僅差のタフなゲームで勝てないミシガン大
勝負の世界に「たられば」は禁物です。でもそれを語りたがるのが我々カレッジフットボールですよね。昨シーズン、「もしも・・・だったら」というシナリオを一番想像させたのは他のどのチームでもない、ミシガン大だったのではないでしょうか。
昨年度を締めくくるオレンジボウルではフロリダ州立大に33対32という超僅差で敗れたミシガン大はこれで最終4試合で3敗を喫してしまったことになります。
11月12日 対アイオワ大 13対14
11月26日 対オハイオ州立大 27対30(2オーバータイム)
12月30日 対フロリダ州立大 32対33
ご覧のように負けた試合は全て3点差以内という僅差で敗れています。しかも一番負けてはいけないシーズン後半にです。
アイオワ大と対戦した当時、ミシガン大は全米2位にまで上り詰めており、人々の関心はその2週間後に行われるオハイオ州立大とのライバル対決に集まっていました。ここでの勝者がプレーオフに進出すると考えられていたからです。しかし彼らはアイオワ大のホームでまさかの敗退。2015年度はBig Tenカンファレンス西地区で優勝しプレーオフまで目前と迫ったアイオワ大でしたが、2016年度は大苦戦。そのアイオワ大に苦渋を飲まされたのですからこれは大どんでん返しと言わざるを得ませんでした。
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そしてオハイオ州立大戦。どんなにいいシーズンを送っても彼らに勝てなければ全てパーとまで言われるこの大事な一戦。昨年は手も足も出ずミシガン大は敗れ去りましたが、今年は僅差のゲームを繰り広げます。しかし「疑惑」のTD(QB J.T.バレットのTDランはゴールラインに届いていなかったのかもしれないという疑惑)もあり2度のオーバータイムの末敗戦。これで3週間前まではプレーオフ出場の可能性がすこぶる高かったのにもかかわらず、それを逃すどころかカンファレスタイトルゲーム出場も夢と終わったのでした。
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そしてオレンジボウル。試合はフロリダ州立大が17対3とリードするもミシガン大のディフェンスが徐々に試合の流れを手繰り寄せ、相手QBデオンドレ・フランソワ(Deondre Francois)のミス(INTパス)からディフェンスがTDを奪うなどし、ミシガン大が完全に主導権を握り返したと思われました。しかし試合残り時間36秒でフランソワの12ヤードTDパスが決まり土壇場で再びリードを奪い返され万事休すとなったのでした。
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高すぎるハードル?
ジム・ハーボー(Jim Harbaugh)監督2季目となった2016年度、リクルーティングなどで鳴らしチームを急激に強くしたハーボー監督でしたが、両シーズンとも10勝3敗と二桁勝利を飾るもカンファレンスタイトルゲーム出場を逃し、ライバル・オハイオ州立大にも連敗、当然プレーオフ出場もままならず(もちろんいきなりそれを求めるのも酷かと思いますが)、最初の2シーズンを終えての感想は、高い(もしくは高すぎる)期待に応えるにはあと少し・・・という感じでしょうか。
しかし落ち着いて考えてみれば、2014年度5勝7敗と負け越していたチームを引き継いだハーボー監督初年度に二桁勝利を挙げ、翌年には途中までではありましたがナショナルタイトルも狙えるチームに育て上げたことは誰にもできることではありません。
しかしいずれはタイトルを獲得しなければファンやサポーターたちの批判は逃れられなくなるのは目に見えています。この次のステップへの「壁」をぶち破るには肝心要の試合での僅差のゲームで勝ち星を奪えるかどうかにかかっていると言えるでしょう。
歴史は繰り返す
例えば、2015年度シーズンの開幕戦、ユタ大と対戦したミシガン大は第4Qの時点でユタ大を10対17で追いかけていました。しかしここから逆転を狙うぞというところでQBジェイク・ルドック(Jake Rudock)が痛恨のパスインターセプションを犯し反撃のチャンスを自ら潰します。
ユタ大との敗戦後5連勝を飾って迎えたミシガン州立大戦では第4Qを9点差リードで迎えますが、残りの3度の攻撃では何もできずに奪ったヤードは合計11ヤード。一方ミシガン州立大はジリジリと点差をつめ23対21のミシガン大リードで迎えた最終局面、試合時間残り1分47秒で攻撃権を得たミシガン大はボールを守りきりさえすれば勝つチャンスがあったところ、残り10秒というところでミシガン大がパントという場面、これをミシガン州立大がブロック。しかもブロックされたボールをすくい上げたミシガン州立大ディフェンダーが見事にミシガン大エンドゾーンまで激走を見せ、今世紀記憶に残る奇跡の大逆転劇をミシガン大はお膳立てしてしまったのです。
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2016年度のミシガン大は開幕から9連勝を飾りトップ5位以内をほぼその全期間で維持します。が、その道のりも決して容易いものではありませんでした。
第5戦目のウィスコンシン大戦ではDBジョーダン・ルイスの奇跡のワンハンドキャッチINTで14対7と追いすがるウィスコンシン大を辛くも振り切りました。
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また第8戦目のミシガン州立大戦では、第4Qに30対10と20点差をつけていたミシガン大でしたがここからミシガン州立大の猛攻を受けます。ミシガン大が追加点を奪えない傍、ミシガン州立大は2つTDを決め点差を1TD差に縮めてきます。この間ミシガン大が獲得できたファーストダウンはたったの1つ(3度の攻撃で)でした。結局ミシガン大がなんとか逃げ切れたのですが、僅差のゲームで対戦相手に絶対なる引導を渡せないミシガン大が徐々に露わになっていたのです。
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これらの2試合ではなんとか白星を飾ることができたミシガン大でしたが、それも前述の通りアイオワ大、オハイオ州立大、フロリダ州立大には通じませんでした。
僅差に弱いミシガン大
ハーボー監督指揮下に入りまだ2シーズンのミシガン大ですが、この間チームは1TD差以内のゲームでは3勝5敗と僅差のゲームに弱いところが明らかになりました。これだけ見てミシガン大の将来が不安である、とは言いませんが、これを現実に受け止めなければいけないファンやチーム関係者にとっては非常に歯がゆいところでもあります。
故に2016年度には二桁勝利を挙げたミシガン大ですが、このシーズンは10勝を挙げることができたということよりも、いかにして彼らが自らのチャンスを潰したか、という風に記憶されてしまうことになるのです。
もしアイオワ大戦での最後の攻撃でファーストダウンを取れていたら?
もしオハイオ州立大戦での相手RBカーティス・サミュエル(Curtis Samuel)のTDランを止められていたら?
もしオハイオ州立大QBのJ.T. バレット(J.T. Barrett)の勝ち越しTDランが後数インチゴールラインに届かなかったら?
もしフロリダ州立大戦でミシガン大スペシャルチームがフロリダ州立大最後の攻撃の起点となったキックリターンでリターナーを相手陣内奥深くに止めることができていたら?
・・・などと「たられば」で考えればミシガン大はひょっとしたらナショナルチャンピオンシップをかけてクレムソン大もしくはアラバマ大のいずれかと戦っていたかもしれないのです。
ミシガン大は長らくナショナルタイトルから遠ざかっています。最後にタイトルを取ったのが1997年ですからほぼ20年間全米優勝トロフィーをキャンパスに持ち帰ることができずにいるのです。それを考えればプレーオフにここまで肉薄したチームをたった2年で組み立て上げたハーボー監督の腕は疑う余地はありません。
それにここぞというところで僅差の試合をものにできるというのは実際相当難しいことですし、誰もがそのような状況で勝利を手繰り寄せるというわけではないのは確かです。
しかし結果は結果。ファイナルスコアで自分のスコアが相手のスコアよりも上回っていなければ元も子もありません。しかもミシガン大の場合、2016年度の負け方が全てファンの歯ぎしりが聞こえてくるほどにフラストレーションが溜まるものだったから尚更です。
「たられば」だけでミシガン大の2016年度シーズンを語るべきではありません。しかしもしハーボー監督が2017年シーズン以降、この壁を破りタイトルを取ることができるようになるためには、大勝負での僅差の試合で勝利を奪える「地力」「自信」「武運」が必要です。これが備われば本当に近い将来ミシガン大が1997年以来のナショナルチャンピオンに輝く日がやってくることでしょう。