近年オフェンスのプレー速度が上がっているせいもあり、そういったオフェンスを相手にするチームのディフェンスにとっては全てが後手に回ってしまうというケースは少なくないです。特に選手の入れ替えすらできないスピードでオフェンスが次から次へとプレーを繰り出せば、ディフェンス、特に体の大きいDL陣の体力の消耗速度は早まるばかりでしょう。
こういった相手オフェンスの高速オフェンスを止める術としてしばしば見られるのは、ディフェンスが怪我をしたフリをしてフィールドに倒れ込み、メディカルタイムアウトを使用することで一旦相手オフェンスの流れを止めてしまおうというものです。
またディフェンスだけでなくオフェンスでも「今のはフェイクなのでは・・・」という倒れ込み方をするシーンも見られなくはありません。たとえばフィールド上にいる選手の人数が多すぎたり少なすぎたりした場合で、その調整がセット前までに行えなかったりした場合に、怪我を装って倒れ込んで一旦クロックを止める、なんて場面を見たことがある方もいるのではないでしょうか。
当然怪我を本当にしていたならばメディカルタイムアウトを使うのはあるべき姿なのですが、それを逆手に取る怪我のフェイクと言う行為はスポーツマンシップ的には認められないものです。しかし、怪我をしたと申告したケースを「今のはフェイクだろ!」と断言するのは難しいですし、そういったものを可能にするシステムも現在存在しません。
選手の怪我については安全面を最大限に考慮すると言う意味でいわば「聖域」なのですが、それを利用して不自然に倒れ込むケースは後を断ちません。
Blatant fake injury from Ole Miss vs. Kentucky
— On3 (@On3sports) September 28, 2024
(via @ESPN)pic.twitter.com/l09rrJ7cA1
そこでアメリカンフットボールコーチ協会(American Football Coaches Association)はNCAAのルール制定委員会(NCAA Football Rules Committee)に、この怪我のふりする行為を食い止めるための策をこの度提案しました。
これまで怪我を負った選手は最低1プレーベンチに下がらなければならないというルールが適用されてきました。この場合、本当の怪我であろうがフェイクの怪我であろうが、1プレー後に戻れる状態ならばフィールドに復帰できることになります。つまり、もしフェイクの怪我でベンチに下がったとしても、その選手は1プレー後にはすぐに復帰できることになります。
フェイクの怪我で相手オフェンスの勢いを衰えさせたり自らの体制を立て直すことができ、さらにその代償が1プレーだけ出場できないという程度のものならば、損得を考えた場合に怪我のフリをするほうが得だとなれば、こういった行為が今後も使用されていくと思われます。
それを防止するには、フェイクの怪我をしたほうが損をする、と言うような状況を生み出すほかありません。そこでアメリカンフットボールコーチ協会が考えついたのが、受傷した場合その選手は1プレーだけではなく、そのドライブ全てにおいてフィールドに戻ることができないということにする、と言うものです。
本当に怪我をした場合、1プレー後に即復帰できない場合が多い事を考えれば、その残りのドライブ中には復帰できないというのはそこまで理不尽ではないかもしれません。しかし、ただ1度プレーを止めたいが為にフェイクの怪我で退場しそのまま残りのドライブに戻れないとなれば、果たしてそれをすることが得なのかと考えた時に安易に怪我したフリするようことをするチームが減るのではないか、と言うのが狙いのようです。
怪我がフェイクかフェイクでないのかを瞬時には明らかにできないのであれば、フェイクの怪我を使わせないようにするのがそもそもの防止策になる・・・確かにアイデア的にはいいのかもしれません。
ただこのルールを掻い潜るために敢えて主力選手ではない選手を送り込み、その選手がフェイクの怪我で倒れ込んでベンチに退場処分となればこの行為を行ったチームの戦力は保たれる、といったようなスニーキーな事をしようと考えるチームも現れるでしょう(実際いたかもしれません)。ルールの隙を突こうとするコーチはいつの時代にでもいるものですから。
また、本当に怪我をしてしまった場合、残りのドライブに参加できない事を嫌って怪我を隠してプレーし続けてさらに危険な状況に陥ってしまう、と言う可能性も否定できません。
今の所この提案の中には、怪我をした場合でももしタイムアウトを使用した場合であれば同じドライブで選手が戻ってくることができるとか、相手とのコンタクトによって起きた怪我の場合には同じドライブ中に復帰できるとかいう案もあるようです。多くのフェイクの怪我がノンコンタクトで突然足をつったとばかりに倒れ込むことから、そのような事例と差別化を図ると言うものです。
この提案は今後ルール制定委員会で議論され、承認されれば4月に行われる会合で議題に出されて最終的に採用するかどうか決められるそうです。採用が決まれば早ければ来る2025年度シーズンから施行される模様です。
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