カレッジフットボールの頂点を極めるカレッジフットボールプレーオフ(CFP)。そのトーナメント戦に出場できる4チームを決めるためのランキングがその名もCFPランキングですが、今季初回となる第1回目のCFPランキングが現地11月1日(火曜日)夜に発表されました。
CFPランキングとは?
CFPランキングはCFP選考委員会によって独自に発表されるランキングです。選考委員会は13人で構成され、その顔ぶれは大学長、体育局長、元監督、元選手、元陸軍将軍、大学教授など様々です。かつてはコンドリーザ・ライス元国務長官も選考委員の一員でした。
この13人の有識者たちがこれまでのシーズンの各チームの戦いぶりを踏まえてランクを決めていくのですが、2013年まで用いられていたボウルチャンピオンシップシリーズ(BCS)のようなコンピューターランキングなどのフォーミュラ(数式)などは使われず基本的に彼らの主観でこのランキングは決定されます。
とはいえ完全主観というわけにはいかず、CFPランキングを決めるにあたってある程度のポイントがあるのも事実です。それが以下のもの。
- ストレングスオブスケジュール
- 所属するカンファレンスで優勝したかどうか
- 直接対決の結果
- シーズンの戦績
- 同じ対戦相手が居た場合、その試合の結果
- その他
一番重要なのが「ストレングス・オブ・スケジュール(Strength of Schedule=SOS)」と言われています。これは簡単に言えばそれぞれのチームがどれだけタフな(もしくは楽な)スケジュールをこなしてきたかを示すものです。わかりやすく言うと、もし2つの無敗チームが居たとして、一方のチームは多くの強豪チームと渡り合って無敗を守り、もう一方のチームは弱小チームとばかりと戦って得た全勝だとしたら前者の無敗レコードのほうが価値があるというもの。
もしくは後者のような無敗チームと、強豪校とばかり対戦して1敗を喫してしまったチームがいたとしたら、たとえ1敗していたとしてもSOSの関係で彼らのほうがランクが上になるということも大いに考えられます。
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興味深いのは対戦した相手の動向もランキングに響いてくるということ。例えばテネシー大は今季第7戦目に当時25位だったルイジアナ州立大と対戦していますが、テネシー大はこの試合に勝利して非常に価値のある1勝を手に入れました。一方のルイジアナ州立大はその敗戦で一旦はランク外に落ちましたが、先々週に当時7位のミシシッピ大を倒したことで再びランクイン。そして今回発表されたCFPランキングにおいてルイジアナ州立大はなんとトップ10内に食い込む健闘を見せました。そのことで、その彼らを既に倒しているテネシー大にとってこのルイジアナ州立大戦での白星の価値が対戦当時よりもおそらく上がっている、という状況も生まれるわけです。
もっとも実際にはどのポイントがどれだけの影響を与えるのかは選考委員会のみぞ知るという感じですね。
ただ上位4位に入れる可能性のあるチームというのはランキング入りする25チームの中でも更に一握りのチームのみ。これまで2敗してしまったチームがプレーオフに進出した例はありませんから、チームの成績として2敗というのはカットラインに考慮されるでしょう。そうなると自ずと25チームの中でもプレーオフ進出を現実のものと出来るチームというのは自然と限られてくるのです。
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今季第1回目のCFPランキング
それでは早速今シーズン最初となるCFPランキングを見ていきたいと思います。
上位4チーム
2位:オハイオ州立大(Big Ten:8勝0敗)
3位:ジョージア大(SEC:8勝0敗)
4位:クレムソン大(ACC:8勝0敗)
現時点での最強の四天王がこの顔ぶれになりました。先に発表されているAPランキングと比べると少し順位や顔ぶれが違いますね。1位のテネシー大はAPランキングで2位(タイ)でしたし、3位にはAPランキングで1位のジョージア大、そして4位にはAPランキングで5位のクレムソン大が食い込んでいきました。
4位にAPランキングで5位だったクレムソン大がランクされたのには少々驚かされました。確かにここまで8勝0敗と無敗を貫いてはいますが、周囲を唸らすような勝ち方で白星を挙げてきているとは言えません。唯一見当たるポジティブな点といえば、彼らがこれまで戦って勝ってきたウェイクフォレスト大、ノースカロライナ州立大、シラキュース大の3チームがこのCFPランキングトップ25位にランクされていること。
そこにはやはり「名門補正」が懸かっていると言われても文句は言えません。過去2度のナショナルタイトルを獲得している彼らですから、クレムソン大というブランド力に影響を受けた選考委員がいたとしても不思議ではありません。
注目したいのは今週末1位のテネシー大と3位のジョージア大は今週末に相まみえることです。ここまで無敗の両校のどちらかに今季初黒星がつくことは確実ですから、果たしてどちらが勝ち、そして負けた方のチームがどれだけの順位を第2回目のランキングで落とすかに注目が集まります。
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第2グループ
6位:アラバマ大(SEC:7勝1敗)
7位:テキサスクリスチャン大(Big 12::8勝0敗)
上位4チームのうち1チーム(もしくはそれ以上)がずっこけた場合にその空いた席を狙っているのがこの3チーム。
ミシガン大はAPランキングで4位のチームでしたが、第1回目のこのCFPランキングでは上位4校から漏れて5位に。彼らの足を引っ張んているのはSOS。ノンカンファレンス戦の相手はコロラド州立大、ハワイ大、コネチカット大で3校合わせた戦績は8勝18敗。唯一「タフ」だった試合はペンシルバニア州立大(CFP15位)戦のみ。つまり彼らの真の力はまだ試されていないという判断でトップ4チームに食い込めなかったというわけです。
とはいえ彼らはこのまま無敗を守り、レギュラーシーズン最終戦のオハイオ州立大戦に勝ってBig Tenカンファレンスのタイトルも獲得すればプレーオフ進出はほぼ確実と見られており、彼らにとっては現時点で上位4チームに入れなかったとしても特に焦る必要はありません。
またここまで1敗のアラバマ大が6位になりましたが、これは妥当な位置なのかなと思います。テネシー大戦での敗戦が唯一の黒星ですが、現在CFPで1位にテネシー大がランクされていることを考えれば、そのチームに3点差の僅差で負けたということは評価に値するということでしょうか。
しかしそのアラバマ大もCFPランキングに現在ランクされているチームから奪った白星は1つ(テキサス大:24位)ということで彼らのSOSも決して強いとは言えないのかも知れません。とは言え彼らは今週末に10位のルイジアナ州立大、その翌週には11位のミシシッピ大との試合が控えており、SOSは終盤にかけてぐんぐん上がっていくと思われます。そして1敗を守りぬいてSECのタイトルを獲得すれば彼らがプレーオフに出場するのは当確。ということでミシガン大と同様彼らも現状に焦る必要はなさそうです。上位4位以下に彼らの名前が挙げられているのはなんだか不思議な感じですが(笑)。
そして7位のテキサスクリスチャン大(TCU)。彼らがこの位置にいることには多くの議論が沸き起こっています。
彼らはSEC、Big Ten、ACCらと並び称される「パワー5」の一員であるBig 12カンファレンス所属チーム。その彼らが全勝中であるにも関わらずトップ4に漏れるどころか、1敗のアラバマ大よりも下にいることはおかしいのではないか、という議論です。
これまで彼らはオクラホマ大(当時18位)、カンザス大(当時19位)、オクラホマ州立大(当時8位)、カンザス州立大(当時17位)をそれぞれ倒しており、そのうちオクラホマ大とカンザス大はCFPランキングに現在名を連ねてはいないとしてもレジメ的にはかなりタフなスケジュールを送ってきたと言え、しかもその上で現在まで無敗を貫き通しているわけです。
その彼らの評価が低すぎるという声は少なくありません。上位4チームに食い込まなかっただけでなく、既に1敗しているアラバマ大より下回っているというのは如何なものか、というのがその声の大部分です。
それはTCUが開幕時にランク外から這い上がってきたチームであるからという事実と、彼らよりも上にいる6チームがいわゆる「ブルーブラッド(Blue Blood)」と呼ばれる名門校であるのに対し、TCUはそうでないから、という先入観とかブランド力が影響しているとも言われています。
とは言え、今後彼らが無敗を守って全勝でレギュラーシーズンを終えてBig 12カンファレンスの優勝チームとなれば彼らを上位4チームに含めない理由はありません。ただテネシー大、ジョージア大、アラバマ大の3つのSECチームがそれぞれ1敗ずつでシーズンを終えた場合にSECチームが3つもプレーオフに選出されるかも・・・なんていうシナリオもあり得なくはありませんが、そうなったらTCUは漏れてしまう可能性も・・・。
とは言え、毎年終わってみると丸く収まっている感じがするCFPランキング。まだ最後のランキングが発表されるまで5回もありますからこの辺りは今後も議論に花が咲いていくことだと思います。
第3グループ
9位:サザンカリフォルニア大(Pac-12:7勝1敗)
10位:ルイジアナ州立大(SEC:6勝2敗)
11位:ミシシッピ大(SEC:8勝1敗)
12位:UCLA(Pac-12:7勝1敗)
第3グループは戦績的には魅力的な数字を持っているものの、SOS的にビハインドなチームたち。
8位のオレゴン大は今シーズン開幕戦でジョージア大に49対3と完膚なきまでに打ちのめされましたが、その後は破竹の7連勝中。勢いだけで言ったらテネシー大に負けずとも劣らないものを持っています。
9位のサザンカリフォルニア大はユタ大との激戦でまさかの敗戦を喫して1敗。オフェンス力だけでいえば全米屈指のものを持っていますが、ディフェンス力に不安を残すチーム。
12位のUCLAもまたすでに1敗を喫したチーム。彼らはオレゴン大との直接に敗れてしまったのが痛かったですね。
今あげた3つのチームはどれもPac-12カンファレンスのチーム。その内オレゴン大の敗戦はノンカンファレンス戦でサザンカリフォルニア大とUCLAの敗戦はカンファレンス戦。カンファレンス優勝決定戦進出レースではオレゴン大が一歩抜きん出ています。Pac-12カンファレンスは地区制度を敷いていないので総合戦績でトップ2チームがこの決勝戦に進みます。注目はサザンカリフォルニア大とUCLAの直接対決です(11月19日)。
しかしPac-12カンファレンスチームは上記の通り全て1敗となっており、しかもトップのオレゴン大が8位ということで自力でのプレーオフ進出は厳しいと言えます。もちろんカンファレンスのチャンプになることが大前提ですが、それを踏まえた上で上位チームたちに土がつく波乱が起きる必要が出てくると言えるでしょう。
そんな中ミシシッピ大は11位ながら中々面白い状況にあると言えます。
先日ルイジアナ州立大に完敗してしまったミシシッピ大ではありますが、SEC西地区に所属する彼らは今後まだアラバマ大との試合を残しており、これに勝ちさらに直接対決で負けているルイジアナ州立大がカンファレンス戦でもう1敗すれば、ミシシッピ大が西地区を制して(アラバマ大以外の西地区戦も勝つと仮定して)SECチャンピオンシップに出場してそこでも勝てば、1敗のSECチャンピオンとなるミシシッピ大がプレーオフに出場できない道理はありません。
当然その可能性は高くありませんが、チャンスがあるというのは今後彼らの動向を追う上で面白い点ではあります。
10位のルイジアナ州立大は既に2敗を喫しており、過去CFPに出場したチームの中で2敗のチームは存在しないことを考えると、彼らがプレーオフに進出できる可能性は限りなくゼロに近いと言えます。しかしルイジアナ州立大が10位という好位置に位置していることで漁夫の利を得るチームがいます。それがテネシー大です。
それはテネシー大が既にルイジアナ州立大を倒しているからにほかありませんが、そのルイジアナ州立大が10位にランクされたことでテネシー大のSOSが上がっているのです。もしルイジアナ州立大が今週末のアラバマ大戦に勝つことがあればそのSOSの価値はさらに上がることになります。
ただ同じことがそのアラバマ大にも当てはまります。既に1敗している彼らが10位のルイジアナ州立大をアウェーで倒したとあれば、この勝利の価値(=クオリティー・ウィン)が上がるわけです。このようにSOSとは毎週変わる流動的なものですが、ルイジアナ州立大がこの位置にいることは今あげた2校にとってはプラスであり、彼らに負けてしまったミシシッピ大にしてみればマイナスと言えると思います。
それ以下のチームたち
13位以下のチームは現時点でトップ4に食い込むのは厳しいというのが現状ですが、その中でも唯一チャンスがありそうなのは1敗のイリノイ大(16位)とノースカロライナ大(17位)でしょうか。なぜなら彼らは計算上は1敗を守って所属カンファレンス(イリノイ大はBig Ten、ノースカロライナ大はACC)で優勝できる可能性を未だ秘めているからです。と言ってもその可能性は決して高くはないですが・・・。そしてそれを成し遂げてもさらに上位チームたちが相次いで負けなければならないわけです。
14位:ユタ大(Pac-12:6勝2敗)
15位:ペンシルバニア州立大(Big Ten:6勝2敗)
16位:イリノイ大(Big Ten :7勝1敗)
17位:ノースカロライナ大(ACC:7勝1敗)
18位:オクラホマ州立大(Big 12:6勝2敗)
19位:トゥレーン大(American:7勝1敗)
20位:シラキュース大(ACC:6勝2敗)
21位:ウェイクフォレスト大(ACC:6勝2敗)
22位:ノースカロライナ州立大(ACC:6勝2敗)
23位:オレゴン州立大(Pac-12:6勝2敗)
24位:テキサス大(Big 12:5勝3敗)
25位:セントラルフロリダ大(American:6勝2敗)
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今後のランキング発表日
第3回目:11月15日(火曜日)
第4回目:11月22日(火曜日)
第5回目:11月39日(火曜日)
第6回目:12月4日(日曜日)←CFP出場チーム決定
今後は毎週火曜日にランキングが発表され、各カンファレンスタイトルゲームが終わる12月4日の翌日正午にファイナルランキングが発表され上位4チームが晴れて全米タイトルを掛けて戦われるプレーオフに進出することになります。
歴史は繰り返す・・・?
最終的に重要なのは第6回目のCFPランキングなわけで、今回発表された初回のランキングに一喜一憂する必要はないのですが、過去のランキングの推移を見てみるとそれは一目瞭然です。
2014年度初回 1.ミシシッピ州立大 2.フロリダ州立大 3.アーバン大 4.ミシシッピ大 | 2014年度ファイナル 1.アラバマ大 2.オレゴン大 3.フロリダ州立大 4.オハイオ州立大 |
2015年度初回 1.クレムソン大 2.ルイジアナ州立大 3.オハイオ州立大 4.アラバマ大 | 2015年度ファイナル 1.クレムソン大 2.アラバマ大 3.ミシガン州立大 4.オクラホマ大 |
2016年度初回 1.アラバマ大 2.クレムソン大 3.ミシガン大 4.テキサスA&M大 | 2016年度ファイナル 1.アラバマ大 2.クレムソン大 3.オハイオ州立大 4.ワシントン大 |
2017年度初回 1.ジョージア大 2.アラバマ大 3.ノートルダム大 4.クレムソン大 | 2017年度ファイナル 1.クレムソン大 2.オクラホマ大 3.ジョージア大 4.アラバマ大 |
2018年度初回 1.アラバマ大 2.クレムソン大 3.ルイジアナ州立大 4.ノートルダム大 | 2018年度ファイナル 1.アラバマ大 2.クレムソン大 3.ノートルダム大 4.オクラホマ大 |
2019年度初回 1.オハイオ州立大 2.ルイジアナ州立大 3.アラバマ大 4.ペン州立大 | 2019年度ファイナル 1.ルイジアナ州立大 2.オハイオ州立大 3.クレムソン大 4.オクラホマ大 |
2020年度初回 1.アラバマ大 2.ノートルダム大 3.クレムソン大 4.オハイオ州立大 | 2020年度ファイナル 1.アラバマ大 2.クレムソン大 3.オハイオ州立大 4.ノートルダム大 |
2021年度初回 1.ジョージア大 2.アラバマ大 3.ミシガン州立大 4.オレゴン大 | 2021年度ファイナル 1.ジョージア大 2.アラバマ大 3.ミシガン大 4.シンシナティ大 |
2020度以外は見事に初回とファイナルのランキングの顔ぶれが変わっています。また2016年以降は初回のランキングで上位2チームが漏れなくファイナルランキングでも上位4位に食い込んで見事にプレーオフ進出を果たしています。今年の第1回目の1位と2位はテネシー大とオハイオ州立大ですが、彼らは最後までトップ4に残れるでしょうか?
今後もランキングが発表されるたびにいろいろなシナリオを想像してみては、あーだこーだ言うことになると思いますが、ひょっとしたらこのカオスがカレッジフットボールの最高の醍醐味なのかも知れません。