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BLMとカレッジフットボール

BLMとカレッジフットボール

ミネソタ州ミネアポリス市で起きた白人警官による無防備な黒人男性への暴行致死事件は全米中に人種差別廃絶と社会的不公正の是正を訴える抗議運動を引き起こしました。事件発生から10日が経ちましたが、その抗議行動の波が止む気配はなく、人種を越えてアメリカに巣食う闇を今度こそ取り払おうと多くの人たちが立ち上がっています。

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そしてその波はカレッジフットボール界にも様々な形で押し寄せてきています。6月8日から自主トレーニングを解禁とする大学が数多くある中、多くの選手たちが自宅からキャンパスへと戻ってきていますが、その過程でたくさんの選手たち、特に黒人選手たちが自分たちの思いやこれまで話したくても話せなかった悩みや怒りなどを公表し始めています。

ユタ大の場合

例えばユタ大のディフェンシブコーディネーターであるモーガン・スカリー(Morgan Scalley)氏が2013年にショートメールで人種差別のフレーズを使ったことが今になってSNS上に出現。これを受けてスカリー氏は謹慎処分を受けることになりました。


クレムソン大の場合

ダニー・ピアーマン

今月初頭クレムソン大の卒業生であるD.J.グリーンリー(D.J. Greenlee)がかつてアシスタントコーチのダニー・ピアーマン(Danny Pearman)氏から黒人を卑下する言葉とされる「Nワード」呼ばわりされたと告白。ピアーマン氏は人種差別目的でこの言葉を使ったのではないとしたものの、その言葉自体を口にしたことは決して許されるものではないと謝罪しました。

ダボ・スウィニー

またクレムソン大のヘッドコーチ、ダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督に火の粉が飛ぶ出来事も起きました。

黒人への差別反対運動のスローガンでもある「Black Lives MatterBLM)」。これは黒人の命にも意義がある、とか黒人の命も大事だ、という意味合いの言葉であり、この言葉には大変な思いが詰まっています。そんな中、SNS上でこんな写真が出回ったのです。

スウィニー監督のシャツには「Football Matters」と書いてありますが、意味合い的には「アメフトが大事だ」と訳せると思います。しかしこの時期、「Black Lives Matter」という言葉のもとに人々が変革を目指している中で「Football Matters」という言葉はそういった抗議者たちの神経を逆撫でしかねないのです。

オリジナルのツイートは既に削除されているようですが、タイムスタンプをみると6月6日ということである意味タイムリーな写真。もっともこの写真自体がいつ取られたのかは分かりませんが、この時期にこの写真が出回ってしまったというのが問題なわけです。たとえスウィニー監督に悪気がなかったとしても。

そんな感じで当然「恥知らず」とか「空気読めないのか」などという批判がスウィニー監督に向けて湧き上がったのですが、チームのスターQBトレヴァー・ローレンス(Trevor Lawrence)は「監督はずっと前からこのシャツをミーティングで着ていた。彼は決してBlack Lives Matterを揶揄しているわけではありません。」とコーチを援護しました。

実際「Football Matters」という言葉をスウィニー監督は2017年にスピーチで使用していましたし、また同じ言葉がNFLがフットボールを普及させるためのスローガンとして以前から使ってきましたから、この言葉が「BLM」と比べられてしまうのはちょっと酷ではありますが、時期が時期、そして事が事なため敏感な世間的には受け入れられなかったようです。

ちなみにスウィニー監督は直後にBLM運動を全面的に協力するという動画を発表。またNFLは「Football Matters」というスローガンを今後使用するかどうか検討するとコメントしています。

デアンドレ・ホプキンス

さらにまたクレムソン大がらみですが、2010年から2012年まで同大でプレーしたデアンドレ・ホプキンス(DeAndre Hopkins、現アリゾナカーディナルズ)が、NFLの試合時の自己紹介で敢えて自身がクレムソン大出身であることを口にしてこなかった理由を告白。

それはクレムソン大がかつて黒人奴隷を推奨し1825年から1832年までアメリカ副大統領を務めたジョン・C・カルフーン(John C. Calhoun)との繋がりを未だに持っていることに抗議するためだったのだとか。

歴史を振り返れば奴隷としてアフリカから黒人を連れてきたことがアメリカの人種差別の歴史の発端となったわけですが、それを推奨したカルフーン氏の名前が正々堂々と大学のカリキュラムの名前として使われていることに当然不快感を持つ人はいるはずです。

実はクレムソン大のキャンパスは同じサウスカロライナ州出身のカルフーン氏が経営していた奴隷農場の跡地に建てられたということ、そして何より大学の創始者がそのカルフーン氏の義理の息子ということもあり、大学と奴隷を推奨したカルフーン一家の深いつながりが見えてきますが、ホプキンスだけでなく在学生たちもこのBLM運動に乗じてカルフーン氏との繋がりを断ち切りたいと立ち上がろうとしています。

アイオワ大の場合

そしてカレッジフットボール界をここ数日最も騒がせているのがアイオワ大フットボール部のストレングスコーチに関する話です。

世間的に多くの人たちが「人種差別はもうたくさんだ」という叫ぶ中、2015年から2017年までアイオワ大で活躍し現在シカゴベアーズに在籍するOGジェームス・ダニエルズ(James Daniels)が過去にアイオワ大で人種差別的な扱いを受けたとSNSで公表したのです。

すると次々にダニエルズに同調するOBが続出。例えば現テネシータイタンズのSアマニ・フッカー(Amani Hooker)は、「チームの施設内にいる時は黒人選手にとって居心地が悪かった。」と述べ、それは「自分たちの生い立ちが否定されているように感じたからだ」と理由づけています。

またかつてCBとしてチームでプレーしたマーセル・ジョリー(Marcel Joly)は「私が施設内でタンクトップを着てタトゥーが見えているといつもコーチに呼び出されて『タトゥーが見えすぎている。これはアイオワ大の風紀にそぐわない』と言われたものです。」とSNS上で回想しています。

そしてカレッジフットボール界にてBLM絡みで今最も批判を浴びているのが同大ストレングスコーチのクリス・ドイル(Chris Doyle)氏です。ことの始まりはLBテランス・プライヤー(Terrance Plyor)とフェイス・イカキティ(Faith Ekakitie)はドイル氏から直接人種差別の言葉を投げかけられたとSNSで暴露したことです。

これを受けてチームはドイル氏を謹慎処分に処し内部調査を始めたということですが、個人的にバッシングを食らったドイル氏は耐えきれずに沈黙を破ってSNS上で今回の件に関してコメントを発表したのですが・・・。

要約すると、自分は完璧な人間ではないが決してレイシストではない。これまで一度も人種差別発言を行ったことは決して無い、と断言したのです。

しかしこれは逆を返せばこれまでの経験を公表したダニエルズやフッカーら黒人選手の主張は全てウソだと言っているようなもの。さらに火に油を注いでしまったのです。

「沈黙を守っていろと言われたが、もう我慢出来ない」と自分に全て非があると言われ続けることに堪忍袋の尾が切れたような出だしで始まったこの声明でしたが、むしろこんなコメントを出すぐらいなら沈黙を守っていたほうが良かったと言わざるを得ません。

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私もここ数日間、現在起こっている抗議行動を現地で追いたくさんのことを考えさせられそして多くの知らなかったことを学びました。そして思ったことは昔から比べると人種差別は減ったとは思いますが、奥底に根強くこびりついている固定観念はまだまだ存在するということと、白人の中で認識している人種差別と黒人などの非白人が感じる人種差別にはまだまだ隔たりがあるということです。

おそらくアイオワ大のドイル氏に人種差別をしている認識は無いのでしょうし、いわゆる目に余る差別主義者では無いのかも知れません。しかし自分の発言が自分が意図していなかったとしてもどれだけ相手を傷つけているかを理解できないという無自覚かつ無知識さが浮き彫りとなったということであり、同じような感覚をもつ人間はおそらくこの世にまだまだたくさんいることだと思います。

大学というのは面白いもので、教授やコーチなどの指導者というのは「人生を若者よりも多く経験してきた大人」とされ、そういった大人が時代の流れに敏感な若いこれからの学生たちを導いていくという構図。そして時として教える立場の大人たちの固定観念や思想が時代についていけずに下の世代の人間とのギャップが開いていく・・・というそんな場所であったりします。

アメリカの中部で典型的な白人が大半を占める(ウィキペディアに依ると88%の州民が白人)アイオワ州で起きたということも間接的に関係しているのかも知れませんが、「自分は人種差別主義者でもないし、意図して差別的言語を用いたことは一度もない」と断言できてしまうドイル氏のような潜在的無知を今一度正すことがいま試されているのではないかと思う今日このごろです。

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