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オフィシャルビジットの上限が撤廃へ【オフシーズン便り#13】

オフィシャルビジットの上限が撤廃へ【オフシーズン便り#13】

前回のニュースでもご紹介しましたが、今回も全米大学体育協会(NCAA)によるルール改正のお話です・・・。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

カレッジフットボールにおいて高校生選手を勧誘する活動であるリクルーティングは、チーム育成において非常に大きな比重を占めていることはこれまでも何度もご紹介してきました。この場合、大学から勧誘されている高校生選手らのことを俗に「リクルート」と言いますが、様々な大学の勧誘を受けたり、また大学チームに目をつけてもらうために、リクルートたちは色々な手段を使って活動を続けていきます。

その中の大きなイベントに意中の大学に直接訪問することが挙げられると思います。大学チームの施設を見学するのはもとより、大学のキャンパスなどを見て回って、実際に目にすることで彼らの進学先を決断する上での判断材料にするわけです。

とはいえ、NCAA1部の上位サブディビジョンであるFBS(フットボールボウルサブディビジョン)には130以上のチームがあるわけで、そこを全て訪れることなど到底できません。ですから、大学訪問するにあたってもある程度その数を絞っていかなければならないわけです。

ところで、このリクルートの訪問、「ビジット」には「オフィシャル(公式)ビジット」と「アンオフィシャル(非公式)ビジット」の2つの種類が存在します。

オフィシャルビジットとは

オフィシャルビジットとは、リクルートの訪問を受け入れる大学がその訪問にかかるすべての費用を請け負う場合のビジットのことを言います。

アメリカはものすごく広いので、近場の大学にビジットでもしない限り、リクルートたちの移動は長距離の車移動、電車、さらには飛行機といった手段を使ってビジットにやってきます。当然交通費がかかりますが、特に大陸を横断するような移動の場合の飛行機代はばかになりません。

また遠方からビジットする場合は前日から乗り込むことも考えられますから、この場合は宿泊地も必要となります。つまり大学ビジットにはお金がかかるわけです。

この費用をホストである大学側が全負担するビジットのことをオフィシャルビジットと言います。至れり尽くせりの接待イベントなわけです。

ただ当然ですが、大学側も誰でも彼でもオフィシャルビジットをオファーできるわけではなく、上限が1チーム56人と決められています。そうでないと資金が潤沢なチームがより多くの有能リクルートを接待できるようになり、それができないチームとの格差が生まれてしまうからです。


アンオフィシャルビジットとは

一方、アンオフィシャルビジットとは今紹介したオフィシャルビジットのようにリクルートに大学が資金的援助を行わない訪問活動のことを言います。

ご想像に容易いかと思いますが、この場合に生まれる費用は全てリクルート持ち。大学側もリクルート側もビジットを行っていい期間ならば何人ホストしても、また何校訪問しても問題はありません。

これまでのリクルートの流れ

これまでリクルート一人がオフィシャルビジットを受けることができる数は5つと決まっていました。つまり5つの完全接待ビジットとそれ以外のビジット数が無制限ながら全て自費という条件下でどの大学をどのように訪問するか考えなければならなかったわけです。

ですから例えば自分の街からかなり遠い大学へビジットするなら5つある枠の1つを使ってオフィシャルビジットで訪問し、近場でお金がそこまでかからない場所へならアンオフィシャルビジットを使うとかいう手法もあると思います。

また、大学側がオフィシャルビジットを提示するということはそれだけそのリクルートの勧誘に本気であることの意思表示でもありますから、それに応えるために移動距離に関係なくそのオファーを受けてオフィシャルビジットとして大学に足を運ぶこともあり得ると思います。

リクルートたちは5つあるオフィシャルビジットをどのように使うか、そして大学チーム側は56人分あるオフィシャルビジットの枠を誰に使うか、そんな駆け引きが水面下で行われているわけです。

5校の上限が撤廃へ

そんな中、今オフにNCAAはリクルートが受けることができるオフィシャルビジットの上限(5つ)を撤廃するルール改正を行いました。

つまり、トップリクルートたちはオファーがありさえすれば無制限にオフィシャルビジットを受けることができるようになるというわけです。

ただ、同じ大学へのオフィシャルビジットは1度きりという制限は残りますが、例外としてオフィシャルビジットした後にその大学のコーチ陣が変わってしまった場合のみ、同じ大学へもう一度オフィシャルビジットしてもいいという救済処置はあります。

ちなみにアンオフィシャルビジットは従来通り無制限で行うことができます。そして大学側がオファーできるオフィシャルビジットの上限も56人分と変わり無しです。

考えられる影響

今回のこのルール改正が何を及ぼすのでしょうか?

まず考えられる影響に、今まで以上にトップリクルートたちが多くの大学に招待されるということが確実に起きるでしょう。そうなればそう言った有能選手の勧誘合戦・獲得合戦がさらに激化することは目に見えています。

しかしながら既述の通り大学がオファーできるオフィシャルビジット枠は今まで通り56人分で変わりません。そうなると、リクルート側の制限がなくなったことでより多くのトップリクルートが大学からのオファーを受諾することが可能になるため、そう言った選手向けに56つある枠を今まで以上に割いていくことが考えられます。

そうなれば、中堅リクルートたちがオフィシャルビジットをオファーされる可能性が従来よりも減ってしまう可能性が出てくるかもしれません。星の数が多く付いている有能リクルートばかりが手厚くもてなされ、そうでない選手たちのチャンスが摘まれてしまうかもしれないということです。

このルール撤廃はリクルート側の「5つの枠をうまく使いこなす」という負担をなくすにはいいルールかもしれませんが、このことでさらに大学同士のリクルート合戦が激化し、また有能リクルートばかりがもてはやされるという事態に陥らないか心配です。

また、これまでは大学側がリクルートたちを勧誘するという図式だったものが、パワーバランスが逆転して、リクルートたちが大学を選びそのために大学が彼らに媚を売るような構図になってきているような気もしないでもありません・・・。

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