今年度のカレッジフットボールプレーオフ(CFP)の準決勝戦がいよいよ間近に迫ってきました。その第1戦目はコットンボウルで行われるクレムソン大とノートルダム大の一戦。この大一番の見どころを探ってみたいと思います。
目次
数字で見るマッチアップ
クレムソン大 | スタッツ (1試合平均) |
ノートルダム大 |
45.2 (#4) | 得点数 | 33.8 (#24) |
270.1 (#27) | パスオフェンス | 265.6 (#31) |
259.8 (#8) | ランオフェンス | 190.5 (#48) |
14.2 (#3) | 失点数 | 17.2 (#9) |
183.8 (#18) | パスディフェンス | 198.0 (#34) |
92.9 (#3) | ランディフェンス | 133.5 (#31) |
ノートルダム大オフェンス 対 クレムソン大ディフェンス
CFPに進出した4チームのうち、ノートルダム大のオフェンスが最もパワー不足という評価をされています。それは何よりも彼らがここまで鉄壁のディフェンスを持つチームと戦ってきていないゆえに、彼らの真の実力が試されていないためだと思われます。とはいえ、彼らは数字の上では素晴らしい結果を残してはいます。
ノートルダム大のオフェンスが全米トップレベルのディフェンス相手でも通用するのか・・・それはこのコットンボウルでのクレムソン大戦で明らかになるはずです。クレムソン大ディフェンスはランディフェンスで全米3位、パスディフェンスで全米19位、トータルで4位とまさに5本の指に入る強力なディフェンスを擁します。彼らの力はただ単に相手オフェンスを止めるだけでなく、試合の流れを変えてしまうほどの影響力を持っています。そんな彼らに対峙するのはそう簡単なことではありません。
ノートルダム大に朗報があるとすれば、そのクレムソン大ディフェンスの中でもNFL級と言われるデクスター・ローレンス(Dexter Lawrence)がつい先日薬物検査に引っかかってこのコットンボウルに出場できなくなったことです。もしノートルダム大がRBデクスター・ウィリアムス(Dexter Williams)をしてクレムソン大ディフェンスから足でヤードを稼ぐことが出来たとしたら、QBイアン・ブック(Ian Book)への負担を軽くすることが出来るでしょうし、そうなるとちょっと面白くなるかもしれません。
今季途中から先発を任されたブックはまさにノートルダム大の救世主と言え、彼によってオフェンスに幅ができたためにチームは元々高評価を得ていたディフェンスだけのチームから脱皮することが出来ました。特にブックはシーズン最後4試合のうち3試合で300ヤード以上を投げる好調を維持しており、またRBウィリアムスも最近4試合の平均ランヤード数は約125ヤードということで、調子が上向きのままクレムソン大戦を迎えられるのは吉報です。
ただもしクレムソン大の強力がフロントセブンに序盤から手こずるようであれば後手に回ることになり、ノートルダム大の勝機は逃げていってしまうかもしれません。
トレヴァー・ローレンス vs ノートルダム大ディフェンス
今季1年生ながらシーズン序盤に先発の座をケリー・ブライアント(Kelly Bryant)から奪ったトレヴァー・ローレンス(Trevor Lawrence)。彼はエキスパートの目を釘付けにするようなパフォーマンスを毎週見せつけてきたとは言い難いですが、それでもチームが全勝でレギュラーシーズンを終えるのに十分に貢献しました。さすが2018年度のリクルーティングクラスで全米ナンバーワンと言われたブルーチップ選手だけのことはあります。
が、とはいってもローレンスが1年生であることに変わりはなく、経験豊富な選手というわけでないのは明らかです。それにクレムソン大が所属するアトランティックコーストカンファレンス(ACC)にはクレムソン大に楯突くことの出来るディフェンスを持つチームは皆無であり、クレムソン大オフェンスもまた真の実力を測りかねるチームと言えます。唯一彼らが手こずったテキサスA&M大戦ではローレンスは不調で結局ブライアントがチームの勝利をお膳立てしたという過去もあったりします。
そのローレンスが挑むノートルダム大ディフェンスはパスディフェンスが全米34位(198ヤード)、トータルで21位と数字上ではエリートクラスとは言えないかもしれません。しかしこのユニットの力があったからこそここまで彼らが無敗で要られたことは確実ですし、ローレンスにとってはここまで対決してきたどのチームよりもバランスの取れたディフェンスといえます。つまりローレンスにとってもこの試合で彼の真価が問われることになるのです。
ノートルダム大はここまで32個のQBサックを記録しており、またパスインターセプションも合計12つも奪っています。もしノートルダム大のオフェンスがクレムソン大ディフェンスに対して善戦し、試合が僅差になったとしたらクレムソン大はローレンスのプレーに命運をかけることになります。その時若いローレンスがチームに勝利をもたらすことが出来るのか?プレッシャー下で真の実力を発揮することが出来るのか?そこが大きな焦点となるでしょう。
トラヴィス・エティエン vs ノートルダム大ディフェンス
スーパールーキーのトレヴァー・ローレンスが将来クレムソン大だけでなくカレッジフットボール界を背負って立つような選手になることは間違いありませんが、今年に限って言えばクレムソン大のオフェンスの主軸になっているのはローレンスではなくRBトラヴィス・エティエン(Travis Etienne)です。今季ここまで1463ヤードという数字は全米5位の記録。TD数も21個でこちらは全米3位という好記録。パワーとスピードを兼ね備えたエティエンは間違いなく今季トップクラスのRBです。
そのエティエンをノートルダム大ディフェンスが止めることが出来るかはLBティヴォン・コニー(Te’von Coney)とFSアロヒ・ギルマン(Alohi Gilman)にかかっています。コニーはここまで107つのソロタックル、その内9個はタックル・フォー・ロス(TFL)。またギルマンも76個のタックルを相手に食らわせてきました。
ノートルダム大のランディフェンスは全米32位ということでエティエンのようなエリートバックを止める事ができるのかも試合の行方を占うことになるでしょう。
ブライアン・ケリー vs ダボ・スウィニー
ノートルダム大を指揮するブライアン・ケリー(Brian Kelly)監督は2016年に4勝8敗で監督の椅子が危ういと言われながら昨年10勝3敗とし、そして今年は12勝無敗。監督として2年前よりも落ち着いた印象が強く、彼の得意なしたたかさが本領発揮しています。AP年間最優秀監督賞を獲得することだけあります。
一方のクレムソン大のダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督は地道なリクルーティングと選手に「この人のためにプレーしたい」と思わせてくれるカリスマ性を持ってダイナスティーを築き上げてきています。今年は昨年までの先発QBブライアントをシーズン途中でベンチに下げるという苦渋の決断を下し、結果ブライアントは退部してしまうという結果を招きました。しかしチームはローレンスを擁してここまで無敗でやってきました。QBをめぐる騒動を取り扱わなければならなかったのにもかかわらずチームが空中分解せずにここまでこれたのはスウィニー監督の管理能力のおかげだといえるでしょう。
緻密なケリー監督と情熱的なスウィニー監督という対決の構図となったこの試合。彼らの指揮官としての戦い見ものです。
総評
クレムソン大は今回で4度目のCFP出場となりますが、ノートルダム大は今回が初出場。この経験値が試合を左右するかはわかりませんが、過去にプレーオフに進出したことのある選手が多くいることは精神的によりニュートラルで試合に臨めることが見込まれますから、これはクレムソン大にとっては有利と言えそうです。
ノートルダム大がナショナルチャンピオンへのチャンスを得るのは2012年以来のこと。このとき彼らは全米1位で2位のアラバマ大とBCSナショナルチャンピオンシップを闘ったのですが、この試合では彼らはアラバマ大に42対14と大敗。晴れの舞台でこてんぱんにやられてしまったことで、ノートルダム大はもっとも過大評価を受けたタイトルマッチ参加チームと揶揄されました。そして今年、彼らがCFP進出を決めた時多くの人がその当時の二の舞いを踏むと今年のチームを評価しない声も聞かれました。
このコットンボウルにおけるラスベガスのオッズはクレムソン大有利となっていますが、今年のノートルダム大なら2012年のときとは異なりそれなりに戦えると見込みます。勝てば念願のCFPナショナルタイトルゲームへ駒を進めることになりますから、両チームとも持てる力の120%を出してくることでしょう。
今回試合不出場となったクレムソン大のローレンスの欠場がどれだけ試合の行方を変えるのか・・・。そしてノートルダム大という古豪が1988年以来の全米制覇への道をつなぎとめることが出来るか・・・。大変楽しみなゲームです。