カレッジフットボール第5週目はトップ10同士の試合が3つも組まれている大変エキサイティングな週となります。日曜日には確実にトップ10の面子が入れ替わる、このサバイバルレース、シーズン前半戦の大きな山場と言えそうです。
ルイビル大(3位)vs クレムソン大(5位)
ルイビル大とクレムソン大のマッチアップがこれほどまでに注目を浴びることになると開幕前に誰が予想したでしょうか。ルイビル大のセンセーション、ラマー・ジャクソン(Lamar Jackson)が注目の選手であったことは確かですが、まさかハイズマンレースのトップを走るほどの選手になるとは思いもよりませんでした。もちろんチーム全体の力がなければ全米3位にまで上り詰めることはできませんが、ジャクソンの力が大きくチームの好調に影響していることは明らかです。
クレムソン大QBデショーン・ワトソン(Deshaun Watson)も昨シーズンまさに同じような経緯をたどってきました。彼の抜群の身体能力で一気に全米のスターダムにのし上がり、チームも全米1位にまで駆け上がり、彼自身もハイズマントロフィー最終候補まで残りました。
ジャクソンとワトソン、共通点が多い二人のQBを擁するチーム同士の戦いは否応にも注目を浴びるわけです。
ルイビル大はこれまで対戦相手をけちょんけちょんにしていきました。が、クレムソン大ディフェンス相手には今まで以上にはいかないでしょう。ジャクソンもこれまでのように彼の個人の力だけでどうにかできなくなることでしょうから、QBとしていかに周囲の選手を使いこなせるかが試されることになるでしょう。しかし、もしジャクソンがそれでもクレムソン大ディフェンスを手玉にとるようなことがあれば・・・。その時は彼のハイズマントロフィーへの切符は確実なものになると言えるかもしれません。
クレムソン大は全米2位発進するもワトソンは昨年ほどの活躍を披露するに至らず、チームも昨年のように徹底的に対戦相手をなぎ倒すようなスタイルを持ち合わせていませんでした。結果2位から5位に転落、今回の対戦相手のルイビル大にも追い抜かれてしまいました。ただ彼らのディフェンスは今の所統計上ナンバーワンとされており、もしジャクソン率いるルイビル大を止めることができるチームがいるとすればそれはクレムソン大をおいて他にないでしょう。
スタンフォード大(7位)vs ワシントン大(10位)
最初のトップ10同士の対戦は今晩(米時間金曜日)に行われる西海岸の大一番、スタンフォード大対ワシントン大のゲームです。Pac-12カンファレンス北地区の覇権争いで大変重要なマッチアップとなります。
RBクリスチャン・マカフリー(Christian McCaffrey)率いるスタンフォード大オフェンスが全米トップレベルと囁かれるディフェンシブバックフィールドを擁するワシントン大に挑みます。トータルで見ると双方の選手のタレントレベルは拮抗していますから、勝負の結果は監督の頭脳勝負、すなわちスタンフォード大のデヴィッド・ショウ(David Shaw)監督とワシントン大のクリス・ピーターセン(Chris Petersen)との腕比べとなりそうです。
ワシントン大は開幕後いわゆる「カップケーキチーム(勝つことを前提にスケジュールされた格下チームの呼称)」との3連戦に余裕で勝利を収めると、先週いよいよ腕試しとなるアリゾナ大戦を迎えます。この試合ではワシントン大の脆弱性も露呈されますが、オーバータイムの末に勝利を掴みました。厳しい試合を勝ち抜いたという経験はおそらく選手にとってプラスの経験となったことでしょう。スタンフォード大との決戦の前にこのような自信をつけられたのは大きな強みです。
もしスタンフォード大との試合に勝つことができれば、カンファレンスタイトルだけでなく、プレーオフ進出への道も現実味を帯びてきます。ピーターセン監督が就任して以来ワシントン大は確実に力をつけて来ていますが、未だ大きな印象を与えるような「ビッグウィン」を飾っていません。このスタンフォード大戦でそれを達成することができるでしょうか。
昨年の対決ではマカフリーはワシントン大ディフェンス相手に109ランヤードを記録しましたが、彼の当時のパフォーマンスを振り返れば109ヤードに抑えられたという見方もできます。ただそれを埋め合わせるかの如くマカフリーはパスキャッチでその威力を発揮。1TDを含む112レシーブヤードを記録。さらに合計79ヤードのパントリターンを加え300のオールパーパスヤードを稼いでワシントン大を31対14と粉砕しました。今年もスタンフォード大が勝利するためには昨年以上にマカフリーの力が必要となりそうですが、彼がワシントン大ディフェンスに攻略されてしまうとスタンフォード大は厳しくなりそうです。
ウィスコンシン大(8位)vs ミシガン大(4位)
先週ミシガン州立大にアウェーで完璧な形で勝利を収めたウィスコンシン大はまず第一のハードルを乗り越えたといえます。が今週末に超えなければならないハードルは更に高く険しいものとなります。それが全米4位と絶好調のミシガン大です。
両チームともこれまで全勝を飾っていますがどちらの方のこれまでの戦い振りが勝っているかは決めかねるところです。ミシガン大は先週ペンシルバニア州立大相手に49対10と大勝しましたが、その前の週にはコロラド大に苦戦を強いられました。先週コロラド大がオレゴン大を破った事を考えるとミシガン大が彼らに手こずったのも頷けますが。
ウィスコンシン大は初戦のルイジアナ州立大と先週のミシガン州立大というビッグネームから白星を奪ったのは評価されますが、ジョージア州立大に思わぬ苦戦をするという浮き沈みを経験してきました。ですから両校のこれまでのプロファイルはイーブンと見ていいと思います。
ミシガン大の強みはそのディフェンス力です。ウィスコンシン大の1年生QBアレックス・ホーニブルック(Alex Hornibrook)がこの強力ディフェンスに対応できるだけの器量を持っているかが鍵になります。中距離パスを得意とするホーニブルックのパフォーマンスがウィスコンシン大のランオフェンスに広がりを見せ、攻撃に幅を作りました。これがミシガン大に通用するか見ものです。ミシガン大のトップDBジェレミー・クラーク(Jeremy Clark)が膝の怪我でシーズン絶望となったのがどう響くか。
またウィスコンシン大は数字上では全米10位のランディフェンスを誇っています。一方これまでミシガン大は1試合平均約300ランヤードをたたき出しており、ミシガン大のパワフルランオフェンスとトップレベルのウィスコンシン大ディフェンスがどうぶつかり合うかが楽しみです。
テネシー大(11位)vs ジョージア大(25位)
先週テキサスA&M大にやられるまでジョージア大は全米12位にランクされていましたが、この敗戦でジョージア大がまだ再建中であることが露呈されました。一方テネシー大はフロリダ大戦に勝利し開幕時につまずいて(格下アパラチアン州立大に辛勝)失った勢いをようやく取り戻しつつあります。
注目はテネシー大がこの勢いを持続できるか、というところにあります。2004年以来の勝利をフロリダ大から収めチームの士気も高まっていることでしょうが、このエネルギーを浪費させないようなコーチングができるのか、ブッチ・ジョーンズ(Butch Jones)監督の手腕が問われます。
ジョージア大のこの試合での鍵はRBニック・チャブ(Nick Chubb)が足首の怪我から復帰できるかどうかにかかっています。前試合では後半戦を欠場したチャブですが、バックアップのソニー・ミシェル(Sony Michel)とブライアン・ヘリエン(Brian Herrien)が能力のあるRBとは言っても、全米トップクラスのRBであるチャブスには及びません。テネシー大のランディフェンスは相手オフェンスに1キャリー平均約4ヤードしか許していなことを考えると、チャブが完調でないとジョージア大オフェンスはパスに頼らざるをえなくなります。ジョージア大QBジェコブ・イーソン(Jacob Eason)は5つ星選手であるとはいえ所詮1年生。彼一人でテネシー大ディフェンスを切り崩すのは肩が重いでしょう。
オクラホマ大 vs テキサスクリスチャン大(21位)
すでに2敗を喫しランク外に転落してしまったオクラホマ大ではありますが、その2敗は現在6位のヒューストン大と2位のオハイオ州立大から喫してしまったものであり、実際の彼らの実力は2敗だということで片付けるには時期相応です。このテキサスクリスチャン大戦に勝利できれば再びランクインすることでしょうし、プレーオフはないにしろBig 12カンファレンスタイトル奪取は十分可能なポジションにいると言えます。
テキサスクリスチャン大はオクラホマ州立大に勝利してトップ25に返り咲きましたが、ランク外に転落する原因となったアーカンソー大との敗戦に加え、サウスダコタ州立大戦とサザンメソディスト大戦での苦戦を考えると今年の彼らはこれまでのように「確実に勝つチーム」であるとは言えなそうです。
オクラホマ大が勝つには彼らのディフェンスをどうにかしなければなりません。これまでオクラホマ大ディフェンスは1試合平均32失点を犯しています。対するテキサスクリスチャン大の1試合平均得点が43点であることを考えれば、ディフェンスがテキサスクリスチャン大のオフェンスを抑えられないとこのゲームは点の取り合いとなりそうです。特にテキサスクリスチャン大にはケニー・ヒル(Kenny Hill)という機動力抜群なQBが健在ですので、この点を先週のバイウィーク中に徹底的に立て直していると思いたいです。オクラホマ大にはベイカー・メイフィールド(Baker Mayfield)という優れたQBがおり、点を取ることに関しては問題ないはずです。
どちらにしてもオフェンスがディフェンスを凌駕し合うゲーム展開となりそうです。
テキサス大(22位)vs オクラホマ州立大
1敗のテキサス大と2敗のオクラホマ州立大とのこの対決、負けたほうがBig 12カンファレンスの優勝レースから大きく後退することになるでしょう。
テキサス大にとってはカンファレンスタイトルで生き残るだけでなく、カリフォルニア大に食らった1敗を取り返すためにもこの試合での勝利が喉から手が出るほど欲しいはずです。しかも開幕戦で飾ったノートルダム大からの勝利ですが、ノートルダム大が現在1勝3敗と大苦戦している事を考えるとテキサス大が挙げたこの勝利の価値も下がってしまっため、なおさらの事世間の印象を挽回できる機会を伺っているのです。
テキサス大はカリフォルニア大との敗戦ゲームで相手のパス攻撃を防ぎきれませんでした。オクラホマ州立大のWRジェームス・ワシントン(James Washington)はこれまで全米トップとなる、4度の70ヤード越えのレシービングを記録しています。特にピッツバーグ大戦では9回の捕球で296ヤードものキャッチを披露しました。テキサス大にとっては天敵となることでしょう。
ようやくいいスタートを切りこれまで批判の的となっていたチャーリー・ストロング(Charlie Strong)監督への風当たりが弱くなったところ、この試合に負けることでもあればその熱が再発しかねません。
ミズーリ大 vs ルイジアナ州立大
レス・マイルズ(Les Miles)監督解雇後初の試合となるルイジアナ州立大。大学がマイルズ監督を解雇したことを正当化するためにもこの試合には是非勝っておきたいところですが、果たしてそう上手くいくでしょうか?
ルイジアナ州立大のQBはブランドン・ハリス(Brandon Harris)だろうがダニー・エトリング(Danny Etling)だろうが攻撃のシステムを大幅に新調しない限り結果は同じです。しかしどちらが出場するにしろ、QBがそれなりのプレーをしなければ彼らのスターRBレナード・フォーネット(Leonard Fournette)の能力を活かせません。ましてや彼は満身創痍なのですから、彼だけでオフェンスを組手てるなんて言うのはいくらなんでも荷が重すぎるのです。
マイルズ監督なき後チームを率いるのはディフェンシブコーディネーターのエド・オルジェロン(Ed Orgeron)氏です。彼は過去にサザンカリフォルニア大でも当時のヘッドコーチ、レーン・キフィン(Lane Kiffin=現アラバマ大オフェンシブコーディネーター)氏が解雇された時に臨時ヘッドコーチを務め、その時は6勝2敗というレコードを残していますので、今回のように突然チームを任されるというのには慣れています。彼が沈みかけた船を浮きあげることができるか、大変見ものです。