かつてワシントン大でオフェンシブコーディネーター(OC)を務め、昨年まではNFLシアトルシーホークスのOCをしていたライアン・グラブ(Ryan Grubb)氏が新たにアラバマ大のOCに就任することになりました。
グラブ氏はアラバマ大にやってくることで、盟友であるケイレン・デボアー(Kalen DeBoer)監督と再びタッグを組むことに。彼らは2007年にNCAA(全米大学体育協会)ディビジョン2部所属のスーフォールズ大(Sioux Falls、サウスダコタ州)で一緒だった頃からの間柄。特にデボアー監督が監督を務めたフレズノ州立大(2020年〜2021年)とワシントン大(2022年〜2023年)時代には彼の右腕としてグラブ氏はOCを務めた過去があります。
実はグラブ氏がアラバマ大から勧誘を受けたのはこれが3度目。最初は2023年度、当時の監督だったニック・セイバン(Nick Saban)前監督から新たなOC就任を打診されましたが、この時はデボアー監督と共にワシントン大で戦うためにこの要請を断っていました。
さらに2023年度シーズン後にそのセイバン氏が引退を表明し、その後釜にデボアー監督が次期アラバマ大に就任が決まるとグラブ氏もアラバマ大へ共に移籍すると思われていましたが、2023年度にワシントン大をCFP(カレッジフットボールプレーオフ)ナショナルチャンピオンシップへ牽引したオフェンスの手腕を買われてシーホークスのOCに抜擢されアラバマ大行きを断念していました。
ただシアトルではスコアリングオフェンスが全体で21位、トータルオフェンスでは14位、ラッシュオフェンスが28位とマイク・マクドナルド(Mike Mcdonald)監督にとって満足いく数字が出ず、グラブ氏はたったの1年でお役御免となってしまいました。
グラブ氏とシアトルQBジーノ・スミス
ただ、シアトルのQBジーノ・スミス(Geno Smith)はグラブ氏の残留を希望していたようで、「彼は本当に素晴らしいコーチだと思うが、それ以上に素晴らしい男だった。NFLでやっていける素晴らしい能力を持っているコーディネーターだと思うし、自分をより良いQBに成長させてくれたコーチだった」とグラブ氏を擁護するコメントを残していました。
実際グラブ氏はこれまでフレズノ州立大でジャック・ヘイナー(Jack Haener、現ニューオーリンズセインツ)、ワシントン大でマイケル・ペニックス・Jr(Michael Penix Jr、現アトランタファルコンズ)を指導した腕があります。特にペニックス・Jrは2023年度にワシントン大がCFPタイトルゲームに進出した際の原動力であり、彼の成長はグラブ氏の手腕に寄るところが大きいとされていました。
そんなグラブ氏がアラバマ大へやってくるわけですが、デボアー監督体制初年度だった2024年度はスコアリングオフェンスこそ全米22位でしたが、ランオフェンスが47位、パスオフェンスが56位にとどまり、戦績も9勝4敗とここ最近のアラバマ大としては最低のシーズンを送ってしまいました。
QBジェイレン・ミルロー(Jalen Milroe)は元々機動力で活かされるQBではありましたが、ミッドレンジでのパス精力に欠け彼の不調のせいで落とした試合もあったように思えます。この時のOCはニック・シェリダン(Nick Sherridan)氏ですが、彼もまたデボアー監督と一緒にワシントン大からアラバマ大にやってきたコーチ。ワシントン大ではTEコーチをしていましたが、グラブ氏がアラバマ大に合流しなかったことで彼がOCに昇格していました。
グラブ氏とは顔見知りのシェリダン氏ですが、グラブ氏がアラバマ大にやってきてOC就任となったことでシェリダン氏は自動的にOCの座を譲ることになります。ただシェリダン氏はそのままアラバマ大に残留するということで、この辺りの関係性も気になるところですが、顔見知りということでギクシャクするようなことはないのかもしれません。
2024年度が残念なシーズンで終わってしまったアラバマ大。セイバン前監督というカレッジフットボール史上最高のヘッドコーチの後を継いだデボアー監督としてはなんともほろ苦いシーズンとなってしまいましたが、それ故にファンや後援者が望む結果のハードルは非常に高いのが実際のところ。優勝戦線に最低でも立っていることが最低条件とされるアラバマ大で2025年も並みなシーズンを送ってしまうと、「デボアー監督ではダメだ」という論調が沸き起こりかねません。
そんな中、ワシントン大を2年で全米タイトルゲームに牽引したデボアー監督とグラブ氏のタッグ復活は朗報と言えそうです。前述のミルローはNFLドラフト入りを宣言しているため、来季は新しい先発QBを立てることになります。現在のところミルローをバックアップしていたタイ・シンプソン(Ty Simpson)が先発候補とされていますが、ワシントン大時代から唾をつけていたオースティン・マック(Austin Mack)や今年5つ星評価を得て入部してくる期待の新入生のキーロン・ラッセル(Keelon Russell)にも大いにチャンスはあるでしょう。
果たしてグラブ氏を迎えてアラバマ大のオフェンスは復活するのか・・・。見ものですね。
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