジョージア大ジョージア大
4オハイオ州立大オハイオ州立大
5テキサス大テキサス大
6ペンシルバニア州立大ペンシルバニア州立大
7ノートルダム大ノートルダム大
8ノースカロライナ大ミシガン大
9ミシガン大ノースカロライナ大
10オクラホマ大ケンタッキー大

「247」と「ライバルズ」では多少の違いがあるとは言え顔ぶれはほぼ一緒。ここからは便宜上「247」のランキングをもとにお話ししていきたいと思います。

ここ最近はアラバマ大ジョージア大が首位を分け合っていましたが(もっと言えば2011年から2017年まで7年連続アラバマ大が1位でした)、その牙城を崩したのがテキサスA&M大。2019年は4位、2020年は6位と上位に顔を出していましたが、遂に彼らがリクルーティングのトップに躍り出たのです。チーク強化においてリクルーティングは最重要課題といってもいいですから、ここにテキサスA&M大が食い込んできたことは将来的に彼らの台頭が大いに期待できるというものです。

またランキングを見る際注目したいのは順位だけでなくどの星の選手を何人勧誘できたかという点です。即戦力とされるのは最高峰である5つ星アスリートと4つ星アスリート。この評価を受けた選手が何人いるかが将来のチーム作りに大きく影響を及ぼします。

5つ星は全米合わせて約32人。4つ星は約300人、3つ星は約2000人いると言われていますから、いかに5つ星評価を受けることが名誉なことかが伺えます。そして統計によると元5つ星選手がドラフト1巡目で指名される確率はかなり高いのだとか。とすれば高校時代から5つ星評価を受けた選手をずっと追い続けるというのも一つの楽しみ方なのかもしれません。

そして現時点での5つ星リクルートの振り分けは以下の通りです。

ジョージア大:5人
テキサスA&M大:4人
アラバマ大:3人
オハイオ州立大、ノースカロライナ大、ルイジアナ州立大、サザンカリフォルニア大:各2人
テキサス大、ペンシルバニア州立大、ノートルダム大、ミシガン大、ケンタッキー大、ミズーリ大、フロリダ州立大、クレムソン大、フロリダ大、:各1人

目につくのは半分以上である17人の5つ星選手がサウスイースタンカンファレンス(SEC)所属チームに流れているという事実。過去15年間で実に11度もナショナルタイトルがSEC所属チームの手に渡ったのも頷ける話です。

そのほかのチームを見るとオハイオ州立大テキサス大といった大御所がしっかりとトップ10入りしていることが伺えます。テキサス大は今季負け越してしまいましたが、やはりテキサス大というブランド力を擁するリクルーティングは威力を発揮しているようです。先に述べたように監督を失ったノートルダム大やオクラホマ大もなんとかこの危機を最小限に抑えたようです。

またノースカロライナ大ミシガン大の躍進にも注目です。ノースカロライナ大は現在かつてテキサス大で一時代を築いたマック・ブラウン(Mack Brown)監督が指揮していますが、ブラウン監督はテキサス大時代にその類い希なるリクルーティング力でテキサス大をナショナルチャンプに育て上げた実績があり、その手腕がノースカロライナ大でも威力を発揮。強豪として知られているわけでもないノースカロライナ大にこれだけのリクルートを呼び寄せることができたのはすごいことです。

またミシガン大は昨年13位だったところ今季トップ10入り。これはおそらく今年8年振りにオハイオ州立大を倒し1997年以来のBig Ten王者となってプレーオフに進出を果たしたという躍進振りが影響したのでしょう。ミシガン大というブランドだけでなく遂にフィールド上でも結果を残したことで「ミシガン大でプレーしたい」と感じるようになったリクルートたちが増えたんでしょうね。

ただ「247Sports」のコンポジットを見ていただけると一目瞭然なのですが、10位までとそれ以下の4~5つ星の数の差がかなり激しいです。3つ星リクルートがダメというわけではありませんし、いつの時代も大学に入部してから化ける選手はいますが(パッと思いつくところでは元アラバマ大で現在ルーキーながら大活躍しているQBマック・ジョーンズは3つ星でした)、潜在能力が高い選手は大いに越したことがありません。この点で上位を独占している大御所たちの凄さが浮かび上がってきます。

個人的に気になるのはクレムソン大です。今季9勝3敗ながらも序盤に出遅れたことで早い段階からナショナルタイトルレースから姿を消しましたが、今オフにベテランの両OC/DC(トニー・エリオットブレント・ヴェナブルズ)がチームを去り、体育局長もマイアミ大へ移籍したことで彼らは過渡期に入ったと見られます。

彼らはここ何年も所属するアトランティックコーストカンファレンス(ACC)内でリクルーティングランキングトップをひた走ってきましたが、今年はその座をノースカロライナ大に譲っています。リクルーティングが全てとは言いませんが、やはりリクルーティングの良し悪しでチームの将来性は大きく変わります。そういった意味でここまでプレーオフ進出6度、うち2度において全米制覇を成し遂げたクレムソン大の今後に注目したいです。

(後編へ続く)

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