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コロナ禍とカレッジフットボール【前編】

コロナ禍とカレッジフットボール【前編】

コロナウィルスの世界的流行から数ヶ月。収まりつつある国もあれば崖っぷちで耐えている国、予断を許さない国と様々です。人々は生活の変化を余儀なくされ、これまでとは違った「新しい普通」に順応していくことを迫られています。

私の住むアメリカではいくつかの州がロックダウンの規制の度合いを緩め始めていますが、それでも全体的に見ればまだまだ「ステイホーム」が基本であり、アメリカのコロナ禍の中心ともいえるニューヨークに近いところに住んでいる筆者の周囲もまだまだロックダウン解除にはまだほど遠いというのが正直な印象です。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

急激な変化

3月に入ってからアメリカでもスポーツ界に徐々に影響が及んでおり、シーズン中だったプロバスケ(NBA)、プロアイスホッケー(NHL)は休止に追い込まれ、開幕前だったプロ野球(MLB)も開幕が延期になり、オフシーズンだったNFLでも昨日行われたドラフト会議がバーチャルで行われたり、またチーム施設も出入り禁止になるなど大打撃を受けています。

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ただその規制も徐々に緩んでいっているようで、ある条件を満たせばチーム施設に入れるようになったり、MLBは6月から7月にはキャンプが再開されるのではないかなど囁かれるようになりました。

ではカレッジスポーツはどうかというと・・・。

3月初旬と言えば男子バスケットボール界では全米中に散らばる各カンファレンス(リーグ)でトーナメントが始められた頃。そんな折にNCAA1部のアイビーリーグが早々とトーナメントの中止を決定すると「やりすぎだろー!」という論調が起きましたが、コロナ感染数が急増したことでその決定の数日の間にすべてのカンファレンスがトーナメントを中止。さらに春の名物でもある「マーチマッドネス」という別名のある全米男子バスケットボール選手権も中止に追い込まれるという一大事に。

その他の春学期を中心にプレーされるスポーツもシーズン半ばながら続々と中止が決定。アイビーリーグの決定から2週間も経たずにほぼ全ての大学スポーツは表舞台から姿を消したのです。


カレッジフットボール界は・・・

アメフトのボール

そしてカレッジフットボールですが、彼らは当時春季トレーニングが始まるか始まらないかという時期でした。当然彼らにもこの影響は及び春季トレーニングが中止になるとそれに伴い各大学で行われる紅白戦(スクリメージ)「スプリングゲーム」も開催が見送られていきました。

参考記事「春季トレーニング」の基礎知識!

中には延期にして粘っていた大学もあった(ルイジアナ州立大など)ようですが、結果的に春の風物詩であるスプリングフットボールは行われることはありませんでした。

上に挙げた感じで春スポーツのアスリートは突如としてそのシーズンを奪われ、特に4年生たちはそれまで積んできたトレーニングの成果を見せる場を与えられることなく大学最後のシーズンが終わっていきました。ただNCAAはそのような選手たちが望む場合ならば特別にプレー資格をもう1年分授与する決定を下しています。

ただアメリカのスポーツはだいたいシーズンが決まっており、一年中試合が組まれることはありません。フットボールならば秋、バスケは冬から春、ラクロスや野球は春と開催時期が予め決められています。ですから例えば野球部に所属する4年生が今回特例で来年もう一年間大学でプレーできたとしても、学生アスリートというステータスを維持するためにもう1年大学で授業を取らなければならないということになります。

しかし例えばこの選手が既に大学卒業後に就職先が決まっていたとして、果たして野球をもう1シーズンプレーするためにせっかく手に入れた就職のチャンスを蹴って大学に戻ってくるというのが理にかなっているのかどうかはわかりません。プロ候補というならば話は別ですが、プロ候補というレベルであればそのままプロ入りするでしょうし。

もしこういった選手がこのチャンスを活かすのであれば卒業したあとで大学院生として別の大学にトランスファー(転校)してスポーツ奨学金を受け取り、修士号(Master Degree)の獲得を目指しながら学生アスリートとしての最後のプレー資格を行使するというのが自然な手でしょう。

一方、カレッジフットボーラーたちにしてみれば彼らのシーズンは秋ですのでプレー資格云々に関しては影響はありません。今の所打撃を受けているとすれば春のトレーニングが出来なかったこと、そしてコーチ陣が高校生たちに対するリクルート活動を限定されていることです。

私の知る限りアメリカの殆どの大学が対人形式の授業を放棄しZOOM(ズーム)などのリモート授業に移行しているはずですし、学生アスリートだけでなくすべての学生たちはおそらくキャンパスから立ち退きを半強制化されているはずです。また政府からのコロナウィルスの政策としてソーシャルディスタンス(いわゆる三密)が叫ばれる中で人を介してトレーニングすることも良しとされていないのが現状。

通常ならば春シーズンは来るシーズンへの土台作りとして活動するよう位置づけられてきましたから、これが行えないというのは痛手でしょうし、春季トレーニングを行えなかったことが時期シーズンの戦力などにどれくらいの影響を与えるのかは次のシーズンがやってくるまでわからないでしょう。

来季開幕の可能性は・・・

さて、現時点での最大の焦点は実際に2020年度シーズンが行われるかどうかですが・・・。

どのようにコンディションを維持するか

正直そんなことは誰にも分からないというのが現状です。現在大学は終業シーズンであり通常ならば学生たちはこのまま夏に突入するわけですが、普通ならばアスリートたちはキャンパスに残って夏中トレーニングに明け暮れます。が、キャンパスに足を踏み入れることが出来ない今、彼らは自ずと地元で自主練するしか方法がありません。しかも地元でも出身高校などのフィールドを使わせてもらえないという事態は大いに予想されますから、そうなったら一体何処でトレーニングを積めばいいというのでしょうか。

夏のトレーニングは形式上は「自由参加」ですが、主力選手ならばキャンパスに居残ることが暗黙の了解となっています。しかしここでのトレーニングを積むか積まないかがプレシーズンキャンプならびにシーズン入りした時に大きく影響を及ぼします。それはスキル的なこともそうですがフィジカル的な面でも言えると思います。

プレシーズンキャンプはだいたい開幕の1ヶ月前から開始されます。夏のトレーニングも含めれば選手たちは開幕まで相当な時間をトレーニングに費やすことになり、それによりフィジカルのレベルは高いところで維持されるわけです。しかし現状のような制限下では選手たちがチームに合流した際にフィットネスが著しく低下しているという不安が発生しかねません。

現在のようなロックダウン下から選手が試合をこなせるようなレベルにまでフィジカルを上げるには4週間から6週間は必要だと言われています。ですから彼らがいつフットボール部施設に戻ってくるのを許されるのかというのは重要なポイントと言えます。

大学再開の目処

コロナウィルスの影響がここまでのものになるとは誰も予想できなかったことで、ロックダウンが始まった頃でもこれが2020年度シーズンにまで長引く可能性があるなんて真剣に考えていなかったでしょう。しかし今の状態からすると一体本当にシーズンが通常どうりに訪れるのかは定かではありません。それよりもまず大学自体が秋学期を無事に迎えられるのかどうかすら分からないのです。

規模が他の大学スポーツと比べると桁違いであることは事実でありながら、カレッジフットボールも言ってしまえば学生スポーツという大きなくくりの中の一つでしかありません。まして彼らはどれだけスポットライトを当てられたとしても大学生であることが大前提であり、大学ありきのアスリートであることは否定することは出来ません。

現在大学キャンパスが閉鎖されている以上、いくらカレッジフットボーラーだからといってそれを覆して彼らだけ戻ってくることは出来ないというのが現状です。つまりこの状況が続く限りアスリートたちもキャンパスには戻ってくることは出来ません。では一体この状況が秋学期にもつれ込んだとしたら・・・。

世の中の声に耳を傾けると現場のコーチや一部の大学の体育局長(Athletic Director=AD)らは2020年度シーズン開幕に比較的楽観視するような声も聞こえてきます。ただそれが行き過ぎた例としてオクラホマ州立大マイク・ガンディ(Mike Gundy)監督は4月上旬というまだ予断を許さない時期に「5月1日までにはフットボール活動を再開させる」と豪語して非難を浴びました。

もしソーシャルディスタンスの状態が開幕時に及んでいたとしたら当然云万人レベルで人が集まるカレッジフットボールのスタジアムを開放することは難しいでしょうから、無観客状態でシーズンを遂行させるアイデアも出ているようです。しかしそれではカレッジフットボール独特のスピリットも失われてしまうでしょうし、そこにやる意味はあるのかという疑問も生まれます(意味はあるのですがそれは後編で)。

もしくはシーズンを先延ばしにして2021年の冬から春にかけて行うなんてアイデアも聞かれますが、聞こえは良くてもそれを大学レベルで保つのはかなり厳しいと考えていいでしょう。秋のスポーツであるアメフトを春に開催することを許せば、他の秋のスポーツ(サッカー、フィールドホッケー、バレーボール、など)も同じ処置を施さなければ不公平になりますし、さらにそうなれば当然元々春にシーズンが定められているスポーツとオーバーラップしてしまいます。これら全てのスポーツを1月から5月までにぶち込むなんてことはインフラ的にも人手的にも不可能に近いのです。

また通常12試合から15試合まで行われるシーズンを短縮するという案も出ています。例えば試合は交流戦(ノンカンファレンス戦)を排除してカンファレンス戦だけに絞るとか(そうなるとレギュラーシーズンは8〜9試合にまで減る)、カンファレンスタイトルゲームを行わないとか。

しかしこの案は大学が授業を秋に再開するというのが大前提であり、これが現実のものにならなければスケジュールを再考することすら出来ないのです。

カリフォルニア州立大系列大学の決断

そんな折カリフォルニア州から驚きのニュースが飛び込んできました。

というのもカリフォルニア州の州立大学(California State University系列)は2020年の秋学期は授業をリモートで行う、つまりキャンパスを閉鎖すると発表したのです。まだ5月だと言うのに。

先にも述べたとおりキャンバスが閉鎖され続ければアスリートであれ彼らもキャンパスには戻ってこれないというのが今の所の論調です。そうなるとこのカリフォルニア州立大系列の大学の秋スポーツはフットボールを含めて開催できないということになります。

この州大学系列には3つのFBS(フットボールボウルサブディビジョン、旧NCAA1部A)チームが含まれます。フレズノ州立大サンディエゴ州立大サンノゼ州立大です。そして3チームとも図ったようにマウンテンウエストカンファレンス所属チームでもあります。

もし本当にこのままカリフォルニア州立大系列が秋にキャンパスを閉鎖することになったら果たして上に挙げた3チームは試合をすることができなくなるのでしょうか?マウンテンウエストには他に11チームが所属していますが、もしこの3チームが試合を行えなくなったとしたら11チームだけでシーズンを開幕させるのか?更にはこの3チームの4年生たちはどうなってしまうのか?疑問は尽きることなく湧いてきます。

そしてもし他の州でもこれに追随してキャンパス閉鎖を来年まで継続させることになったとしたら?もし政府レベルで大学スポーツを含める全ての大衆行事を禁止するとするお達しが出たとしたら?「それはやりすぎだろー」という声も聞こえてきそうですが、あの「マーチマッドネス」ですらNCAAはキャンセルしたのですから、ことコロナ禍に関して言えば何が起こるか分からないというのが正直なところです。

感染数で世界トップ数を数えるにまで至ってしまったアメリカですから、これはもはや大学レベルでことを収めることができる事例ではなくなってしまいました。今後ワクチンの開発や緊急事態宣言解除のタイミングとその段階的解除の方法、そして大学キャンパスを含む公衆施設の再開放の方法など様々な面が流動的に変化し、それに伴ってスポーツイベントの状況もわかってくることでしょう。願わくばあの盛り上がるカレッジフットボールの雰囲気が戻ってきてほしいですが、やはりタイミングを間違えると状況が悪化する可能性はありそうですから、これは慎重に判断してほしいものです。

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