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元USCブッシュ氏のハイズマントロフィーが返還へ

元USCブッシュ氏のハイズマントロフィーが返還へ

かつて2003年から2005年までRBとしてサザンカリフォルニア大に所属し、2005年のハイズマントロフィーを獲得するもそのトロフィーを2010年に自主的に手放していたレジー・ブッシュ(Reggie Bush)氏。以来彼の元にトロフィーは戻ってきませんでしたが、この度ついにこの栄誉ある銅像が同氏へ返還されることになりました。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

USCで一時代を築いたブッシュ氏

ブッシュ氏と言えば2000年代に栄華を誇ったUSCの代表的な選手。2003年と2004年にチームはピート・キャロル(Pete Carroll)元監督の指揮下で全米二連覇を達成。この時のチームにはQBにマット・ライナート(Matt Leinart)氏、WRにマイク・ウィリアムス(Mike Williams)氏やドゥウェイン・ジャレット(Dwayne Jarrett)氏、RBにレンデイル・ホワイト(LenDale White)氏、OLにサム・ベイカー(Sam Baker)氏、DLにマイク・パターソン(Mike Patterson)氏、ローレンス・ジャクソン(Lawrence Jackson)氏、ショーン・コディ(Shawn Cody)氏、セドリック・エリス(Sedrick Ellis)氏、DBにエリック・ライト(Eric Wright)氏など、錚々たるメンバーが揃っていました。

その中でもさらに光り輝いていたのがブッシュ氏でした。彼のエレクトリックなランニングスタイルに魅了されたファンを多かったと思いますが、特に2005年度シーズンはランで1740ヤード(16TD)と大活躍してドーク・ウォーカー賞ウォルター・キャンプ賞AP年間最優秀選手賞などを総なめ。そしてその集大成とも言えるハイズマントロフィーをも手に入れたのでした。

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2006年のNFLドラフトでは1巡目総合2番目にてニューオーリンズセインツに入団。2009年度シーズンにはセインツの一員としてスーパーボウル優勝にも輝きましたが、プロの世界ではカレッジほどの大活躍をしたという印象はそこまでなく、セインツの後はマイアミドルフィンズデトロイトライオンズサンフランシスコ49ersバッファロービルズを渡り歩いて2016年度シーズン後に引退。現在はカレッジフットボール等のTV番組のキャストとして活動しています。


スキャンダル

そんなブッシュ氏でしたが、卒業した後2006年にスキャンダルが浮上。というのも在学中にブッシュ氏の家族が禁止されていた金品の受け取りをしていたとか、ブッシュ氏がスポーツエージェントから金銭を受け取っていたとかいう疑惑が起きたのでした。

その後の調査により2010年にNCAA(全米大学体育協会)はUSCに4年間のプロベーション(執行猶予・保護観察)下に置かれてしまい、さらにこの金品の受け取りが行われていた期間と同じだけの間にUSCが記録した勝利数(2004年の最後2試合と2005年の全勝利数12勝)およびPac-10(現在のPac-12)カンファレンスタイトルが剥奪されてしまいました。

さらに追加制裁としてNCAAはUSCに対し2010年と2011年のボウルゲーム出場禁止処置を下し、3年間でトータル30人分のスカラシップ(スポーツ奨学金)を削減。そしてUSCがブッシュ氏とコンタクトを取ることを禁ずるという非常に重い制裁を下したのでした。

トロフィーを自主返還

一方でブッシュ氏が獲得したハイズマントロフィーですが、ハイズマントロフィーを管理するハイズマントロフィートラストがブッシュ氏からトロフィーを取り上げるべきだという議論が湧き起こる中、ブッシュ氏自らトロフィーをトラストへ自主返還。トラスト側はこれを受理するも、2005年の受賞者の枠は空席とし、この時の次点選手だった元テキサス大QBのヴィンス・ヤング(Vince Young)氏を繰り上がり当選とするような処置は施しませんでした。

それから時はたち2020年、ブッシュ氏と袂を分かっていたUSCでしたが、この年にブッシュ氏と和解。同氏は10年の時を経てようやく母校のキャンパスに足を踏み入れることを許されたのでした。

すると当然世間はブッシュ氏にハイズマントロフィーを戻すべきだという論調になったのですが、USCと和解した後もハイズマントロフィートラストはブッシュ氏にトロフィーを返すことには否定的でした。

時代の変化

さらに時間が経ち2021年。この年カレッジスポーツ界ではNIL(Name/Image/Likeness)と呼ばれる、選手の肖像権などを使って金銭を手に入れることが許されるという、同界ではターニングポイントとなるような制度が解禁になります。このことでカレッジ選手でもとてつもない額の金銭を稼げるようになり、これは今後リクルーティングトランスファーに大いに影響を及ぼすようになります。

するとここでもブッシュ氏へのトロフィー返還要求の機運が高まります。ブッシュ氏が現役だった時に禁止されていたお金儲けが現在のカレッジスポーツ界では許されるようになったことで、ブッシュ氏に対しても情状酌量の余地があってもいいのではないか、という声が多くなったのです。

その声の中には2013年のハイズマントロフィー受賞者である、元テキサスA&M大QBのジョニー・マンゼル(Johnny Manziel)氏も含まれており、今年に入り彼は「もしレジーにトロフィーが戻らないならば、自分はハイズマントロフィー授賞式への出席をボイコットする」と明言していました。

トロフィーの返還

そんな中、4月24日未明、何の前触れもなくハイズマントロフィートラストはブッシュ氏のトロフィーを返還することを発表。実に14年ぶりにこのブロンズ像がブッシュ氏に返されることになったのです。

ハイズマントロフィートラストの声明は以下の通り(意訳)。

「我々はカレッジフットボール界での偉大なる偉業の証明でもあるハイズマントロフィーのファミリーにレジー・ブッシュを再び迎えることに感激しています。カレッジフットボール界は過去数年の間にその情勢が大きく変わってきました。学生アスリートが金銭を獲得することが許されるようになった近年、その中でレジーにトロフィーを返還する時期が来たのだという結論に至りました。」

実際のところ、ブッシュ氏はトロフィーを取り返すためにNCAAに対して裁判を起こすような動きも見せていましたが、トロフィーを返すかどうかの最終判断はハイズマントロフィートラストに委ねられていました。だからこそ今回の発表が大きなものだったのです。

今後の影響

ブッシュ氏の現役時代のUSCでの活躍を見れば、フットボール選手としてその歴史に名を残すような名選手であることは動かぬ事実であり、いずれはトロフィーは彼の元に戻ると思われていましたから、これは朗報だったと言えます。

このことで次に焦点となるのはおそらく2003年と2004年に剥奪されてしまった勝利数の復活です。ブッシュ氏の違反の影響でこの制裁が下ったわけですが、ハイズマントロフィートラストがブッシュ氏にトロフィーを返還したことが「免罪符」となる可能性はあり、そうなればNCAAにUSCの白星を返上しろという要求の声も上がるかもしれません。

もともとハイズマントロフィートラストはNCAAがブッシュ氏の大学時代の公式スタッツを元に戻さない限り、トロフィー返還はないと言っていました。しかし今回トラスト側はNCAAの決定を待たずにトロフィーをブッシュ氏に返したことになります。これはNCAAをある意味見限った行動とも取れ、すでにNCAAの統括力が低下している現状に追い打ちをかける格好となりかねません。

NCAAがUSCのレコードをどうするかにも注目が集まりそうです・・・。

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