今季のカレッジフットボールも第6週目を迎え、数字の上ではレギュラーシーズンの折り返し地点を迎えたことになります。地域で多少の差があるとはいえ季節はすっかり秋となり、試合がある土曜日の朝の涼し気な空気を肌で感じると「Football Weather」の到来を実感します。
新型コロナウイルスの影響で各カンファレンスで試合数が縮小されていますが、特にノンカンファレンスゲーム(交流戦)が削られてカンファレンスゲームに特化したスケジュールとなっているため、今年は早い段階からカンファレンス内の名勝負が目白押しとなっています。特に強豪ひしめくサウスイースタンカンファレンス(SEC)では毎週ランカー同士の対決が組まれておりまさにサバイバルレースそのものです。
「勝てば官軍」という訳ではありませんが、試合に勝ち進めたものだけが最強の名を手に入れることができるカレッジフットボール界。少ない試合数でより厳しいスケジュールを生き残ることを強いられる今季はその称号の意味がいつもより増して重く感じられることでしょう。
そんな今シーズンのカレッジフットボール、第6週目を迎えるにあたり発表された最新の全米ランキング上位25位の顔ぶれを見ていきたいと思います。
トップ10
開幕から1位を守るクレムソン大は先週もバージニア大相手に41対23と勝利して難なく首位を確保。ただバージニア大相手にディフェンス陣が417ヤードも許してしまったのはちょっと気になります。それでもスターQBトレヴァー・ローレンス(Trevor Lawrence)が329パスヤードに3TDとしっかりと数字を残して確実に相手を仕留めました。
2位のアラバマ大は13位のテキサスA&M大を迎えてのホーム開幕戦を52対24で粉砕。QBマック・ジョーンズ(Mac Jones)は全米13位相手に435パスヤードに4TDと安定したパフォーマンスを見せ、またタレント揃いのWR陣も健在で不安要素とされていたDB陣も成長の伸びしろがまだまだあるようで「さすが」と言わざるを得ません。
このアラバマ大のパフォーマンスを見た投票者の評価も少し変わったようで、先週彼らが獲得した1位票の数が3だったのに対し、最新のランキングでは8に上がっています。クレムソン大に投票していた3人とオハイオ州立大に投票していた2人の気が変わったわけですね。
しかも得票ポイントも前週比で21ポイント縮まっており、この2チームの首位争いも気になるところです。
3位には先週4位から順位を一つ上げてきたジョージア大。アーバン大(先週7位)と対戦した彼らは全米でもトップクラスのディフェンス力でアーバン大オフェンスを封じ込め、特にランディフェンスでは相手の1キャリー平均ヤードをたったの1.8ヤードに抑えた力は圧巻。また相手QBボ・ニックス(Bo Nix)には10ヤード以上のパス成功率を15%(18回中3回成功)にとどめ攻撃のチャンスを与えませんでした。
QBの経験不足が懸念されましたが、ステソン・ベネット(Stetson Bennett)は思いの外安定していましたし、もともとディフェンスが主軸のチームですからジョージア大の3位というは納得できる位置です。
4位には先週3位から1つ後退したフロリダ大。彼らは先週サウスカロライナ大戦ではハイズマントロフィー候補と目されるQBカイル・トラスク(Kyle Trask)と今季ナンバーワンTEと評価の高いカイル・ピッツ(Kyle Pitts)の活躍で38対24で勝利。ジョージア大に順位で抜かれたもののこの2チームの得票ポイント差が40ポイントということで大した差はなさそうです。
先週試合のなかったノートルダム大が先週と同じく5位に落ち着きました。これでトップ5チーム中3チームが先週に続きSEC所属チームということになり彼らの強さを物語っています。
6位にはまだ開幕していないBig Tenカンファレンスのオハイオ州立大。彼らの登場まではあと2週間待たなければなりませんが、正直この時点で開幕していないチームらをランキングに入れるのはいかがなものかと思ってしまいます。プレシーズンならまだしも他のチームは多いところですでに4試合もこなしており、彼らが開幕する頃には予定の半分の試合を終えているチームだって出てくるのですから。
7位には今季絶好調のマイアミ大。今秋いよいよクレムソン大と直接対決。彼らの所属するアトランティックコーストカンファレンス(ACC)はここ5年間クレムソン大が連覇し続けており、彼らに立ち向かえるチームは皆無でしたが、いよいよその牙城をマイアミ大が崩せるのかに注目が集まります。
先週12位から4つも順位を上げて8位まで上昇し遂にトップ10入を果たしたのがノースカロライナ大。ただ彼らは先週ボストンカレッジ相手に26対22と苦戦。それを受けて順位が4つも上がったのは驚きです。彼らの真の実力は今週末のバージニア工科大戦でより明らかになるかもしれません。
9位にはオハイオ州立大と同じくまだ開幕していないペンシルバニア州立大。そして10位にはBig 12カンファレンスのオクラホマ州立大が食い込んできました。同カンファレンスのビッグ2であるオクラホマ大とテキサス大が失速する中、遂にオクラホマ州立大がリーグの主導権を握るチャンスが巡ってきたわけです。果たして彼らはこのまま最後まで突っ走ることが出来るでしょうか?
11位〜15位
今秋11位には「グループオブ5」勢からシンシナティ大が来ました。先週11位のセントラフルロリダ大がまさかの敗戦を食らったことで「グループオブ5」の最高位チームの肩書はシンシナティ大に譲られることに。次戦(来週)はそのセントラルフロリダ大に土をつけたタルサ大と対戦。シンシナティ大もセントラルフロリダ大の二の舞を演じなければよいのですが。
12位にはBig Tenカンファレンスと同じくまだ開幕していないPac-12カンファレンスから唯一のランクインを果たしたオレゴン大。彼らはBig Tenカンファレンスよりさらに2週間遅い11月7日開幕。彼らの勇姿を見るまであと1ヶ月も待たなければなりません・・・。
13位は先週ジョージア大に敗れて7位から転落してきたアーバン大。ジョージア大が強敵だったとはいえ、オフェンス陣が何もさせてもらえなかった割には13位に留まれたのは多少の驚きです。ただ今後予定されているSECの対戦相手を考えると、その結果いかんで彼らが再浮上する可能性は十分ありそうです。
14位には先週21位から7つも順位を上げてきたテネシー大。ここ最近では最高位とも言える順位まで上昇してきましたが、今週末に予定されているジョージア大とのSEC西地区ライバリーに競り勝つことができれば一気にトップ10入りしてくることは間違いありません。果たして古豪完全復活となるでしょうか?
15位に来たのはテネシー大と同じく先週から7つランクを上げてきた無所属(独立校)のブリガムヤング大です。これまで3試合をこなした彼らの平均得点数が49点、平均失点数が8点、さらに1試合の平均獲得ヤードスは全米トップとなる585ヤード。対戦相手が中堅以下チームばかりとはいえ、彼らのこの攻撃力を見ると80年代にナショナルタイトルをとった頃のあの強いブリガムヤング大を彷彿とさせます。スケジュール的にもこのまま無敗でシーズンを終えることは大いに可能ですから、彼らがどこまでランキングを上げることが出来るのかに期待がかかります。
16位以下
16位以下で注目したいのはまず圏外からいきなり18位に飛び込んできたサザンメソディスト大。先週彼らは25位だったメンフィス大に競り勝って今季4勝目一番乗りを果たしましたが、昨年10勝して古豪復活の狼煙を上げたその勢いが衰えていないところをみると一発屋ではなかったと見ていいかと思います。特に元テキサス大QBシェーン・ビューシェル(Shane Beuchele)と今季のカレッジフットボール界で1、2の俊足を誇るWRレジー・ロバーソン(Reggie Roberson)のコンボは見ものです。
19位には同じくランク外からバージニア工科大がランクイン。名将フランク・ビーマー(Frank Beamer)氏が引退して以来影を潜めてきた彼らですが、今週のノースカロライダ大戦で3勝目を上げることができればさらにランクは上昇していくことでしょう。
21位には先週13位でアラバマ大になすすべもなく敗れたテキサスA&M大。大一番に勝てない彼らの弱さは今年も顕著であり、契約金総額7500万ドル(1ドル100円計算で約75億円)を頂いているジンボ・フィッシャー(Jimbo Fisher)監督への風当たりはますます厳しくなっていきます。
22位には先週9位から順位を13つも落としたテキサス大。テキサスクリスチャン大に惜敗した名門ですが、2年前に復活の雄叫びを上げた割にはその後大した結果をの残せていないところを見ると、年収675万ドル(約6億7500万円)と年収ランキングでは7位を誇るトム・ハーマン(Tom Herman)監督にもフィッシャー監督と同じような批判の目が向けられてしまいそうです。
今週23位にランクされてトップ25位以内に復活してきたのは「グループオブ5」勢の一員であるサンベルトカンファレンスからルイジアナ大(ラフィエット校)。今季序盤のシンデレラストーリーとなる驚きの3連勝を果たした彼らはBig TenとPac-12カンファレンスがランキングに復活したことで一時は圏外に押し出されていましたが、先週8つものランクチームが敗戦したことで再びトップ25に戻ってきました。
24位には開幕戦でそのルイジアナ大に敗れてランク外に転げ落ちるも先週オクラホマ大から金星を奪ったアイオワ州立大。ルイジアナ大に敗れた際には最大のオーバーレイテッド(過大評価)チームと蔑まされましたが、オクラホマ大に勝ったことで再評価を受けたことになります。このアイオワ州立大こそここ最近毎年どこかで番狂わせを起こしてきたダークホース的チームです。
一方先週敗れたことでランキングから脱落してしまったチームが5つもあります。
一番振り幅が大きかったのが先週11位だったセントラルフロリダ大。彼らはタルサ大に敗れたことで一気にランキングから姿を消してしまいました。ただ流石に負けたとはいえ11位だったチームを底まで落とすのはちょっと可哀想だと思ってしまいます・・・。
また上記に紹介したようにアイオワ州立大に敗れた先週18位のオクラホマ大もランキングから脱落。彼らが最後にランク外に落ちたのが2016年のことですから実に4年ぶりの汚点ということになります。またアイオワ州立大にアウェーで敗れたのは1960年以来のこと。これで連続ランクイン記録が64週で途絶え、すでに1勝2敗となった彼らにとってはリーグ6連覇に赤信号が灯ったと言えそうです。
先々週にディフェンディングチャンピオンであるルイジアナ州立大から金星を獲得して先週16位にいきなり飛び込んできたミシシッピ州立大はアーカンソー大に敗れて再びランク外へ転落。新監督マイク・リーチ(Mike Leach)監督の織りなす「エアーレイド」オフェンスで旋風を巻き起こすかと期待された最中の敗北には肩透かしを食らってしまいました。
24位のピッツバーグ大と25位のメンフィス大もそれぞれ土をつけられてトップ25ランキングに別れを告げました。
これでトップ25チームの所属カンファレンスの内訳は以下のとおりです。
ACC:5チーム
Big 12:3チーム
Big Ten:5チーム
Pac-12:1チーム
その他:4チーム
相変わらずSECの強さが光りますが、ここ最近はクレムソン大の一辺倒だったACCから5チームもランクインを果たしているのは大きな変化と言えます。またBig 12はオクラホマ大やテキサス大の降下にも見られるように少々苦戦中。
そして開幕していないBig Tenからはなんと5チームがトップ25に食い込んでいます。Pac-12も加えれば6チームとなり、もし開幕していないチームをランクしなかったとしたら、それ以外のチームに最大6つの椅子が用意されていたと考えると、すでに開幕して最前線でプレーしているチームたちにスポットライトを当ててあげてもいいんじゃないかと思ってしまいます。
第6週目にはランカー同士の試合が4つ組まれています。
テネシー大(14位)@ジョージア大(3位)
フロリダ大(4位)@テキサスA&M大(21位)
バージニア工科大(19位)@ノースカロライナ大(8位)
つまり最低4つのランカーに必然的に土がつくことになり、来週のランキングにも何かの動きが見られることになります。果たして今週どのチームが生き残るのでしょうか?