「アメリカは訴訟の国」なんて言葉は陳腐に聞こえますが、何でもかんでも裁判所にバトルが持ち込まれる国であることは事実であります。まあ基本的に日本でもその権利は保証されていることでしょうが、お国柄なのか法廷で問題を解決しようという思考がアメリカ人には日本人よりも埋め込まれているように感じます。
そんな折カレッジフットボール界でも2つの訴訟が起こりました。どちらも起こるべくして起きたという事例ではありますが・・・。
UCLAがアンダーアーマーを告訴
大手スポーツメーカーであるアンダーアーマーはUCLAと専属契約を結んでいましたが、コロナ禍によるビジネスの悪化を改善するために一方的に契約を破棄することを発表していました。そしてそれを受けてUCLAがこれを契約違反としてアンダーアーマーを訴えることになったのです。
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2016年にUCLAはアンダーアーマーと15年間で2億8000万ドル(1ドル100円で約280億円)のスポンサー契約を提携。これはアメリカの大学スポーツ界において史上最高額のアパレル契約となりました。
しかしアメリカにおいて最大のスポーツメーカーはナイキであることは想像に難くないと思いますが、彼らを差し置いてアンダーアーマーがこのような史上稀に見る契約を取り付けたことは、当時驚きと同時に「本当に大丈夫なのか?」という疑念も湧いたものでした。
そしてその不安は的中。アンダーアーマーがビジネスの世界でもう一皮剥けない時間が過ぎていきましたがそこにきて現在のコロナ不況が到来。そのダブルパンチで彼らの台所事情はさらに悪化していったのです。
そこでその危機を乗り越えるために絞り出したアイデアがUCLAとの契約破棄だったわけです。もっともアンダーアーマー側の言い分はコロナ禍を全面に押し出すものでしたが、コロナ不況という理由を隠れ蓑にしてでUCLAとの契約を破棄することでそれまでの業績不振へのテコ入れをしたという身勝手感は否めません。
もともとこの史上稀に見る契約内容が身の丈に合わず無謀なものだったことが大きな要因であり、それを一方的に破棄されたとなればUCALが訴訟を起こすことは目に見えていたのです。
UCLAはこの訴訟で2億ドル(約200億円)の損害賠償金を請求しているそうです。
一部のネブラスカ大選手がBig Tenを告訴
御存知の通り今シーズンBig TenカンファレンスとPac-12カンファレンスは参戦しないことを表明しています。一方でアトランティックコーストカンファレンス(ACC)、Big 12カンファレンス、サウスイースタンカンファレンス(SEC)らは開幕へ向けて邁進中であり、Big TenやPac-12の選手や関係者にしてみれば「奴らがプレーできてなんで俺たちがプレーできないんだ!?」と苛立ちを抑えられないことでしょう。
中でもシーズン中止が囁かれた頃から何が何でも今季参戦すると息巻いていたのがBig Ten所属のネブラスカ大。カンファレンスがシーズンをシャットダウンしたことを表明したあとでも大学総出でこの意見に真っ向から対立し、Big Tenを抜けてでも2020年度シーズンを迎えると豪語していました。
結局大学側は百歩譲ってこの決断を受け入れざるを得ませんでしたが、Big Tenカンファレンスのシーズンキャンセルを決断するに至るプロセスは沢山の批判の声を生みました。特に4年生にしてみればたとえ来年プレー資格が保証されていたとしても失われる時間は帰ってくること無いからです。
そこでネブラスカ大の8選手はこのフラストレーションをぶつけるためにBig Tenカンファレンス相手に訴訟を起こしたのです。
その訴えとはズバリ「シーズン中止(延期)を決断するに至るまでのプロセスの明言化」そして「中止措置の取り消し」です。
シーズン不参加を最終的に決めたBig Tenカンファレンスのコミッショナーであるケヴィン・ワレン(Kevin Warren)氏は、「この決断を撤回せよ」という多くの声にも関わらず撤回はしないと断言。しかし未だに諦めきれないBig Ten所属大学は現在に至っても様々な手を使って今季開幕への道を探っています。
もう9月になるというのにこんな話題が上がってくるなんて・・・。まったく何という世の中になったことでしょう。