カンファレンス戦のみのスケジュール
現在カレッジフットボール界ではコロナの影響で今季の開催が可能かどうかという話で持ちきりです。FCS(フットボールチャンピオンシップサブディビジョン)のアイビーリーグが早々に秋季シーズンをキャンセルしましたが、大御所のBig TenカンファレンスやPac-12カンファレンスは開催することを前提としてシーズンをカンファレンス戦のみに絞る変則シーズンでやり繰りする苦肉の策を絞り出しました。
パワー5カンファレンス群の1つであるBig Tenカンファレンスは仮に2020年度シーズン開幕を迎えることが可能となれば、シーズンをカンファレンス戦に絞ることを決定。
これにより試合数は9試合に減ることになり開幕を3週間ほど先延ばしに出来ます。開幕への時間稼ぎのこの方法は功を奏すか? https://t.co/1ALWJNcxuV
— Any Given Saturday (@ags_football1) July 9, 2020
昨日Big Tenが今季の試合開催をカンファレンス戦のみに絞る決定を下しましたが、彼らと同じく「パワー5」カンファレンス群の一員であるPac-12もBig Tenに同調。
Pac-12には現在コロナ禍で大苦戦しているカリフォルニア州およびアリゾナ州にキャンパスを置く大学が含まれており、これは妥当な決断か。 https://t.co/cwtnPz9pJp
— Any Given Saturday (@ags_football1) July 11, 2020
その他の「パワー5」カンファレンス群であるアトランティックコーストカンファレンス(ACC)、Big 12カンファレンス、サウスイースタンカンファレンス(SEC)、そして「グループオブ5」カンファレンス群もこのリーグ戦のみのスケジュールに組み替えることが予想されています。
現在FBS(フットボールボウルサブディビジョン)の約130チームはレギュラーシーズンで各チーム12試合を予定しています。その後にカンファレンス優勝決定戦があり、ポストシーズンには成績が良ければボウルゲームに出場することが可能になります。またナショナルタイトルを争うカレッジフットボールプレーオフ(CFP)に進むことの出来る4チームは最大2試合をポストシーズンにこなす計算になり、最大で1シーズン15試合が行われています。
カンファレンス戦の数は各カンファレンスによって違いますが、8試合から9試合というのが普通です。ですからレギュラーシーズン12試合のうちカンファレンス戦以外(ノンカンファレンス戦/交流戦)は3試合から4試合存在することになり、今回この交流戦が全て中止になるという動きになっているわけです。
この交流戦では異なるカンファレンス出身チーム同士の戦いが見られるわけですが、今年ならオハイオ州立大vsオレゴン大、ワシントン大vsミシガン大、ノートルダム大vsウィスコンシン大など普段あまり拝むことが出来ない好マッチアップが存在し、ファンとしては非常に楽しみな観戦チャンスとなります。
「カップケーキチーム」への余波
しかし一方で交流戦がそういったマッチアップだけというわけではなく、強豪チームが格下チームを「カモ」として呼び寄せて出来レース的な安牌ゲームを行うことも少なくありません。こういった試合を簡単に食べれてしまうことから「カップケーキゲーム」と呼びますが、このカップケーキゲームは現代のカレッジフットボール界において大変興味深い構図となっています。
というのもカップケーキチームを呼び寄せる格上のホストチームは対戦相手にかなりの額のマッチ料を支払い手堅く白星を頂こうとするのに対し、カップケーキゲームは圧倒的不利な敵地に黒星覚悟で乗り込む代わりにその高額のマッチ料を手に入れるという構図があるのです。
言ってしまえば、格上チームが白星を金で買い、格下チームは負ける代わりに大金を手に入れるという不思議な関係です。
そしてこのマッチ料は年を追うごとに増額化の傾向があり、格下である中堅校(グループオブ5チームやFCSチーム)にとっては重要な財源となっているというのが現状です。
つまり強豪との交流戦を組むことに収入を期待できる中堅校たちにとって、パワー5カンファレンスが交流戦を中止にするということはその金の流れが止まってしまうということを意味しているのです。
MACの大損失
FBSには5つの「グループオブ5」カンファレンスが存在しますが、その中でもアメリカ中東部を主戦場としているミッドアメリカンカンファレンス(MAC)の交流戦中止による損害が壊滅的だということです。
すでに交流戦を排除すると決定しているBig Tenカンファレンスと地域的に似通っているMACチームは実に合計11試合をBig Tenカンファレンスチームと戦う予定になっていました。
ボーリンググリーン州立大(イリノイ大、オハイオ州立大)
セントラルミシガン大(ネブラスカ大、ノースウェスタン大)
ノーザンイリノイ大(アイオワ大、メリーランド大)
ケント州立大(ペンシルバニア州立大)
バッファロー大(オハイオ州立大)
トレド大(ミシガン州立大)
米王手メディアUSA Todayの記事によるとこのスケジュール変更により上記のMAC7チームは総額で1050万ドル(1ドル100円計算で約10億円)を手に入れることが出来なくなるのだそうです。
ただ細かい契約内容までは分からないため、今回のキャンセルによりキャンセル料が生まれるのかどうかなどは定かではありませんが、どちらにせよそれぞれのチームが億単位のギャランティーを損失することになるのです。
遅かれ早かれ全てのFBSチームがカンファレンス戦縛りのシーズンに移行していくことになるでしょうから、MACだけでなく「カップケーキゲーム」に依存している他のグループオブ5チームもパワー5チームと試合を組めなくなることで相当の損失を食らうことになりそうです。
ちなみに独立校(無所属)のノートルダム大はBig Tenのウィスコンシン大だけでなくPac-12カンファレンスのスタンフォード大とサザンカリフォルニア大との試合もキャンセル。同じく独立校のブリガムヤング大はBig Tenのミシガン州立大とミネソタ大、さらにはPac-12のアリゾナ州立大とスタンフォード大との試合が組まれていましたがこちらも当然無かった話となり、今後多くのカンファレンスが交流戦を破棄することになると、グループオブ5の損失よりも独立校が直面する損失のほうがさらに大きくなりそうです。