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アラバマ大、コーディネーターを一新【オフシーズン便り#6】

アラバマ大、コーディネーターを一新【オフシーズン便り#6】

サウスイースタンカンファレンス(SEC)に所属している強豪アラバマ大では、オフシーズンに相次いでコーディネーターの入れ替えが行われました。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

DCのゴールディング氏、ミシシッピ大へ

2017年12月にアラバマ大に合流し2018年度シーズンから本格的にチームに帯同してきたピート・ゴールディング(Pete Golding)氏。2019年には単独のディフェンシブコーディネーター(DC)に昇格しますが、この年アラバマ大ディフェンスは通年と比べるとパワーダウン。チームもレギュラーシーズンでジョー・バロウ(Joe Burrow、現シンシナティベンガルズ)率いるルイジアナ州立大アーバン大に敗れプレーオフ進出を初めて逃してしまいます。

アラバマ大のディフェンスはニック・セイバン(Nick Saban)監督が就任した2007年以来チームの大きな強みとして知られてきました。特に2008年から2015年までアラバマ大に帯同した、カービー・スマート(Kirby Smart、現ジョージア大監督)氏、そして2016年と2017年にDCを務めたジェレミー・プルイット(Jeremy Pruitt、前テネシー大監督)氏が作り上げたディフェンスが素晴らしかったので、そのレベルに達することができないとやはりファンたちは納得しないわけです。

それに比べるとゴールディング氏のディフェンスはそれまでの守備力と比べると多少物足りないものだと言われてきており、地元アラバマ州タスカルーサ市では彼のポピュラリティーはあまり高くないとされていました。

そこに来てオフシーズンにゴールディング氏がミシシッピ大へ電撃移籍することが判明。解雇ではなくゴールディング氏自らアラバマ大を出ていくことを決心したわけです。

ミシシッピ大を現在率いているのはレーン・キフィン(Lane Kiffin)監督。ご存知の方も多いかもしれませんが、キフィン監督はかつてアラバマ大でOCを務めていたという人物でもあります。

これまで何度も師匠であったセイバン監督を倒そうとトライし続けましたが、今のところまだ勝ち星はなし。そこで師匠を倒すためにその師匠の腹心を自らの懐に抱き込んだ、という風にも考えられるかもしれません。

もしくは11勝を挙げるも常にナショナルタイトルをとることを義務付けられたような場所で、自分の仕事を評価されずに批判ばかり受けることに嫌気がさして新天地を目指したというゴールディング氏の意思があったのかもしれません。

ただいずれにせよ、SEC西地区に所属するアラバマ大と同地区のミシシッピ大にゴールディング氏が移籍したのは大変興味深いですね。

そしてゴールディング氏が去った後にアラバマ大の新DCに選ばれたのが前マイアミ大DCのケヴィン・スティール(Kevin Steele)氏です。

スティール氏は2007年のセイバン監督の初年度にDCを務め、一度クレムソン大へと出て行った後に2013年から2年間アラバマ大に戻ってきてLBをコーチするなどし、その後はルイジアナ州立大アーバン大テネシー大を経て昨年からマイアミ大のDCを務めていましたが、今回3度目のアラバマ大のコーチ陣に復帰。アラバマ大では2007年以来のDCを務めることになります。

ただ2007年時のディフェンスはセイバン監督時代の中でもっとも最弱(といっても初年度でチームが出来上がっていなかったこともありますが)で、2008年にはDCの座を剥奪されているのでスティール氏の3度目の正直はどうなるか興味津々です。


OCのオブライエン氏はニューイングランドペイトリオッツへ

一方アラバマ大はオフェンシブコーディネーター(OC)だったビル・オブライエン(Bill O’Brien)氏も離脱。彼はNFLニューイングランドペイトリオッツのOCに就任するためにアラバマ大を離れました。

オブライエン氏はかつてペイトリオッツで2011年にOCを務めたという縁もあり、今回の就任の運びになったようです。かつては当時QBだったトム・ブレディ(Tom Brady、元ミシガン大)氏とベンチで言い合っていたのが印象的でした。

既にスタープレーヤーだったブレディに怒鳴りつけていたあの度胸はなかなかのものだったなと感じたものです。

そのオブライエン氏は2012年から2年間ペンシルバニア州立大の監督に就任します。

当時ペンシルバニア州立大は元アシスタントのジェリー・サンダスキー(Jerry Sandasky)氏の男児性的虐待事件で揺れ、彼らのレジェンダリーHCジョー・パターノ(Joe Paterno)監督も騒動の責任を取る形で解雇されるという史上稀に見るスキャンダルに揺れたチームでした。

参考記事「なぜあの時・・・」

そのチームを任されたオブライエン監督は2年間で15勝9敗とチームの空中分解を何とか防いだ功労者でした。

当時フットボール部は活動停止の可能性もあるとまで言われ、ブランドは地に落ち、選手たちには関係ないにも関わらず彼らは世間の冷たい視線を浴びることになってしまいました。そんな状況で大学側は選手たちに無条件で他大学に転校することを許していたのですが、その多くの選手がそんな環境にも関わらず大学に残ってペンステートのジャージを着てプレーし続けました。

そこでそんな選手たちに敬意を表するため、オブライエン氏は粋な計らいを見せます。

ペンステートは長いことジャージ(ユニフォーム)に選手の名前を刻んできませんでした。それは一人一人が個を犠牲にしてチームに尽くすというメッセージが込められていたからだと言われています。しかしオブライエン氏はこのスキャンダル騒動中にも関わらず大学に留まってくれた選手たちのラストネームをジャージの背中につけることを決めたのです。

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オブライエン氏と当時のQBマット・マグロイン

そしてオブライエン氏は2014年からはNFLヒューストンテキサンズの監督に就任。7年間で4度のPO進出を果たしますが、後年にはGMを兼任したことでチームを管理しきれなくなり2020年度シーズン途中に解雇されてしまいます。

その後2021年にアラバマ大のOCに就任。その年はCFPタイトルゲームに進出するも決勝戦でジョージア大に敗戦。そして今年はCFPが導入されて以来2度目となるプレーオフ進出を逃してしまいました。

OCとしてのオブライエン氏のプレーコーリングには賛否が分かれており、特に地元タスカルーサ市ではどちらかというとOCを変えたほうがいいという声が多かったも事実。そう言った意味ではファンにとってはオブライエン氏の離脱はそこまで悲観的に取られていないようです。

そのオブライエン氏が抜けたOCの座に着いたのは昨年までノートルダム大でOCを務めていたトミー・リー(Tommy Ree)氏。

現在30歳と非常に若いリー氏は2010年から2013年までノートルダム大でQBを務めた人物。2015年からコーチングの道に足を踏み入れ2017年から母校に凱旋してQBコーチを務め、2020年からOCに昇格。

2021年度シーズ後に当時ノートルダム大のHCだったブライアン・ケリー(Brian Kelly)監督が突如としてルイジアナ州立大に移籍した際には彼もケリー監督についてLSU入りするかと思われましたが、母校に残留して在校生を繋ぎ止め、同時期にDCを務めHCに昇格したマーカス・フリーマン(Marcus Freeman)新監督と主にポスト・ケリー体制のノートルダム大の船出を任されました。

そこにきて今回のアラバマ大への移籍となります。母校の選手たちに「俺はこの愛すべき母校に残る!」と豪語した1年後にその母校を離れることにいささかの違和感を感じますが(苦笑)、しかしながら移籍先があのアラバマ大な訳ですから、今後のコーチングキャリアのことを考えればリー氏にしてみれば容易に手放せる話ではなかったんでしょうね。

アラバマ大は2014年にニック・セイバン監督がレーン・キフィン(Lane Kiffin、現ミシシッピ大HC)氏をOCに迎えて以来、よりパスに比重を置くオフェンスにシフトチェンジして時代の流れにアジャストしてきました。それはブライアン・デイボール(Brian Daboll、現ニューヨークジャイアンツHC)氏やスティーヴ・サーキジアン(Steve Sarkisian、現テキサス大HC)氏に受け継がれその間3つのナショナルタイトルを獲得。

オブライエン氏のオフェンスはどちらかというとプロスタイル系統のオフェンスだったと言われており、若いリー氏がどのようなオフェンスをアラバマ大に持ち込むのかに注目が集まります。

セイバン監督のアシスタントコーチ陣は彼の帝王学を学んだ後に巣立って各地でHCとなっています。その中には生え抜きのコーチがいたり、もしくは一度失敗したもののセイバン監督に拾われて再び輝きを取り戻したというコーチもいたりします。

過去にセイバン監督の下に仕えたコーチたち

  • カービー・スマート(Kirby Smart、現ジョージア大HC)
  • ジンボ・フィッシャー(Jimbo Fisher、現テキサスA&M大HC)
  • マリオ・クリストバル(Mario Cristobal、現マイアミ大HC)
  • レーン・キフィン(Lane Kiffin、現ミシシッピ大HC)
  • スティーヴ・サーキジアン(Steve Sarkisian、現テキサス大)
  • メル・タッカー(Mel Tucker、現ミシガン州立大)
  • マイク・ロックスリー(Mike Locksley、現メリーランド大HC)
  • ビリー・ネイピアー(Billy Napier、現フロリダ大HC)
  • チャールズ・ハフ(Charles Huff、現マーシャル大HC)
  • ダン・レニング(Dan Lenning、現アラバマ大HC)
  • ブッチ・ジョーンズ(Butch Jones、現アーカンソー州立大HC)
  • ジェレミー・プルイット(Jeremy Pruitt、前テネシー大HC)
  • マーク・ダントニオ(Mark Dantonio、前ミシガン州立大HC)
  • ウィル・ムスチャンプ(Will Muschamp、前サウスカロライナ大HC)
  • ジム・マクエルウェイン(Jim McElwain、現セントラルミシガン大HC)
  • デレク・ドゥーリー(Derek Dooley、元テネシー大HC)
  • など

さて、昨年プレーオフ進出を逃したアラバマ大。あと1年でテキサス大やオクラホマ大がSECに参戦しますし、ジョージア大の強さは本物だし、そのほかにも伸びているチームが続々出現しています。はたしてアラバマ大がその強さをして大舞台に戻ってくる姿を見ることができるでしょうか・・・?

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