2024年度から導入される12チーム制度のCFP(カレッジフットボールプレーオフ)。FBSの9つのカンファレンスの各優勝チームの中でもCFPランキングで上位4チームにはファーストラウンド免除のトップシードが与えられますが、そのほかの8チームはまずファーストラウンドを勝ち抜かなければなりません。
そのファーストラウンドが今週末に4試合行われますが、どの試合もプレーオフとしては初の試みとなるキャンパス開催。確実にホームチームが地の利を生かす戦いとなると思われます。当サイトはその4試合の見どころを順にご紹介していますが、今回はその最終回です。
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#9 テネシー大 @ #8 オハイオ州立大
🇺🇸12月21日(土)東部時間午後8時 | 🇯🇵12月22日(日)午前10時
12月21日土曜日に行われる3つのプレーオフゲームのうちの最後の試合がこのオハイオ州立大とテネシー大との対戦。会場はオハイオ州立大のホームスタジアムである、オハイオスタジアムとなります。
オハイオ州立大のプレーオフ出場はこれで6回目。この数字はアラバマ大、クレムソン大に次いで三番目に多い数字。彼らはCFP初年度の2014年度に優勝を飾っており、10年ぶりの栄冠を目指します。一方のテネシー大は今回でプレーオフ出場は初めて。彼らの全米制覇はCFPの前身であるBCS(ボウルチャンピオンシップシリーズ)の初年度だった1998年が最後ですので、実に26年ぶりのタイトル獲りを目指します。
両校とも名のあるチームではありますが、実は彼らはこれまでたったの1度しか対戦がありません(1996年)。この時のテネシー大のQBはかのペイトン・マニング(Payton Manning)。そしてオハイオ州立大のRBはエディ・ジョージ(Eddie George)でした。
オハイオ州立大は言わずと知れた名門チームであり、全米制覇はこれまで合計8度。しかしながら前述の通りその栄光からは10年遠ざかっているため、優勝を願うファンや後援者の欲求は高まっているわけです。
最後に優勝した時の監督だったアーバン・マイヤー(Urban Meyer)氏の後を継いだのが現在のライアン・デイ(Ryan Day)監督。彼のこれまでのオハイオ州立大での戦績は66勝10敗。勝率は86.6%で現役の監督としては最高値(2位はジョージア大のカービー・スマート監督)。
そんなデイ監督の戦績は他の大学の監督の戦績であれば十分満足いく数字だとは思いますが、オハイオ州立大の監督して求められるハードルは高く、やはりナショナルタイトルを獲得しなければファンは満足しません。そればかりか、デイ監督は就任以来永遠のライバルであるミシガン大との対戦成績は1勝4敗で、しかも今年もホームで敗れたことでミシガン大に4連敗。この事で現在最高勝率を誇る監督であるにもかかわらず、オハイオ州立大でのデイ監督のポピュラリティーは低下中なのです。
彼がオハイオ州立大の監督として確実に来年も戻ってくるためには、今回出場するプレーオフで優勝できなくても準決勝戦、そして決勝戦に進む必要があります。準々決勝戦で敗れても評価が上がるかは定かではないくらいですから、このファーストラウンドで、しかもホームでテネシー大に負けることなど許される訳がないのです。なんとも厳しい世界ですよね。
ただ、ミシガン大戦での敗戦以外はオハイオ州立大は安定した強さを見せていました。もう一つの敗戦ゲームは現在1位のオレゴン大との試合であり、この試合も1点差という僅差で負けたことからも、オハイオ州立大が全米トップレベルのチーム力を誇っているかがわかると思います。
攻撃陣ではQBに経験豊富なカンザス州立大からの転校生であるウィル・ハワード(Will Howard)、RB陣には生え抜きのベテラン、トレヴィヨン・ヘンダーソン(TreVeyon Henderson)にミシシッピ大の元エース、クウィンション・ジュドキンス(Quinshon Judkins)。WRには今季のルーキー界隈ではピカイチのジェレマイア・スミス(Jeremiah Smith)にいぶし銀のエメカ・イブカ(Emeka Egbuka)とスキルポジションは全米随一です。ここに元オレゴン大、フィラデルフィアイーグルス、サンフランシスコ49ers、UCLAで監督を歴任したチップ・ケリー(Chip Kelly)氏がオフェンシブコーディネーターを務めるのですから鬼に金棒です。
またディフェンス陣でもDLにJ.T.トゥイモロアウ(JT Tuimoloau)、ジャック・ソイヤー(Jack Saywer)、タイリーク・ウィリアムス(Tyleik Williams)、LBにソニー・スタイルス(Sonny Styles)とコディ・サイモン(Cody Simon)、さらにDBにはアラバマ大からの転校生であるケイレブ・ダウンズ(Caleb Downs)とラサン・ランサム(Lathan Ransom)と駒が揃いまくっています。このタレントをしてトータルディフェンスならびにスコアリングディフェンスで全米1位なのは納得です。
一方のテネシー大は1998年に全米制覇をするものの、徐々に全米の表舞台から姿を消しここ10年ほどは他のSECライバルたちにやられっぱなしでした。しかし2021年にジョシュ・ハイペル(Josh Heupel)監督が就任して以来一変。2022年に全米3位だった宿敵・アラバマ大に16年ぶりの勝利を記録し、一時は全米1位に躍り出るなどして存在感を発揮。リクルーティングでも成功し直近3シーズンで30勝8敗と素晴らしい戦績を残しています。
ハイペル監督は2000年にオクラホマ大が全米制覇を果たした時の先発QB。その頃は1999年までチームでオフェンシブコーディネーターを務めていた、エアーレイドオフェンスの生みの親であるマイク・リーチ(Mike Leach、故人)氏の影響をまだ色濃く受けていた時代でした。故にコーチングの道に進んだハイペル監督もベースにしているのはエアーレイドオフェンス。スペースを存分に使う戦術でテネシー大復活の原動力となっています。
それをフィールド上で体現するのが若き期待のQBニコ・イアマレイヴァ(Nico Iamaleava)。まだ1年生ですが大器の片鱗を感じさせるパスプレーを披露してチームを牽引してきました。ルーキーQBとしての判断の遅さも見え隠れしますが、今後の成長が楽しみな選手といえます。
そのイアマレイヴァを中心とするパスオフェンスは全米62位となる1試合平均230.8ヤードと実際のところはエリートレベルではありませんが、テネシー大のオフェンスはランアタックあってのもの。RBディラン・サンプソン(Dylan Sampson)と強力なOL陣との連携でテネシー大ランオフェンスは全米9位となる1試合平均232.7ヤードと、パスヤードをランが上回るという現象が起きています。このことからもハイペル監督のオフェンスは純正エアーレイドとはいえないかもしれませんが、ランが出るオフェンスを持つことは攻撃の幅を広げることに繋がり、結果的にトータルオフェンスは全米8位となっています。
またテネシー大のディフェンスも一級品。ランディフェンスは1試合平均99.6ヤードで全米8位、パスディフェンスは1試合平均178.7ヤードで全米17位、さらにトータルディフェンスで全米4位というスタッツが残っており、これを強豪ひしめくSECで記録したということで、テネシー大守備陣の強固さを大いに物語っています。その中でもDLジェームス・ピアース・Jr(James Pearce Jr)とCBジャーモッド・マッコイ(Jermod McCoy)は未来のNFL選手候補として注目です。
オハイオ州立大の唯一の不安点はOL陣。今季は主力のジョシュ・シモンズ(
Josh Simmons)とセス・マクラフリン(Seth McLaughlin)が相次いで怪我で戦線離脱。そのせいでラインアップをシャッフルしなければ無くなりました。強力なテネシー大のパスラッシュにこのOLが耐えられるか、また相手フロントセブン相手にランブロックを効果的に繰り出せるかが鍵。
一方テネシー大はパスアタックがどれだけの成果を残せるかに勝利の命運がかかっているといえそうです。前述の通りサンプソンを中心としたランアタックは強力ではありますが、それが鉄壁のオハイオ州立大ディフェンスに通じるかは未知数。もしサンプソンが止められてしまえば、自ずとテネシー大のオフェンスはイアマレイヴァの肩に依存せざるを得なくなります。そうなった時に若いエースが敵地でどれだけやれるかが重要となってきそうです。
今回の試合はオハイオ州立大での開催ですが、予想気温はノートルダム大、ペンシルバニア州立大といった他のファーストラウンド会場と同じく氷点下。この寒さにテネシー大選手たちが対応できるかも見ものです。
さらに興味があるのは、どれだけのテネシー大ファンがオハイオスタジアムに乗り込むかです。というのも、この試合のチケットが売り出される前にチケット販売のコードが流失し、それをかなりの数のテネシー大ファンが買い占めたという報道があったからです。一部によるとスタジアム全体の3割の数のチケットがテネシー大ファンの手に渡ったという話もあります。
スタジアムのスタンドが何色に染まっているか・・・是非そちらも気にして観ていただきたいです。