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2024年度CFP準決勝戦レビュー【コットンボウル】

2024年度CFP準決勝戦レビュー【コットンボウル】

オレンジボウルに続き行われたCFP準決勝戦第2戦目、コットンボウル。第5シードのテキサス大と第8シードのオハイオ州立大のメガマッチはオレンジボウルのノートルダム大vsペンステートの試合同様、試合終盤まで勝負の行方がわからないという拮抗した試合展開になりましたが、結果的にはオハイオ州立大が28対14でテキサス大を下し、ナショナルチャンピオンシップゲーム行きを決めました。

今回はこの激戦となったオレンジボウルを振り返っていきます。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

前半

会場がテキサス州アーリントンにあるダラスカウボーイズの本拠地、AT&Tスタジアムだったこともあり地の利を生かして多くのテキサス大ファンが集まりました。そんな中始まったこの試合はテキサス大が先攻。これまで2試合で出だしから飛ばすオハイオ州立大に食らいつくには持てるチャンスを全て得点に結びつけたいところでした。

攻撃の主軸はやはりQBクウィン・ユワーズ(Quinn Ewers)。かつてオハイオ州立大に所属していたことがあり、古巣との対戦ということで様々な感情がうごめいていたとは思いますが、そんな中試合開始早々にWRマシュー・ゴールデン(Matthew Golden)にこの針に糸を通すかのようなパスを成功させて観衆の度肝を抜きます。

さらに攻めるテキサス大は相手陣内36ヤードで4thダウンを迎えますが、試合開始早々にいきなり4thダウンギャンブル。しかし残念ながらこれは失敗に終わり、無得点でオハイオ州立大に攻撃権を譲渡することになってしまいました。

オハイオ州立大のQBはベテランのウィル・ハワード(Will Howard)。彼のパスが同じくベテランのWRエメカ・イブカ(Emeka Egbuka)にサクサク決まり、またミシシッピ大からの転校生RBクウィンション・ジュドキンス(Quinshon Judkins)も足でヤードゲインに貢献。そして最後はそのジュドキンスの華麗な足捌きからの9ヤードTDランが決まってオハイオ州立大がまず先制点を挙げることに成功します。

さらに追加点を狙うオハイオ州立大はもう一人のRBトレヴィヨン・ヘンダーソン(TreVeyon Henderson)と投入。テキサス大レッドゾーン付近まで接近するプレーを見せますが、ここでヘンダーソンがテキサス大選手の顔をヘルメット越しにこづいてしまい、アンスポの反則を取られ15ヤードの罰退。せっかくの流れを引き寄せることができませんでした。

その後オハイオ州立大は攻めあぐみ、これまでのプレーオフの試合のようにスコアリングを続けて点差を広げることができません。またテキサス大ディフェンスの奮闘が目立ちましたが、一方でテキサス大もオハイオ州立大の鉄壁のディフェンスに阻まれます。

そして迎えた第2Q残り2分、なんとかハーフタイムまでに得点したかったテキサス大は途中秘蔵っ子であるQBアーチ・マニング(Arch Manning)と投入してファーストダウンを奪い、オハイオ州立大のエンドゾーンを目指します。そして残り1分を切ったところでついにユワーズからウィールルートから飛び出たRBジェイドン・ブルー(Jadon Blue)への18ヤードのTDパスが決まり、テキサス大はようやくオハイオ州立大に追いつきます。

なんとか同点としたテキサス大は後半から仕切り直すためにハーフタイムで作戦を練り勝負はここから・・・と誰もが思ったことでしょう。しかし残り時間30秒を切ったところで攻撃権を得たオハイオ州立大はハワードからのスクリーンパスを受け取ったRBヘンダーソンが味方OL陣の絶大なるリードブロックの助けを受けてそのまま75ヤードを走り切り、テキサス大が必死で追いついた直後にあっさりとまたリードを奪ったのです。

結局前半は14対7でオハイオ州立大がリードで終了。ただテキサス大ディフェンスの奮闘もあり予想されていたオハイオ州立大の勝ち逃げという展開にはならず、後半次第ではテキサス大にも十分に勝機があると思わせてくれる流れでした。

前半終了時のスタッツ


後半

オハイオ州立大は多くのスキルプレーヤーを擁するオフェンスで知られていますが、その最たる選手がWRジェレマイア・スミス(Jeremiah Smith)です。1年生ながらすでにNFL級のパフォーマンスを見せ続けるスミスがハワードのメインターゲット出ることは周知の事実。

当然テキサス大もその事は十分承知しており、この日はそのスミスをダブルでカバーしほぼ無力化してきました。そのせいで前半のスミスは1キャッチでたったの3ヤード。その分イブカやカーネル・テイト(Carnell Tate)がターゲットになっていましたが、ハワードとしてはなんとしてもプレーメーカーであるスミスにパスを繋げたいところでした。

しかし後半開始のドライブではその焦りから無理にスミスに投げたパスがデヴィッド・ベンダ(David Gbenda)にピックされてしまいます。

ただこのチャンスをテキサス大はものにできず結局パントを余儀なくされ、またオハイオ州立大もテキサス大ディフェンスを前に1つもファーストダウンを奪えずに攻撃権はテキサス大に移ります。自陣33ヤード地点からの攻撃となったテキサス大はユワーズの小気味よいショートパスを多用して少しずつ前進。

このドライブでは途中ユワーズがスクランブルしタックルを受けるもダウン寸前でボールをRBクゥイントレヴィオン・ワイズナー(Quintrevion Wisner)にピッチし、そのワイズナーが見事にファーストダウンを奪うというミラクルプレーを見せてくれました。

こうしてドライブを生かし続けたユワーズは、前半終了間際に決めたTDプレーとほぼ同様なウィールルートでフリーになったRBブルーに着実にパスをヒットさせて、そのブルーが最後の砦となったDBを軽々とかわしてエンドゾーンへ。スコアを14対14とします。

これまでの試合のような、スコアリングの嵐といかないオハイオ州立大。これは当然テキサス大ディフェンスの奮闘の賜物なのですが、試合は同点のままいよいよ運命の第4Qへ突入します。すでに行われた準決勝戦のもう1つの試合であるオレンジボウルも同点のまま終盤を迎え、この試合では最終的にはターンオーバーが試合を決することになりました。コットンボウルも同じようにどちらかミスを犯した方が負ける、そんな雰囲気を醸し出していました。

そこで迎えた第4Qのオハイオ州立大の攻撃は7分45秒をかけた計13プレーの決死のドライブを繰り出します。一発目に豪快にテキサス大DBにチャレンジして行ったハワードからイブカへのディープパスは失敗に終わりますが、ディフェンシブパスインターフェアレンスの反則を引き出し15ヤード前進。さらにそこからTEジー・スコット・Jr(Gee Scott Jr.)への2つのショートヤードパスののちにWRテイトへの18ヤードパスを成功させて3rdダウンコンバージョン成功。

さらに攻め込みテキサス大陣内で迎えた4thダウンの場面では意表を付くハワードのQBパワーランで4thダウンコンバージョンを成功させ18ヤードを稼ぐナイスプレー。もしハワードが足をくじいいて転ばなければさらにヤードを伸ばせていた事でしょう。

こうして相手レッドゾーンへ飛び込んだオハイオ州立大は最後RBジュドキンスのランTDを決めて残り時間約7分で21対14と再びリードを奪います。

残された時間、そしてオハイオ州立大の超強力なディフェンスのことを考えればテキサス大は次のドライブで得点できなければ勝機は薄くなる事は容易に想像できました。その運命のドライブ、ユワーズがパスでまず見せます。

TEガナー・ヘルム(Gunnar Helm)へ2つパスを成功させ(そのうち2つ目はヘルムのアンスポの反則で15ヤード罰退となりますが)、さらにこの日前半に足首への怪我の影響で負傷退場していたWRゴールデンへのパスが通り、一気にオハイオ州立大陣内13ヤードまで押し込みます。

さらに6ヤードラインで3rdダウンを迎えたテキサス大、ユワーズがエンドゾーン奥に走り込んだライアン・ウィンゴ(Ryan Wingo)にパスを放つも失敗。しかしこのプレーでディフェンシブパスインターフェアレンスがコールされ、ボールは2ヤードラインに。さらに直後のプレーでもユワーズからゴールデンへのパスプレーでインターフェアレンスの反則が取られ、残り時間4分という場面でテキサス大は1ヤードラインで1stアンドゴールというこれ以上ない絶好のチャンスを掴みます。

ゴールラインスタンド

ただレッドゾーンディフェンスで滅法強いのがオハイオ州立大。今季のレッドゾーンでの相手のTD獲得率は全米1位となる41%の成功率。これまでレギュラーシーズンでペンステートミシガン大相手に素晴らしいゴールラインスタンドを披露してきました。

そんなディフェンスを相手にするテキサス大は1ヤードラインまで進んでも油断はできません。時間帯を考えればFGでは事足りず、絶対的にTDが欲しいテキサス大。ここからこの試合の運命を決める攻防が始まります。

まずは1stダウン。アンダーセンターで構えたユワーズはスナップを受けるとRBジェリック・ギブソン(Jerrick Gibson)にハンドオフ。ギブソンは一直線に突っ込みますが、オハイオ州立大の厚い壁に阻まれノーゲイン。

そして多くの議論を呼んだ2ndダウン。過去の試合においてもオハイオ州立大のショートヤードのディフェンスに対してダイブ系のプレーの成功率は高くない事はテキサス大陣営もおそらく把握していた事でしょう。1stダウンプレーが布石だったとすれば、2ndダウンプレーは何かしら相手の意表を付くプレーであってもおかしくはありませんでした。

ただここでスティーヴ・サーキジアン(Steve Sarkisian)監督が選択したのは左にピッチしてからのスィープ。ユワーズからRBワイズナーへのピッチーはスクリメジライン後方5ヤード方向。これを即座に察したオハイオ州立大ディフェンスが怒涛のプレッシャーをかけ、ワイズナーは7ヤード減退。エンドゾーンへ飛び込むどころかエンドゾーンから遠ざかってしまいます。

このプレーでテキサス大オフェンスは左サイドにTEホワン・デーヴィス(Juan Davis)をセット。LTはオールアメリカンのケルヴィン・バンクス・Jr.(Kelvin Banks Jr.)。スナップと同時にバンクス・Jrは左方向へプル。しかしそのバンクス・Jrの裏からワイズナーを捉えるために抜け出たのが同じくオールアメリカンのDBケイレブ・ダウンズ(Caleb Downs)。そしてそのバンクス・Jrをかわしてダウンズと共にワイズナーに襲いかかったのがレイサム・ランサム(Lathan Ransom)でした。

彼らの異常なまでのスピードと臭覚により、このスウィーププレーは大失敗。貴重なヤードをここにきて失うことになります。

さらに3rdダウンではユワーズはエンドゾーン左奥へ走り込んだウィンゴを狙いますが、オハイオ州立大のDLジャック・ソイヤー(Jack Sawyer)がわずかなところでこのパスをチップ。

そして4thダウン。残り時間は2分半でTDしか道が残されていないテキサス大。ショットガンフォーメーションからスナップを受けたユワーズはオープンレシーバーを探し続けますが、そこにRTをいなして突っ込んできたのが先ほどパスを弾いたソイヤー。実はユワーズは元々オハイオ州立大の選手で彼がまだオハイオ州立大に在籍していた際ソイヤーはルームメイトだったのですが、その元ルームメイトがユワーズをサック。思わずユワーズはボールをファンブルしてしまいますが、これをソイヤー自身が拾い上げ、83ヤードの激走の後見事TD。相手のTDを阻止しさらにリターンTDを決めるという、事実上14点分の価値あるプレーを土壇場で見せたソイヤーには鳥肌が立ちました。

テキサス大は残り約2分で最後のチャンスを得ますが、ユワーズのパスがダウンズにインターセプトされ万事休す。オハイオ州立大が2020年度シーズン以来の全米王座決定戦出場を決めたのでした。

テキサス大の敗因

テキサス大はその強力なディフェンス力でオハイオ州立大のロングプレーをほぼほぼ阻止し続けていました。唯一のミスがあったとすれば、前半終了間際のハワードからヘンダーソンへの75ヤードのスクリーンパスぐらいなもの。相手のエースWRスミスを1キャッチで3ヤードのみに抑えて無力化できたのは大きかったですし、相手のランもトータルで81ヤードとして、オハイオ州立大が過去2回のプレーオフの試合で見せたような、大量得点で突っ走るような展開を阻止する事はできました。

ユワーズにしても試合を通して落ち着いたQBプレーを見せていたと思いますし、ソフトタッチの華麗なパスも何本も決めていました。慌てて凡ミスを犯すこともなく、オハイオ州立大と互角にやり合っていたと思います。

ただランがやはり望んでいたほど出ませんでした。プレーオフ初戦のクレムソン大戦では49キャリーで298ヤードを稼いでいましたが、準々決勝戦のアリゾナ州立大戦では30キャリーでたったの53ヤード。そしてこの日は29回のキャリーで58ヤード。確かに全米ナンバーワンディフェンスを擁するオハイオ州立大が相手ですからそう簡単に走らせてはくれない事はわかっていましたが、長いヤードの3rdダウンを残した場面が多かったことを考えるともっと走れれば多少は展開は変わっていたのかもしれません。

そして先ほどのゴールラインスタンドでの2ndダウンでのプレーコール。オハイオ州立大ディフェンスのスピードを考えればあのスウィープで本当に良かったのか・・・。たらればを言ったらキリがありませんが、あのプレーで7ヤード減退してしまったことでプレーコールの選択肢が減ってしまったと言われても仕方はないでしょう。

オハイオ州立大の勝因

全米屈指のオフェンスを擁するオハイオ州立大ですが、この試合では既述のようにエースWRスミスが完全に押さえ込まれ、崩してゲットしたビッグプレーは先にあげたヘンダーソンのスクリーンパスぐらいなものでした。

ハワードもベストなパフォーマンスを残せたかと言えば必ずしもそうは言えないでしょう。そんな中チームを牽引したのはやはり強力なディフェンス陣のおかげだと思います。それは試合を決定づけたソイヤーのサックからのスクープ&スコアに集約されていると思いますが、1試合平均トータルヤードが444ヤードを誇るテキサス大を341ヤードに抑え、特にランを60ヤード未満に食い止めたのは収穫でした。

1列目、2列目、3列目、全てのレベルにおいて冴えていたオハイオ州立大の守備陣がもたらした大勝利と言っても過言ではないでしょう。

(当然戦術やスキーム的な勝因・敗因はあったと思いますが、そこは素人なので割愛させていただきます笑)

総括

試合前の下馬評ではオハイオ州立大が快勝するという声が多かった気がしますが、蓋を開けてみればオレンジボウルに負けじと劣らないグッドゲームになりました。テキサス大にも勝機はあったと思いますが、試合終盤のゴールラインスタンドでのあの攻防を制したオハイオ州立大が試合を決定づけました。

オハイオ州立大はこれで2020年度シーズン以来となる全米王座決定戦進出。すでに勝ち名乗りを上げているノートルダム大との頂上決戦が決定しました。

一方テキサス大は2年連続CFP準決勝戦で敗退。2005年の全米制覇以来ナショナルタイトルレースから長らく遠ざかってきた彼らにすれば、2年連続でこの大舞台に立てたことは凄いことだとは思いますが、勝手なんぼの世界ですからこの敗戦は多くの選手に傷跡として残ることでしょう。

ユワーズは先発QBながら常にマニングという将来を担うと言われる控えQBと彼の出番を望む多くのファンからのプレッシャーと闘いながらシーズンを送ってきました。今回あと一歩というところでそのチャンスを逃してしまったことで、悔やんでも悔やみきれない懺悔の念に悩まされるかもしれません。

ただ、テキサス大をここまで牽引したのはその強力なディフェンス力も当然ありますが、やはりユワーズの存在。前述の通りかつてオハイオ州立大に在籍していた彼にとってこの古巣との対決は特別な思いがあったことでしょう。ソイヤー然り多くの元チームメイトと対戦した彼の心中は計り知れません。ジョージア大に2度敗れ、SECタイトルも逃し、夢のCFPタイトルゲーム出場も叶わないとなれば批判の声も起こることでしょうが、それでも今季のオフェンスを引っ張ったユワーズには大いにねぎらいの声をかけてあげたいです。

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