カレッジフットボールの醍醐味として挙げられるのは、スタジアムの独特な雰囲気とか、マーチングバンドとか、チアリーダーとか、ライバリーだとか色々あると思います。その中でもそれぞれのアイデンティティを主張するための手段として愛称があったりマスコットが存在することは非常に特徴的であります。
愛称(ニックネーム)やマスコットは長い間同じものが愛されるのが通例ですが、時としてニックネーム、ないしはマスコットが変更になることもあります。普通はイメージを壊しかねないので滅多に行われることではありませんが、例えばシラキュース大はかつて「オレンジメン(Orangemen)」と呼ばれてきましたが、このニックネームだと「Men」とあるように男性限定のニックネームに聞こえかねないため、2004年に「オレンジ(Orange)」と言う名に改名しました。
これは歴史的背景が改名に影響しているといえますが、同じような経緯でマスコットを変えたチームがあります。サウスイースタンカンファレンスのミシシッピ大です。
ミシシッピ大のニックネームは「レベルズ(Rebels)」ですが、これは「南部人」という意味で、特に南北戦争時の南部軍人を指す言葉です。ミシシッピ大が深南部に位置することからもこの名前は昔からごく自然に使用されてきました。
しかし南北戦争の背景をご存じの方なら分かるかもしれませんが、南部は黒人奴隷を強く推し進めていた地域であり、現在の歴史的解釈からすると「悪者」扱いされる傾向にあります。だから最近ならば南部の州で代々掲げられてきた南部軍の旗の掲揚を中止するべしというデモが起きたりしました。
そんなこともあり、南部軍と深い関わりのある「レベルズ」というニックネームを変えろという声が挙がったこともありました。様々な議論がされた結果1936年以来使われ続けているこの愛称を手放すことは出来ないという方針になりましたが、その代わり同じく長いこと愛され続けてきたマスコット「レブ大佐(Colonel Reb」は時代遅れだから新調しようという動きになりました。
在りし日の(?)レブ大佐
そしてレブ大佐は2003年を最後に公式マスコットとしての役目を終えることになったのです(もっとも大学関連のグッズなどには未だに彼のイラストを見ることが出来ますが)。
そして暫くの間フットボールゲームなどの公式行事ではマスコットが無いという状態が続きましたが、2010年に黒熊の「レベルブラックベアー(Rebel Black Bear)」が新しいマスコットとなったのです。
レベルブラックベアー・・・なぜ熊?
ただマスコットが熊になった後もミシシッピ大といえば「レブ大佐」というイメージは強く、ブラックベアーはあまり世に浸透しませんでした。だからということか分かりませんが、なんと今年彼らは再びマスコットを変更することにしたのです。しかもその名も「ランドシャーク(Landshark)トニー」だそうです。
Meet Tony! 🦈
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— Year of the Fan (@OleMissSports) August 11, 2018
ランドシャークというからにはサメが何かしらの関わりを持っていると思われるでしょうが、事の始まりは2008年度。当時のミシシッピ大のディフェンス陣がビッグプレーを見せる度にサメのヒレを模したポーズを取ることになり、それが密かなトラディションになっていきました。そして昨年新マスコットを何にするか決める投票にてランドシャークが新たなマスコットになったのです。
そしてトニーというのは2008年からチームに合流したトニー・フェイン(Tony Fein)氏から取られました。元従軍者のフェイン氏はイラク戦争後にアリゾナ州の短期大学を経てミシシッピ大に編入。そして出場した試合でビッグプレーの度に前述のサメのヒレポーズを取ったことが始まりだったそうです。
トニー・フェイン氏
残念ながらフェイン氏は2009年に他界されましたが、彼の功績に敬意を表して過去10年間愛されてきたサメのポーズとフェイン氏の名前を融合して「ランドシャークトニー」というマスコットに落ち着いたようです。
見た目は大変奇妙ではありますが、その裏話を聞くと「まあこれでもいいのかなぁ・・・」と思わされます。今年のミシシッピ大の試合はゲーム自体の他にサイドラインでランドシャークトニーがどうしているかが気になりそうです。