暦の上ではカレッジフットボールのレギュラーシーズンは後半戦に突入。今週末から待ちに待ったBig Tenカンファレンスが開幕を迎え、新型コロナウイルスと背中合わせなシーズンの大いなるスパイスになってくれるはずです。
それでは今回も第8週目に発表されたAPランキングトップ25の面々を見ていきたいと思います。
トップ10
今週も1位を獲得したのはクレムソン大。先週はジョージア工科大相手に脅威の73対7というスコアを叩き出し相手を完膚無きまでに叩きのめしました。ジョージア工科大が格下とは言えクレムソン大のオフェンス力は天下一品。もちろんディフェンスも今の所これと言った穴を見つけることは出来ませんから、彼らが未だに今季最強の称号を保持していることに一点の矛盾も感じられません。
2位のアラバマ大も先週から据え置きの順位。先週は当時3位のジョージア大との大一番があり、これを爆発力バツグンのオフェンスパワーで乗り切りました。当然QBトレヴァー・ローレンス(Trevor Lawrence)擁するクレムソン大のオフェンスも素晴らしいものを持っていますが、アラバマ大のオフェンスもなかなか非の打ち所がないユニット。QBマック・ジョーンズ(Mac Jones)、RBナジー・ハリス(Najee Harris)、WRトリオ(デヴォンタ・スミス/DeVonta Smith、ジェイレン・ワドル/Jaylen Waddle、ジョン・メッチー/John Metchie III)とスキルポジションはクレムソン大を凌駕すると言えます。
今週3位は先週の4位から1つ順位を上げた名門ノートルダム大。先週は今季まだ1勝しかしていないルイビル大と対戦し大苦戦。スコアも12対7ということでクレムソン大やアラバマ大と比べるとたいへん物足りない感じは否めません。
4位には先週3位で上記のようにアラバマ大に敗れたジョージア大。負けたのに1つしか順位を下げていませんが、彼らのディフェンス力は全米トップクラスだったことは言うまでもありません。これにキラーオフェンスが付いてくればクレムソン大とアラバマ大のニ大勢力に割って入ることが出来るでしょう。が、逆に言うとそれが無いために彼らはもう一皮剥くことが出来ないのです。
5位にはオハイオ州立大。いよいよ今週末彼らが所属するBig Tenカンファレンスが開幕。プレシーズンには2位、そしてBig Ten開幕が発表されてから彼らがランキングに復帰してからも6位とう評価を受け続けてきました。多いところで5試合を既に消化しているチームがある中、机上の評価とも言えるこの5位という位置が果たして合致しているのかどうか、今週末彼らのお手並み拝見といきましょう。
6位にはBig 12カンファレンスのオクラホマ州立大がきました。先週対戦相手の予定だったベイラー大がコロナ感染のために部活動を一時休止したため試合が無かったオクラホマ州立大。オクラホマ大やテキサス大といった常連がランク外に甘んじている中、Big 12カンファレンスの威厳をかけて彼らは負けられない日々が続いていきます。
7位には先週の11位から4つもランキングを上げてきたテキサスA&M大。開幕後最高10位まで上がっていた彼らは2戦目のアラバマ大戦で完敗して順位を21位まで下げてしまいました。しかし翌週のフロリダ大(当時4位)から勝利を奪う番狂わせを見せると先週もミシシッピ州立大に勝って2連勝。アラバマ大戦前よりも更に上位にランクされ、試合をこなすごとに調子が上がっているという状況です。
8位にはオハイオ州立大と同じく今秋開幕戦を迎えるペンシルバニア州立大。開幕前には全米ナンバーワンLBの呼び声が高かったマイカ・パーソンズ(Picha Parsons)がオプトアウトし、今週になって先発RBジャーニー・ブラウン(Journey Brown)が健康上の理由で今季参戦できないかもしれないという報道もあり、彼らのチーム力はいまいち見えてきません。それもこれも今週末にはある程度明らかになるでしょう。
9位には「グループオブ5」カンファレンス群出身のシンシナティ大。先週は対戦相手のタルサ大でコロナ感染が起きて試合が延期となり思わぬバイウィークを頂きましたが、引き続き「グループオブ5」の期待の星としてトップ10位以内にとどまりました。今週末には16位のサザンメソディスト大との試合が予定されており、「グループオブ5」同士の対戦とは言え非常に注目が集まりそうです。
そして10位には先週と変わらずフロリダ大。彼らもまたコロナの影響で先週試合がありませんでした。指揮官であるダン・マレン(Dan Mullen)監督も検査で陽性と判明。今週末も試合がなく、来週の土曜日までチームの健康状態が何処まで回復しているか気になるところです。
11位〜15位
トップ10のちょうど外側に位置する11位にはマイアミ大。2週間前にクレムソン大との一騎打ちで散った彼らは先週ピッツバーグ大でその敗戦を引きずることなく白星を奪取。再びトップ10入りを狙います。
12位に躍り出たのは無所属/独立校のブリガムヤング大。先週もヒューストン大に快勝して5連勝目を挙げ遂にトップ10入り目前まで迫りました。彼らの対戦相手を見ると後にも先にも手強い相手が見当たらず、この調子なら全勝シーズンも夢ではありません。となれば1984年に全米チャンピオンに輝いた時以来の快挙ということになります。いつの時でもアンダードッグには肩入れしたくなりますから、ぜひとも彼らにはこのまま無敗街道を突き進んでもらいたいものです。
13位のオレゴン大は開幕まであともう2週間。他のカンファレンスがシーズンの第3コーナーを曲がり切った時に開幕というなんとも不思議な現象ですが、これも新型コロナの影響ならではの珍事(?)。ここまでモチベーションを維持しながらトレーニングする選手ならびに彼らをこーちしなければならないコーチ陣やサポートスタッフには脱帽です。
14位にはノースカロライナ大とウィスコンシン大が同一ポイントで並びました。ノースカロライナ大は先週5位まで上昇しながらフロリダ州立大に惜敗して遂に今季初黒星。順位を9つも落としてしまいました。Big Tenカンファレンス所属のウィスコンシン大は今週金曜日に他のBig Tenメンバーに先駆けて開幕(vsイリノイ大)。彼らもここまでほぼ話題に出てくることがありませでしたから、今週その真価が試されることになります。
16位以下
16位以下では先週のチームが軒並み1〜4つずつ順位を上げました。その中でもバージニア工科大は先週23位から19位へ上昇。シーズン後半にマイアミ大とクレムソン大との対決が待っており、このチームが終盤に向けどれだけギアを上げてくるのか個人的には興味があります。
また20位に位置するカンザス州立大ですが、彼らは開幕戦で「グループオブ5」のアーカンソー州立大にまさかの番狂わせを喰らい、そのプレーの内容からもかなり今季の動向を不安視する声も聞かれましたが、その後は3連勝としてトップ25位に入ってきました。かつて「生き仏」ビル・シュナイダー(Bill Snyder)監督に率いられたチームですが、質実剛健なカンザス州立大を贔屓にしていた身としては彼らがシュナイダー監督が去った後でもこうして全米の檜舞台に立っているのは嬉しく感じます。
また今週新たに圏外からランクインしたチームが3つあります。22位のマーシャル大はここまで4勝0敗。1度だけ今季ランクインしたことがありましたが、Big TenカンファレンスとPac-12カンファレンスが参戦することが決まって彼らがランキングに復活するとその余波で圏外へ追い出されてしまいました。しかしその後も勝ち続けて再びランキングに帰ってきました。
マーシャル大といえばかつて1970年にチームを乗せた飛行機が墜落して搭乗していた全員が帰らなぬ人となった事件をモチーフとしたマーシャルの奇跡(We Are Marshall)という映画を思い出しますが、今年はその事故からちょうど50年目。その節目の年に彼らがこのように快進撃を続けていることは偶然ではないような気がします。
参考ページアメフトルールの知識不要!おすすめカレッジフットボール映画10選
2つ目の新顔はノースカロライナ州立大。ACC(アトランティックコーストカンファレンス)所属の彼らは2戦目のバージニア工科大戦にて敗れたもののここまで4勝を挙げて今季初トップ25入り。今週末は14位のノースカロライナ大、バイウィークを挟んでその次の試合では11位のマイアミ大との試合が控えており厳しいスケジュールではありますが、もしこの2連戦を白星で乗り越えられれば彼らの順位を否応なしに飛び跳ねることになるでしょう。
そして最後に25位に滑り込んできたのがコースタルカロライナ大。2017年からFBS(フットボールボウルサブディビジョン)に参入してきた彼らにとって今回が創部初となるランクイン。創部事態が2003年と大変若いプログラムですが、先週当時21位のルイジアナ大ラフィエット校を倒して開幕後4連勝とし遂にチーム初の偉業を成し遂げたのです。
彼らが所属するのはサンベルトカンファレンスですが、今年はこのコースタルカロライナ大の他に前出のルイジアナ大、さらにアパラチアン州立大がランクインを経験しており、「ファンベルト」のあだ名のある彼らにスポットライトが当たるのは非常にいい傾向であると思います。
圏外脱落チーム
その一方で先週のランキングトップ25から圏外へ脱落したチームが3つあります。
まず1チーム目はアーバン大。彼らは先週今季2敗目となる黒星をサウスカロライナ大から喰らい15位から一気にランク外へ急降下。チーム的に見てもトップ15位以内に入るようなパンチ力を持ち合わせておらず、これは当然の結果と言えるのかもしれません。
またアーバン大と同じSEC所属のテネシー大も先週18位から圏外へ蹴落とされました。先週はケンタッキー大になすすべなく敗退。開幕前から今年こそは古豪復活かという大きな期待がかけられましたが、シーズンを追うごとに先シーズンからの成長が感じられないという出来のパフォーマンスの連続。熱狂的なテネシー大ファンのため息が聞こえてきそうです。
そして最後は前述のとおりコースタルカロライナ大にアップセットを食らったルイジアナ大ラフィエット校。これまでランキングからは程遠いチームだった彼らにとってこの前半戦の活躍はカレッジフットボール界でもポジティブに捉えられてきましたが遂に息切れ。サンベルトカンファレンスのドリームチームはコースタルカロライナ大にバトンが渡された形になりました。
総評
第7週目を終えた時点で現在のカレッジフットボール界の勢力図というのが大分明確となってきました。
簡単に言えばクレムソン大とアラバマ大の二大勢力とそれ以外という構図です。
「また今年もこの2チームか」と思われる方も多いかもしれませんが、やはりこの2チームの力はたと比べると突出しています。そしてその根底にあるのが優秀なリクルーティングにあると再確認させられます。
彼らはここまでCFP(カレッジフットボールプレーオフ)にて4度対戦してきており、そこからもおわかりいただけるように毎年トップレベルのチームを世に送り出しているということになります。それは同時に毎年多くの人材がNFLに流れていくことを意味しており、毎年誰かが前年度のスター選手の抜けた穴を埋めなければならないという状況が続いているのです。
にもかかわらず戦力を落とさずに常にトップレベルのチームを輩出出来ているのはひとえにタレント豊富な高校生リクルートたちを勧誘することに長けた「話術」「眼力」「資金力」がこの2チームは他のチームよりも秀でているのです。
昨年のルイジアナ州立大がいい例ですが、彼らはこれまでに見たことのないような、攻守において高いレベルの選手が揃い前例のないような最強のチームでナショナルタイトルをかっさらいました。
しかしそのチームから14人の先発選手がNFLへと旅立ったことでチーム力は激減。当然そのような多数の選手の穴を埋めるのは楽ではありませんが、ルイジアナ州立大ではそれが出来る選手の頭数が揃っていないのです。
それを考えるとクレムソン大、アラバマ大が毎年戦えるチームを育て上げていることは物凄いことです。特にアラバマ大は昨年のチームからQBトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa、現マイアミドルフィンズ)、WRジェリー・ジュディ(Jerry Jeudy、現デンバーブロンコス)、WRヘンリー・ラグス(Henry Ruggs III、現ラスベガスレイダース)らを含む5人の選手が今年のドラフトで1巡目に選択されていきましたが、にもかかわらず今年の戦力は衰えを知らないばかりか数字上では昨年までのチームを上回る勢いなのです。
先にも述べたとおりジョージア大もこの2チームに迫る力を持っています。彼らもまたリクルーティングで成功したチームですが、クレムソン大やアラバマ大のような爆発力のあるオフェンスを保持してたならば今季は確実に三強時代と言われることになっていたでしょう。
それ以外は今挙げたチームと比べると物足りなさを感じずに入られません。上位2チームがCFPに進出する可能性が高いとするならば、プレーオフに出場できる残りの2席を誰が争うのかというところに今後は焦点が移っていくことと思われます。だからこそ今週末登場するオハイオ州立大やペンシルバニア州立大の真の実力が大変気になってくるのです。
===
いよいよ今週からBig Tenカンファレンスとマウンテンウエストカンファレンスがカレッジフットボール界に殴り込み。ランクされているチームもそうでないチームもそれぞれのチームが実戦不足というハンデをどのように乗り越えていくのか見ものですね。