ジョージア大vsアラバマ大(SEC優勝決定戦)
サウスイースタンカンファレンス(SEC)のタイトルゲームはジョージア大(12勝0敗、全米1位)とアラバマ大(11勝1敗、全米3位)の対決。アメリカ東部時間午後4時(日本時間日曜日午前6時)キックオフとなります。
お互いのランク、戦績、レジメ(戦績履歴)、知名度、どれをとってもメガマッチということになりますが、一方でジョージア大の強さが桁違いとされているためにそこまでの激戦になるのかどうか分からない試合とも言えます。
ジョージア大はシーズン中盤でアラバマ大がテキサスA&M大に敗れて以来首位をキープし続けています。そのジョージア大の強みはズバリディフェンス。特にフロントセブンの重量感はプロレベル顔負けとも言われており、今季6年目となるカービー・スマート(Kirby Smart)監督が世に放ってきたユニットと比べてもおそらく最強といえるでしょう。
その主力となるのはDEジョーダン・デーヴィス(Jordan Davis)。身長6インチ6フィート(約198センチ)に体重340パウンド(約154キロ)という巨漢ながら機動力があり、相手OL陣の悪夢に。また彼だけではなくDEジェイレン・カーター(Jalen Carter)、LBナコビ・ディーン(Nakobe Dean)といったNFLドラフト1巡目級の選手が構えており、このユニットをランで崩すのは容易ではありません。
現にジョージア大のランディフェンスは1試合平均約79ヤードで全米3位。しかしディフェンシブバックフィールドも鉄壁で1試合平均で許したパスヤードは約150ヤードで全米2位。失点数は1試合平均7失点未満で1位。2位のクレムソン大が平均15失点ですからいかにジョージア大ディフェンスが優れているかがおわかりいただけると思います。
しかし彼らがここまで勝ち進んできたのはディフェンスの力だけが理由ではありません。決して飛び道具が得意という派手なオフェンスではありませんが、強力なOL陣を軸にRBザミアー・ホワイト(Zamir White)やジェームス・クック(James Cook)による頼れるランで流れをつかめば、QBステソン・ベネット(Stetson Bennett)のプレーアクションパスが炸裂。大きなミスのない安定した攻撃で付け入る隙きを与えません。
ベネットは元々先発QBではありませんでしたが、QB J.T.ダニエルズ(J.T. Daniels)が怪我で出遅れる中スターターを任され、コーチらの期待以上の働きをしてきた無名のエース。前年度アラバマ大と対戦したときも出場しましたがこの時はアラバマ大ディフェンスの前に撃沈。しかし今年は高い経験値と自信を備え付けており「ジョージア大の正QB」として相手ディフェンスの驚異となります。
ベネットのターゲットして注目したいのはTEブロック・ボワーズ(Brock Bowers)。1年生のTEながらボワーズは今季チームトップとなる652レシーブヤードに10TDを量産。また大きなフレームなのに俊足とあり、アラバマ大のパスディフェンスとしてはミスマッチとなる可能性大です。
.@brockbowers17 turns on the jets for the @GeorgiaFootball TD 💨 pic.twitter.com/Y3ZXUCAY0J
— SEC Network (@SECNetwork) November 27, 2021
さらにジョージア大は怪我で戦線を離れていたWRジョージ・ピッケンズ(George Pickens)が先週のジョージア工科大戦で復帰。目立った活躍はありませんでしたが、ゲームチェンジャーともなり得る彼が帰ってくるとなれば鬼に金棒です。
そんな全く隙きのなさそうなジョージア大に立ち向かうアラバマ大。昨年覇者の彼らではありますが、この試合は珍しくアンダードッグとされておりいかにアラバマ大とはいえこのジョージア大を倒すのは一筋縄ではいきません。
オフェンスに関して言えばとにかくOL陣の脆さが目立ちます。特に先週のアーバン大戦では相手のパスラッシュの猛攻を許し実に7つものQBサックを献上してしまいました。またランブロックにしてもOL陣がペネトレイトすることが出来ずにランヤードは71ヤード(前半を終えた時点ではマイナス2ヤード)でした。このOL陣が上に挙げたモンスター級のフロントセブンを制御することが出来るとは思えず、QBブライス・ヤング(Bryce Young)にとっては長い一日となりそうです。
とはいえアラバマ大が勝つには点を取らなければならないわけですが、RBブライアン・ロビンソン(Brian Robinson)はアーバン大戦で負傷、またトップWRであるジェミソン・ウィリアムス(Jemison Williams)は同じアーバン大戦でターゲッティングの反則をくらってジョージア大戦の前半は出場出来ないことになっており、彼らの希望はQBヤングに託されることになります。
現在ハイズマントロフィーレースに名を連ねるヤングがもしこの試合で万が一にでもジョージア大を倒す原動力になればトロフィーが彼の手に渡る可能性は高まります。ポケットでの冷静さ、球離れの速さ、またディフェンスをかわせる機動力を持ち合わせている今期を代表するQBであるヤング。しかし崩されたOL陣の背後でヤングにすべてを託すというのは分が悪い話。とはいえ彼のミラクルがなければおそらくジョージア大から1つもTDを奪うことは出来ないでしょうから、全米3位といえど台所事情の悪さが伺えます。
ただアラバマ大も全てにおいて悲観することもありません。ディフェンスにおいてはトータルディフェンスで全米7位、ランディフェンスに関して言えば全米4位と特にフロントセブンは全米でもトップクラス。その中心を担うのがLBウィル・アンダーソン(Will Anderson)。今季チームの守備を一人で背負っているといっても過言ではないほどの縦横無尽な活躍。おそらく来週以降に行われるアワード授賞式でも複数のトロフィーを家に持ち帰ることになるでしょう。
しかし不安なのはパスディフェンス。今季はコミュニケーション不足なのか戦術不足なのかバックフィールドで幾度となく相手にパスを通される場面が見受けられました。そのアラバマ大らしからぬ姿にDCピート・ゴールディング(Pete Golding)氏へ多くの批判がファンから集まってしまいました。もしジョージア大QBベネットにパスラッシュが届かなかった場合、「メールマン」というニックネームを持つベネットのパスが飛び交うことになるでしょうから、そのようにして点差が離されてしまうと手の施しようがなくなるでしょうね。
アラバマ大としてはアーバン大戦で見せたようなパスラッシュとランディフェンスでジョージア大に得点のチャンスを与えずロースコアゲームに持ち込む以外勝機はないのではないでしょうか。スコアリングオフェンスで全米5位のアラバマ大ですが、彼らはここまでジョージア大程のディフェンスと対峙したことがないのですから。
ジョージア大は勝っても負けてもプレーオフ進出が当確と言われていますが、当然負けてプレーオフに進出するよりもこれまで長く苦杯を飲まされてきているアラバマ大を倒し、無敗で全米チャンピオンへの道を駆け上りたいところ。
特にスマート監督としてはこの試合に掛ける思いは誰よりも強いと思われます。かつてニック・セイバン(Nick Saban)監督に8年仕えたスマート監督ですが、ジョージア大の監督に就任して以来師であるセイバン監督には3戦全敗。特に2018年度のナショナルタイトルゲームでのオーバータイムでの惜敗を味わっており、是が非でもアラバマ大を乗り越えて全米制覇を成し遂げたいと燃えていることでしょう。
一方のアラバマ大は負ければプレーオフ進出の可能性はほぼなくなり、全米二連覇の夢は消えてしまいます。セイバン監督としては今年テキサスA&M大に敗れるまで彼の「弟子」との対戦戦績は無双状態でした。スマート監督に敗れればこれで2敗目となりますが、今年のセイバン監督を見ているとこれまでと違い勝っても負けても穏やかな感じ(比較的)。アーバン大戦後の勝利インタビューでは決して内容は褒められたものではなかったにもかかわらず勝てたことに喜びを感じ笑みまで見えていました。
いつもなら勝っても何かアラを探して「自分たちはまだまだだ」と決して奢ることをしない人でしたが、その言動が今年はどうもゆるくなっているような気がします。ジョージア大戦で驚かせてくれるかも知れませんが、ひょっとしたら今年のアラバマ大はここが限界と感じているのかも・・・。
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