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Pac-12の失落と再建への道

Pac-12の失落と再建への道

スコット体制の衰退


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しかしスコット体制下でのPac-12カンファレンスは時間が立つにつれて当初の勢いから膨れ上がった期待をことごとく裏切るものになってしまいました。カンファレンスとしての運営体制において華やかな船出を切るも、カンファレンス自体の存在感はピークを越えて下がる一方。当初のビジネスマンとしての手腕が霞んでしまうほどスコット氏の評判はガタ落ちとなってしまったのです。

そのスコット氏の退陣表明が奇しくも今年始めに行われたジョー・バイデン新大統領の就任式と重なってしまったことでさらにそのニュースすらあわよくば取り扱われるかどうかという感じになってしまったことに何かの因果を感じずに入られませんでした。

そしてPac-12カンファレンスはスコット氏がコミッショナーとして就任した11年前と対して変わらない現状に直面しているという不安を残しています。

スコット氏は最近のインタビューの中で過去回想し、財政的にも歴史的にもPac-12が他のパワー5カンファレンスに地力で劣ることを痛感したと述べました。そして何よりも部活動において結果が出ない、つまり勝てないというジレンマに悩まされることになります。

更に悪いことに、先にも紹介したとおりPac-12カンファレンスはここ何年もアメフトで全米制覇を成し遂げていませんが、にもかかわらずスコット氏の年収が500万ドル(約5億円)以上であるという事実がPac-12ファンの怒りに油を注いでしまったのです。

スコット氏の失敗の一因を探ってみると彼のビジョンが長期的に支持されなかったという点が挙げられます。当然Pac-12が他のパワー5カンファレンス勢に差をつけられてしまった全責任をスコット氏に押し付けるのは酷ではあります。例えばカンファレンス内で最も注目されるチームであるサザンカリフォルニア大ですが、キャロル監督が去った後の彼らの衰退は彼の跡を継いだレーン・キフィン(Lane Kiffin、現ミシシッピ大監督)氏やスティーヴ・サーキジアン(Steve Sarkisian、現テキサス大監督)氏を起用した当時の体育局長であるパット・ヘイデン(Pat Haden)氏やリン・スワン(Lynn Swann)氏のものであると言えますが、サザンカリフォルニア大の弱体化がPac-12カンファレンス全体のレベルダウンを誘発したと言えるとは言え、それ自体はスコット氏が原因であるというわけではありません。

しかし長年に渡るスコット氏の傲慢さが所属大学の体育局長との関係を擦り切らせ、また彼の収入を決める権限を持つ各大学の学長らを軽視しそれぞれの大学との連携努力を怠ったことで彼の信頼は失墜してしまったのでした。

Pac-12の行く末を明るいものにするはずだった巨額の試合放映権を取り付けたスコット氏の豪腕も時がたつにつれて周囲の記憶から忘れ去られ、残ったのは凋落著しいPac-12カンファレンスのみ。

審判団の度重なるミスジャッジに始まり、カンファレンスのヘッドクォーターをサンフランシスコに移転したことで膨れ上がったビルディングの賃貸料金(年間800万ドル、1ドル100円計算で約8億円。他の4つのパワー5合計でも150万ドルだったことを考えると空前絶後の出費)、また立ち上げたPac-12ネットワークからは期待していたような収入が手元に転がり込んでこなかったことも痛手でした。

そして極めつけは昨年度パンデミックの影響でフライング気味に秋シーズン開催を一時凍結してしまったことです。彼らはBig Tenカンファレンスに追随する形で8月の時点でシーズン開幕を見送りましたが、他のカンファレンスが山あり谷ありながらも開幕にこぎつけたのを目の当たりにしてシーズン途中から開幕へとかじを切りましたが、結局シーズンが始まったのは11月の第1週目。このことでPac-12カンファレンスチームのCFP進出の可能性は著しく低下したのです。

もっともパンデミックの状況下では一体何が正しかったのかなんて言うのは後になってみないとわからないものでしたが、一方でACC、Big 12、SECなどが同じ環境下で10試合から13試合をこなせてしまったことを考えれば、Pac-12コミュニティーは思うところがあるというものでしょう。

しかしやはりスコット氏の一番の失態はPac-12カンファレンスにおけるメディアの価値を図りそこねたという部分です。

カレッジスポーツは日本のそれとは比べ物にならないほどのポピュラリティーを持っており、それに伴い想像以上のお金が動いています。デジタルメディアが全盛期な今、各カンファレンスのフォーカスはいかにそのデジタルメディアを利用して収入を得るかが大きなポイントとなっているのです。

つまり現代のカンファレンスのあり方はメディアカンパニーであるということが出来ますし、それをうまく使いこなせたカンファレンスが大きな利益を得るという仕組みになりつつあります。前述のような前例のない巨額の放映権契約を取り付けたことはPac-12カンファレンスの存在感を示す上で抜群の威力を発揮はしましたが、Pac-12ネットワークの芽が出なかったという点でスコット氏は失敗したということになります。

そしてそんなスコット氏を支持し続け、彼に能力以上の発言力を与えてしまったPac-12所属大学の大学長勢の非ももまた見逃がすことは出来ません。

そんなスコット氏は今年6月末にコミッショナーの座から退くことになっています。彼の後任にはジョージ・クリアヴコフ(George Kliavkoff)氏の就任が決まっています。弁護士の資格を持つクリアヴコフ氏はこれまでMLBのメディア部門、NBCユニバーサルのチーフデジタルオフィサー、Huluの臨時CEO、WNBAのエクゼクティブなどを務めるなど、その経歴からもメディア方面でその手腕を発揮してきた人物であることがわかります。このことからもPac-12がメディアに力を入れたがっておりそこを中心にテコ入れを図っていることが見え隠れしますね。

当然Pac-12カンファレンスチームのフィールド上での戦績が上がらなければ元も子もないのですが、新しいリーダーシップの元で今度こそPac-12カンファレンスがパワー5カンファレンス群の一員としてその存在感を今一度打ち出すことができるでしょうか?

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