ジョージア大とクレムソン大が2021年度開幕戦で激突
ジョージア大とクレムソン大は隣り州同士ということで長い間ライバル関係にありました。しかもキャンパス間がたったの70マイル(約110キロ)しか離れていないということでお互いを意識し合う間柄だったのです。
初めて顔を合わせたのが1897年でそこから1916年までは毎年対戦があり、そこから隔年ながらライバリーは継続され、1967年からはほぼ毎年開催される恒例のマッチアップだったのです。
しかし異なるカンファレンスに属していたため(ジョージア大はサウスイースタンカンファレンス、クレムソン大はアトランティックコーストカンファレンス)、近年は両カンファレンスが地区制度を敷いて試合数が増えていったためにマッチアップの頻度は激減。そして最近では2014年度を最後に対戦が途切れていました。
しかし今年始め両校が2021年の開幕戦で相まみえることになったことが発表されました。残念なのはこの対決がニュートラルサイト(ノースカロライナ州シャーロット市のバンク・オブ・アメリカスタジアム、カロライナパンサーズの本拠地)で行われるというところです。
ここ最近はどちらのチームも優勝を狙える強豪校として顔を連ねていますが、彼らにとって優勝を狙うためには無敗ないし1敗を守ることが大前提。そんな状況下で試合をすればどちらに転ぶかわからないようなこのマッチアップを組むことはナショナルタイトル獲りに支障をきたしかねません。しかしそれでも伝統を重んじてマッチメークを敢行した両校の体育局長に賛辞を送りたいです。
これまでの対戦成績は64戦中42勝18敗4分けとジョージア大が圧倒的。開幕戦からこんなビックゲームが拝めるなんて来年度が早くも待ち遠しいですね。
ちなみにこのマッチアップを実現させるためにクレムソン大はワイオミング大と、ジョージア大はサンノゼ州立大との試合をそれぞれキャンセルしました。おそらくこの2校には巨額のキャンセル料が支払われることになるでしょう。
(情報ではサンノゼ州立大はジョージア大から約1.8億円のキャンセル料が支払われ、さらにジョージア大の代わりに対戦することになったサザンカリフォルニア大からマッチアップ料1.1億円を手にすることに。つまり今回の一件でサンノゼ州立大は約3億円を手にすることになるのです)
USCが威厳を取り戻す?
昨年の7月、サザンカリフォルニア大(USC)は2021年度にFCS(フットボールチャンピオンシップサブディビジョン/旧NCAA1部AA)に所属するカリフォルニア大デーヴィス校とのマッチアップを組みましたが、これが一部のファンからの批判を招きました。
というのも、USCはご近所のライバルであるUCLAおよびノートルダム大と並んでこれまで一度も格下のFCSチームと試合を組んだことがなかったFBS(フットボールボウルサブディビジョン/旧NCAA1部A)の3校のうちの1つだったからです。ほとんどのFBSチームが白星獲得を目的に弱小チームと試合を組む(いわゆる「カップケーキ」ゲーム)中、それを良しとせずにFCSチームとのマッチアップを拒んできたのがこの3チームでした。
しかし2021年度にUSCがカリフォルニア大デーヴィス校と対戦することになって、ついにUSCも「楽な白星を獲りにいったか」と思われてしまいました。伝統あるUSCのファンとしてはそんなことをしなくてもFBSチームと対戦して圧倒するチームの姿を見たかったのです。それこそ最近囁かれているUSCの凋落を鏡に映し出しているかのようです。
そんな声を聞いたからなのか、USCの体育局は新たに就任したマイク・ボーン体育局長がカリフォルニア大デーヴィス校との試合をキャンセルする手続きに入ったとコメントしました。
どちらともライバル関係にあるUCLAとノートルダム大が安全牌に手を出していないこの状況でUSCがわざわざその輪から抜けるなんてことをプライドが許さないと叫び続けていたファンの声にボーン局長が耳を傾けた形になったのです。
ペンステートとパターノ氏遺族が和解
ペンシルバニア州立大(ペンステート)といえば長くジョー・パターノ(Joe Paterno)元監督が代名詞のようなものでした。同大学で40年以上指揮を取り、ナショナルタイトル2つ、Big Tenタイトル3つ、そして誰も今後破ることが出来ないと言われている生涯最多勝利数409勝を誇るカレッジフットボールに名を残す人物です。
しかしながら2011年度シーズン中に発覚した、彼のかつての右腕とされた元ディフェンシブコーディネーター、ジェリー・サンダスキー(Jerry Sandusky)氏が起こした児童への性的虐待疑惑で、その事実を知りながら隠蔽したのではないかというスキャンダルが発覚。その責任を取る形でシーズン途中でチームから解雇され、その数カ月後に病気で他界するというなんとも山あり谷ありの人生を送ったのでした。カレッジフットボール界に名を刻む名将の割にはあまりにも残念な最期でした。
ペンステート自身もこのスキャンダルに巻き込まれ、巨額の罰金とスカラシップ(スポーツ奨学金)の削減やリクルーティングに制限がかけられるなどのペナルティーを喰らい、戦力はガタ落ちとなってしまいました。
しかし現ヒューストンテキサンズのビル・オブライエン(Bill O’Brien)監督を経て当時ヴァンダービルト大の監督をしていたジェームス・フランクリン(James Franklin)監督をチームに迎えると徐々に地道なリクルーティング活動を経てここ数年はコンスタントに10勝を稼げるまでに復活してきました。
一方ペンステートをペンステートたらしめたパターノ氏の評価は一変。スタジアム前に建てられていた銅像は撤去され、彼の息のかかっていたスタッフは一層されて大学はパターノ氏と距離を置くようになっていました。
そして遺族はサンダスキー氏に関わる第三者のリポート「Freeh Report」の内容に納得いかないということでNCAAを提訴。またパターノ氏の実子で彼の生前にはチームのオフェンシブコーディネーター兼QBコーチを務めていたジェイ・パターノ(Jay Paterno)氏が不条理に大学から解雇されていたとペンステートを相手取って提訴。ペンステートとパターノファミリーは過去の長い歴史にも関わらず過去8年間相まみえることが出来ずにいたのです。
しかし今年初めに大学側がパターノファミリーに和解金を支払うことに合意し2011年から続く双方間のいざこざに一応の決着を見ることになりました。
生前には大学にポケットマネーから寄付金を惜しみなく捻出し、アスリートの前に学生であれというモットーを貫き一時代を築いたパターノ元監督。周囲にはなにもないステートカレッジ市にカレッジフットボール界を代表する強豪校を作り上げ、市自体もそれにともない成長していったことを考えればパターノ氏の功績は何ものにも代えがたいものでした。が、それもこれもスキャンダルのせいで全てが崩れ落ちてしまったわけです。
パターノ氏にもスキャンダルに関して非があったことを考えればこのような状況になってしまったことを擁護することは出来ませんが、ただただ残念で仕方ないという言葉に尽きると思います。しかし今回の和解により双方ともに区切りをつけることが出来たことでしょう。
ただ忘れてはならないのは被害者となった35人の方々の存在であり、今後どんな形であれペステートならびにパターノファミリーらが彼らのサポートを続けていって欲しいものです。