11月5日にはいよいよ今シーズン初となるカレッジフットボールプレーオフ(CFP)ランキングが発表されました。今後12月8日まで毎週発表されることになるこのランキングのファイナルランキングの結果を受けてプレーオフ進出チームが選出されることになります。
このランキングで上位に残ること、ないし各カンファレンスで優勝することが栄えあるこの大舞台に立つことを許されます。残りの試合がカンファレンス優勝決定戦を含めると最大5試合。この終盤での黒星はどちらのレースにおいても致命傷になりかねません。
この第11週目にも負けた方がカンファレンスタイトルレースおよびCFP出場レースで脱落するような試合が組まれています。そんな試合を中心に注目していただきたい試合を簡単にご紹介します。
目次
#11 アラバマ大 @ #15 ルイジアナ州立大
SEC(サウスイースタンカンファレンス)の旧西地区内ライバル同士の戦い。現在トータルで6勝2敗(カンファレンス戦では3勝1敗)のルイジアナ州立大と同じくトータルで6勝2敗のアラバマ大(カンファレンス戦では3勝2敗)の激突はSECタイトルレースそしてCFP出場レースにおいて非常に重要な試合となります。
すでに2敗しているものの、カンファレンス戦績では3勝1敗でまだSEC優勝決定戦の望みがあるルイジアナ州立大に対し、カンファレンス戦ですでに2敗してしまっているアラバマ大は実質的にはCFP出場を目指すことになります。どちらにしても負けた方がそれぞれ目指すレースから脱落することがほぼ確定的なので、当然プレッシャーは高くなりますし、しかもライバル同士の戦いですから盛り上がり度は並みのものではないわけです。
現在11位のアラバマ大は一時全米首位に輝くも伏兵ヴァンダービルト大にまさかの敗戦を喫して1敗目。そして同じくライバルチームであるテネシー大にも敗れて2敗。11月を迎える前にアラバマ大が2敗を喫したのは2007年以降初ということで、今年から指揮を取るケイレン・デボアー(Kalen DeBoer)新監督への風当たりは早くも強くなっています。
元々タレントの質は高く、またオフェンスに長けた戦術を持つデボアー監督の下でアラバマ大オフェンスがハイスコアを叩き出し続けると思われていましたが、ジョージア大との一戦に勝って以来オフェンスはQBジェイレン・ミルロー(Jalen Milroe)の機動力に頼るプレーンなものに成り下がってしまった感じ。チームには若干17歳のスーパールーキー、ライアン・ウィリアムス(Ryan Williams)という優れたWRがいますが、投げるミルローの調子が上がらないと宝の持ち腐れです。
ミルローはポケットでボールを持ちすぎる癖があり、得意の機動力があるとは言っても全てを交わし切れるわけではありません。今季はここまで18個のQBサックを喰らっており、ボールの手離れの悪さが少し目につきます。
ただロングレンジのパス成功率は93%という数字も出ており、スキーム次第で爆発するというポテンシャルを持っているのは魅力的です。アラバマ大のOL陣は決して悪くないはずなので、的確な判断力があればジョージア大戦の前半戦で見せたような神がかったパフォーマンスを発揮してくれるはずです。
一方ルイジアナ州立大はQBギャレット・ナスマイアー(Garrett Nussmeier)を中心としたオフェンスで臨みますが、彼もハマれば先輩であるジョー・バロウ(Joe Burrow、現シンシナティベンガルズ)並みのプレーを披露できるポテンシャルを持っていますが、プレッシャー下での脆弱さも持ち合わせている選手。先々週のテキサスA&M大戦では相手のディフェンスの激しいプレッシャーにあって3つのINTパスを犯し、結果的に逆転負けに繋がってしまいました。
試合の鍵はやはりルイジアナ州立大ディフェンスがアラバマ大のミルローをどう抑え込むかにかかっているかと思います。昨年ミルローはホームでLSUのディフェンスを足で攻略し152ヤードに4TDをランで稼ぎました。しかし今回はLSUでのホームでのナイトゲーム。他のどの試合よりも最もアウェーチームとしてはやりづらいと言われる夜のタイガースタジアムでミルローを抑え込めれば、LSUに勝機は自ずと流れていくことでしょう。
逆に言えばアラバマ大は前半からスコアをとりにいかなければ、一気に飲み込まれてしまうことになり、追う展開にでもなればますます厳しい状況に置かれることになります。
LSUはブライアン・ケリー(Brian Kelly)監督指揮下でのホームでのナイトゲームの戦績がなんと驚きの12勝0敗。この状況でめっぽう強いLSU、勝てばSECタイトルゲーム出場レースに生き残り、2019年度以来のプレーオフ進出が見えてきます。
#3 ジョージア大 @ #16 ミシシッピ大
こちらもまたSEC戦線において非常に見逃せない試合です。
現在16位のミシシッピ大はここまで7勝2敗という戦績を残していますが、前半のスケジュールが割とソフトだったことが中盤以降に響いており、ここまでケンタッキー大とLSUに敗れてカンファレンス戦ですでに2敗を喫してしまいました。
一方のジョージア大はここまでストレングス・オブ・スケジュールの数字は全米1位。つまりここまで全米中で最も厳しいスケジュールをこなしながらもアラバマ大に敗れた1敗を守っているということになります。特に開幕戦でのクレムソン大、そして当時1位だったテキサス大にアウェーで勝利したことは彼らのチーム力の素晴らしさを表しています。
そういった波いる強豪チームと長年渡り合ってきたベテランでもあるカービー・スマート(Kirby Smart)監督にとって、アウェーであろうがランクチームとの戦いに勝つ術を備えているのは大きな強みです。昨年の同一カードではジョージア大がミシシッピ大ディフェンスから611ヤードに52得点を奪っており、相性の良さもピカイチです。
ミシシッピ大は今季開幕時から期待度が高かったのですが、ランクチームに手こずるのは相変わらずで、2021年から現在までランクチームとの対戦成績は6勝7敗と負け越し中。オフェンスのスキームは素晴らしいものを持っており、先週のアーカンソー大戦では63得点を奪うというハイパワーオフェンスを見せてくれましたが、全米指折りのジョージア大ディフェンスに対してどこまでスコアリングできるのかが見もの。
ジョージア大ディフェンスを地上戦力でこじ開けるのは正直厳しそうですから、鍵はミシシッピ大QBジャクソン・ダート(Jaxon Dart)がジョージア大をアウトスコアできるかどうか・・・。それにはエースWRトレイ・ハリス(Tre Harris)とのホットライン構築が必須条件となりそうです。
一つ気がかりなのはジョージア大QBカーソン・ベック(Carson Beck)が直近3試合で実に8つものINTパスを量産してしまっていること。ミシシッピ大ディフェンスがベックからターンオーバーを引き出すことができればひょっとしたらひょっとするかもです。
その他の注目の試合
ワシントン大 @ #6 ペンシルバニア州立大
先週オハイオ州立大との一大決戦で見事に散ったペンシルバニア州立大。ホームゲームだったのにも関わらずオフェンスが不発で敗戦し、大舞台で勝てないジェームス・フランクリン(James Franklin)監督への不信感が増す結果となってしまっています。
そんな中迎えるワシントン大戦はペンステート恒例の「ホワイトアウト」。スタジアムをファンが真っ白に染め上げる光景は絶景ですが、チームとしてはオハイオ州立大戦での敗戦を引き摺らないかどうかが気になるところ。CFPランキングは6位ですが、オハイオ州立大に敗れたことでBig Tenタイトルゲーム進出への道は少々狭まってしまいました。こうなれば狙うはCFP出場。しかしここで負ければその夢も潰えてしまう可能性大です。
ワシントン大は現在5勝。もう1勝すればボウルゲーム出場権獲得となる6勝目となるため、白星を取れるならぜひ取っておきたいところ。先週旧友のサザンカリフォルニア大を下したモメンタムをこのアウェーゲームで継続できるか?
ミシガン大 @ #8 インディアナ大
今季誰も予想できなかったインディアナ大の快進撃。元々フットボールの強豪校と見られることはなかった彼らですが、今季は新監督のカート・シグネッティ(Curt Cignetti)監督の下、ここまで破竹の9連勝中。CFPランキングでも8位と現在のところCFP出場圏内に鎮座しています。
注目はQBのカーティス・ローク(Kurtis Rourke)。2023年までミッドアメリカンカンファレンス(MAC)のオハイオ大に所属し2022年にはMACのMVPにも輝いたロークは今年からインディアナ大に転校。ここでは19TDに3INTでQBレーティングが全米2位となる91.6ポイントと活躍。3試合前のネブラスカ大戦で親指を負傷し手術を受けましたが、2週間後のミシガン州立大戦で早くも復活し263ヤードに4TDと大活躍。Big Tenトップのスコアリングオフェンスユニットを率います。
ミシガン大は昨年度全米覇者ながらすでに5勝4敗。ただ「腐ってもミシガン」な意地を見せることができるか?
#9 ブリガムヤング大 @ ユタ大
ユタ州内のライバル同士で「ホーリーウォー(聖戦)」という異名を持つライバリー。2010年以来の開催となる今回のカードですが、開幕時に高い評価を得るもここまで4勝4敗と苦戦中のユタ大と、現在まで8勝無敗でCFPランキング9位にまで上り詰めたブリガムヤング大という、天と地の差があるシーズンを送っている2校の対戦となります。
ブリガムヤング大は攻守ともに安定感の高いチーム。1試合平均得点数が約35点で平均獲得ヤード数が400ヤード越えのオフェンスと、所属するBig 12カンファレンスでトップとなる14つのパスINTを含む合計18個のターンオーバー獲得数を誇るディフェンスを擁しています。現在先発QBも定まらないユタ大としてはブリガムヤング大を倒すのは少々ハードルが高いかも。
フロリダ州立大 @ #10 ノートルダム大
現在7勝1敗でCFPランク10位のノートルダム大とここまで1勝8敗と泥沼のフロリダ州立大との対決。これだけ見ればどちらが有利かは一目瞭然です。
今季第2戦目に格下ノーザンイリノイ大に苦杯を舐めさせられたノートルダム大ですが、それ以降は無傷の6連勝中。残念ながらそのノーザンイリノイ大戦での敗戦を抹消することができませんが、現時点のチーム力を見ると開幕時と比べれば格段にバランスの取れたチームに生まれ変わっています。
そのノートルダム大のマーカス・フリーマン(Marcus Freeman)監督が「今季我々が対戦してきた中で最もタレント揃いのチーム」と言わしめたフロリダ州立大ですが、昨年ACCを制しながらCFPに進出できなかった精神的ダメージが尾を引いているかのように今季は目も当てられない絶不調ぶりを露呈。良いところが全くない中、選手のモチベーションが保たれなければ9敗目は必然的です。
#20 コロラド大 @ テキサス工科大
「コーチプライム」ことディオン・サンダース(Deion Sanders)監督就任2年目となるコロラド大は昨年4勝8敗と惨敗でしたが、今年は6勝2敗とすでにボウルゲーム出場権を獲得。ここまで来れば当然狙うはBig 12カンファレンスのタイトル、そしてそれを引っ提げてCFP進出です。
コロラド大が昨年と決定的に違うのはディフェンス力。エリート級とは言えませんが、相手に競り勝つだけの守備力を持っており、元々オフェンス力はQBシェドゥア・サンダース(Shedeur Sanders)というNFL級のQBとオフェンシブコーディネーターでNFLのベテランコーチであるパット・シューマー(Pat Shurmur)氏のおかげでシーズンを追うごとに磨かれており、今のところ波にのる未知数なチームといえます。
そんな中やはり注目はWRとDBを兼任するトラヴィス・ハンター(Travis Hunter)。先週のシンシナティ大戦ではレシーバーとして153ヤードに2TD、CBとしては4つのパスブレークと縦横無尽の活躍。ハイズマントロフィー候補とも謳われるハンターのプレーに注目です。
ただテキサス工科大は先週11位だったアイオワ州立大を敵地で倒す金星を手に入れており、モメンタムを擁していると思われるチーム。コロラド大はランカーチームですが舐めてかかるとアイオワ州立大の二の舞になりかねません・・・。
#25 陸軍士官学校 @ ノーステキサス大
現在驚きの8勝無敗を誇る陸軍士官学校は第1回目のCFPランキングで25位に滑り込み。APランキングでは18位だったため、評価がかなり落とされたのが非常に残念ではありますが、今季のシンデレラチームの一角として今後無敗を守り切れるのかが焦点となります。
その陸軍士官学校快進撃の主軸となってきたのがQBのブライソン・デイリー(Bryson Daily)です。変則のトリプルオプション使いのチームのQBとして走ってはチームハイとなる909ヤードに19TD、そして投げても629ヤードに7TD(0INT)と、これまでの陸軍士官学校のオプションQBとしてはかなりパスを投げる印象がある選手。
そんなデイリーですが、非公開の怪我のせいで前戦の空軍士官学校戦を欠場。このノーステキサス大戦で復帰してくるかが見ものですが、2週間後のノートルダム大戦を控えて無理をさせたくないというのも首脳陣の思惑としてあることでしょう。ノートルダム大を倒すという僅かな望みのためにはデイリーの存在は必要不可欠。プレーオフ進出への微かな希望を燃やし続けるためにも、デイリーの怪我の状態は死活問題なわけです。
ただデイリーがこのノーステキサス大戦に出てこれなくても、トリプルオプションという超特殊なオフェンスに相手が対応するのは至難の業。空軍士官学校ではバックアップのケンイ・ウドウ(Kanye Udoh)が158ヤードに2TDを稼いでデイリー不在の穴を埋めてくれました。また全米1位となるスコアリングディフェンス(1試合平均約11失点)を誇る守備陣の存在もあり、トータルオフェンスで全米3位のノーステキサス大オフェンスとのマッチアップも見ものです。
陸軍士官学校はFBSで唯一、今季一度も相手にリードを奪われていないチームであり、現在進行形の連勝記録としては昨年から続いて全米最長となる12連勝を記録中。この試合に勝って9勝目を飾ればそれは1996年以来の偉業。話題の絶えない陸軍士官学校の快進撃をもっと見ていたいところです。
サウスカロライナ大 @ ヴァンダービルト大
先週テキサスA&M大を倒して名を馳せたサウスカロライナ大と、すでに6勝目を挙げてボウルゲーム出場権を獲得したヴァンダービルト大の一戦。かつてヴァンダービルト大が弱かったことを知る者としてはm、どこまで彼らが白星を重ねることができるのかを見続けたいところですが、いつも尻上がりに調子を上げてくるサウスカロライナ大はヴァンディーにとっては手強い相手。