昨年の10勝3敗という成績はフロリダ州立大にとっては決して悪い数字ではありませんでした。しかしその3敗がすべてカンファレンス戦でのものであり、流石にそれではACCのタイトルを取るのは無理というものです。特にのちのハイズマントロフィー受賞者となるQBラマー・ジャクソン(Lamar Jackson)率いるルイビル大戦での63対20というスコアは近年のフロリダ州立大チームでも例を見ない大敗でした。
2014年度以来のカンファレンスタイトルを獲得しカレッジフットボールプレーオフ(CFP)に戻ってくるのが彼らの今年の大きな目標ですが、それを達成するには幾つかの障害を乗り越えなければなりません。それを少し見ていきましょう。
オフェンス
昨年のフロリダ州立大のオフェンスはスターRBダルヴィン・クック以外は平均的だったと言わざるを得ません。特に脆弱なOL陣のためQBデオンドレ・フランソワ(Deondre Francois)は必要以上に相手ディフェンスからのタックルを喰らっていました。2017年度もこのOL陣の出来がイマイチならば、フランソワが全試合無傷でプレーし続けられるかわかりません。彼らが昨年よりも大きく成長できているかどうかが大きなキーポイントとなります。
WR陣もまた若手の成長が期待されるポジションです。ニクヮン・マリー(Nyqwan Murry)とアーデン・テイト(Auden Tate)は昨年それなりのプレーチャンスを与えられましたが、今年はさらに彼らの活躍に期待がかかります。特に3年生となるダヴァンテ・フィリップス(Da’Vante Phillips)が最近問題を起こしてチームから無期限活動禁止処分となってしまったからなおのことです。
しかしなんといってもフロリダ州立大オフェンスの最大の焦点はRBクックの抜けた穴をいかに埋めるかです。過去3年間でそれぞれ1500ラッシュヤードを獲得してきた地上戦力の主役がいよいよプロに旅立ち、チームは大規模なオーバーホールを余儀なくされています。彼の後継者にはジャッキース・パトリック(Jacques Patrick)が控えていますが、今年1年生のルーキー、キャム・エイカーズ(Cam Akers)にも大きな期待が寄せられています。1月にすでに入学していたエイカーズは春季トレーニングでもコーチ陣を喜ばせる素晴らしいプレーを連発。彼が本番となるシーズンでも重用されたとしても不思議ではありません。
ディフェンス
2017年度のフロリダ州立大ディフェンスはタレントの宝庫ですが、DL陣からはデマーカス・ウォーカー(DeMarcus Walker)を失いました。彼は昨年たった一人で16つのQBサックに19.5つのTFL(タックルフォーロス、相手をラインオブスクリメージ後方へ押しやるタックル)を記録してACCの最優秀ディフェンス選手に選ばれたほどの逸材。一人で3人分ほどの仕事をこなすウォーカーの抜けた穴は確かに大きいです。しかし現チームにはブライアン・バーンズ(Brian Burns)、ジェコブ・ヒュー(Jacob Pugh)、ジョシュ・スウィート(Josh Sweat)、デリック・ナディ(Derrick Nnadi)が健在。4人合わせて26つのQBサックを量産した彼らがウォーカーが去った後のディフェンスを任されます。さらに今年1年生ながら大きな期待が寄せられるマーヴィン・ウィルソン(Marvin Wilson)にも注目です。
今季のフロリダ州立大のLB陣も全米トップレベルです。それを束ねるのが4年生となるマシュー・トーマス(Matthew Thomas)。昨年ようやく掴んだ先発のチャンスを遺憾無く発揮し77つのタックルを記録。最優秀ディフェンダーに贈られるベドナリク賞と最優秀ラインバッカーに贈られるバットカス賞の候補にすでに挙げられているほどです。
セカンダリーには昨年FBSで最多INT(8)を記録したDBターヴァラス・マクファデン(Tarvarus McFadden)そしてダーウィン・ジェームス(Derwin James)がバックフィールドに鎮座。ジェームスは2015年度シーズンに1年生ながら先発の座を確保してチームに大いに貢献し、昨年度も前年度よりまして活躍することが期待されていましたが、シーズン序盤に半月板を損傷。結局大部分のシーズンを棒に振ることになってしまいました。しかし今季彼は完全復帰。春のトレーニングでも怪我のブランクを感じさせない動きを見せコーチ陣を安心させました。彼が戻ってくるのはチームにとって非常にありがたいに違いありません。
見どころ
フロリダ州立大のシーズンは開幕戦でいきなりアラバマ大との大一番が待っています。アラバマ大フロントセブンの怒涛のプレッシャーからQBフランソワを守るためにもOL陣の強化が急務です。ラスベガスのオッズではアラバマ大有利という話ですが、フロリダ州立大にも十分勝機はあると思われます。もしこのゲームに勝つ事ができれば彼らが一気に全米ナンバーワンチームに躍り出る事でしょう。
初戦の壁を乗り越えると3戦目に同州内ライバル・マイアミ大との対戦。しかしマイアミ大は今季2期目となるマーク・リクト(Mark Richt)監督のもと未だ再建中なだけにフロリダ州立大にとってはまず問題でしょう。油断はできませんが。そして次なる障害は10月21日のルイビル大戦です。昨年のハイズマントロフィー受賞者QBラマー・ジャクソンをホームに迎えます。前述の通り昨年の彼らには63対20と完敗していますが、フロリダ州立大が2連敗するとは思えませんからおそらく昨年の雪辱を大いに晴らす事でしょう。
そして避けて通れないのは昨年の全米覇者・クレムソン大との試合(11月11日)です。今年はクレムソン大でのアウェーゲームとなりますが、おそらくこの試合の勝者が大西洋地区を制してACCチャンピオンシップに進出するようなシナリオになっているのではないでしょうか。
フロリダ州立大はアラバマ大との一戦に敗れる可能性はありますが、それでも今年のACC優勝レースでは最有力候補に挙げられています。なんといっても彼らには強力なディフェンスが付いていますし、長いシーズンを戦う上でそれは大きなプラスポイントです。さらにシーズンを通して彼らが経験を積めば全米でも1、2を争うユニットに成長する可能性すらあります。
彼らのカレッジフットボールプレーオフ進出はかなり高い可能性で期待できそうです。後はその先どこまでいけるか・・・。2013年以来のナショナルタイトル獲得なるかどうかに注目が集まりそうです。
2022年度シーズン開幕!【第0週目レビュー】
いよいよ開幕した2022年度シーズンのカレッジフットボール!今年は予習不足で不安だらけの開幕になってしまいましたが、まずは前哨戦である「Week 0」に行なわれた数試合のレビューをお届けします。
ダボ・フューリー!
先週クレムソン大とフロリダ州立大の試合が開催不可となりました。これは双方で新型コロナに感染した選手が出た余波によるものですが、試合当日にこれを聞かされて寝耳に水だったクレムソン大のダボ・スウィニー監督の怒りは収まりません。
カレッジフットボールとネイティヴアメリカン
NFLのワシントンレッドスキンズは長年批判され続けてきたそのニックネームとロゴの使用を取りやめる決定を下しました。レッドスキンズはネイティヴアメリカンを刺激する名前であり、BLM運動からなる人権問題の圧力に彼らが折れた形になりましたが、今後この流れがカレッジにも押し寄せるのでしょうか?
変わりゆくカレッジトラディション
5月にミネソタ州ミネアポリスで起こった白人警官による黒人への暴行致死事件を発端にアメリカだけでなく世界中でBLM運動が行われています。この運動によりアメリカでは人種差別を生んだ悪しき歴史と決別するために様々な声が上がっています。そしてその波はカレッジ界にも押し寄せているのです。
Black Lives Matter
5月25日にミネアポリス市で発生した白人警官による黒人男性への暴行致死事件を受けて各地では連日人種差別や社会的不公正是正を訴える抗議行動が拡散。その規模はますます大きくなっていますが、対処する警官隊たちの行動も激化し事態は混沌化。そんな中カレッジフットボール界からも行動を起こそうという声が挙がっています。
第11週目の見どころ
第11週目の最大のマッチアップはLSUとアラバマ大の大一番。しかし当然今週末にはこの試合の他にもたくさんの試合が組まれており、その中にはCFPレースに大いに関わってくるものもあります。前回の記事ではLSUとアラバマ大の試合にスポットライトを当てましたが、今回はその他の試合の見どころを探っていきたいと思います。
フロリダ州立大、タガート監督を解雇
ツイッターやこの記事でもすでに紹介しましたが、先週マイアミ大とのライバルゲームで27対10と惨敗し今季4勝5敗となったフロリダ州立大はウィリー・タガート(Willie Taggart)監督をシーズン途中ながら解雇する苦肉の決断を下しました。
フロリダ州立大の助っ人
開幕後1勝2敗発進してファンからの批判を真っ向から浴びたフロリダ州立大のウィリー・タガート監督。名門校を預かった指揮官として2年連続の負け越しは彼の進退問題にも発展しかねませんが、4試合目以降は2連勝。その負の連鎖を断ち切ったのはある助っ人の存在でした。
エクストラポイント【第1週目】
テネシー大とフロリダ州立大が開幕戦で敗れてしまった話とか、USCのQBダニエルズが今季全ツ帽となってしまった話とか、ノースカロライナ大での初戦を白星で飾ったブラウン新監督の話とか、サウスカロライナ大の新QBの話とか、イリノイ大の転校生フォードの話とか、ルイビル大のチアリーダーの話とか。
黄色信号?【フロリダ州立大プレビュー】
ジンボ・フィッシャー監督(現テキサスA&M大)に出て行かれてしまったフロリダ州立大は昨年ウィリー・タガート監督を迎えて新たな船出となりましたが結果は5勝7敗と惨敗。36年連続ボウルゲーム出場記録も途絶え、早くも後がない感が漂っています。今年結果を残さなければタガート体制に赤信号が灯ってしまうかも。
2017年度スケジュール
9月2日 | アラバマ大 |
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9月9日 | ルイジアナ大モンロー校 |
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9月16日 | マイアミ大 |
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9月23日 | ノースカロライナ州立大 |
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9月30日 | ウェイクフォレスト大 |
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10月14日 | デューク大 |
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10月21日 | ルイビル大 |
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10月27日 | ボストンカレッジ |
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11月4日 | シラキュース大 |
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11月11日 | クレムソン大 |
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11月18日 | デラウエア州立大 |
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11月25日 | フロリダ大 |
*太字はホーム、斜線はニュートラルサイト(ジョージア州アトランタ・メルセデスベンツスタジアム)
チーム情報
所在地
フロリダ州タラハシー
所属カンファレンス
ACC(大西洋地区)
ホームスタジアム
ドークキャンベルスタジアム
通算戦績
532勝244敗17分け
通算ボウルゲーム戦績
27勝16敗2分け
ヘッドコーチ
ジンボ・フィッシャー
78勝17敗(8年目)
【キャリア通算:78勝17敗】
前回全米優勝年度
2013年度
前回ACC優勝年度
2014年度
前回ボウルゲーム出場年度
2016年度(オレンジボウル)