数年前テキサス州内でおこなわれていたオクラホマ大のサテライトキャンプでのこと。同チームのオフェンシブラインコーチ、ビル・べデンバウ(Bill Bedenbaugh)はそこで名も無き一人の2つ星リクルートに出会います。ジョナサン・アルヴァレズ(Jonathan Alvarez)という高校生です。
「ジョナサンは当時我々のリクルーティングのターゲットに入っていない選手でした。しかし我々のキャンプに参加し、ベンデンバウコーチの元トレーニングを積んだのですが、そこで初めて彼がチームに必要な存在になるに違いないと確信したのです。」とオクラホマ大ヘッドコーチ、ボブ・ストュープス(Bob Stoops)監督は回想しています。
そしてアルヴァレズは2014年にオクラホマ大に入学。1年生時にすでに試合出場を果たし、昨年はオフェンシブガードとして先発メンバー入りし、今年はセンターにコンバートされる予定です。それもこれも名も無きリクルートだったアルヴァレズがサテライトキャンプに参加したことによってオクラホマ大がその才能を発掘し、またアルヴァレズにとってもオクラホマ大でプレーするチャンスを得ることとなったのです。
そんなわけで過半数のBig 12カンファレンスチームがNCAAのキャンプ規制に賛成するなか、オクラホマ大はこれに異議を唱えています。
「我々はサテライトキャプを支持する立場を表明する。なぜならサテライトキャンプはリクルートにチャンスを与えるサービスだと考えているからです。全てのリクルート達が遠方はるばる我々のキャンプに参加する為にオクラホマまで足を運ぶことはできません。我々が彼らの方に赴くことの方が理にかなっていると言う場合もある。確かにそのようなサテライトキャンプにて多くのリクルート達を探し出すことが出来るかと聞かれればそれは難しいが、何にせよサテライトキャンプを行うことは非常によい経験でした。」とオクラホマ大体育局長(AD)のジョー・キャスティグリオン(Joe Castiglione)氏も語っています。
「私としてはサテライトキャンプを行うことでたった一人のリクルートを発掘出来ることだけでも意義があると思う。そのたった一人の選手がチームに大いに貢献してくれるならば、それは我々にとって大きなプラスなのです。」とストュープス監督もキャスティグリオン氏に同調しています。
多くのタレントが眠るテキサス州ではただでさえ州内大学同士のリクルートバトルが激しいわけですから、隣接する「外者」のオクラホマ大などがテキサス州からよいリクルートを毎年沢山獲得出来る訳ではありません。ゆえにサテライトキャンプを行うことは非常に貴重だという捉え方をしているのです。
「オクラホマ州内にはただでさえリクルートの頭数が少ない上、それをオクラホマ大、オクラホマ州立大、タルサ大の3チームで競い合う訳です。そうなるとおのずと我々の目はオクラホマ州外の選手に向かざるを得ません。オクラホマ州内でのリクルーティング戦争が熾烈を極める中、それを埋める為に我々はテキサス州に足を踏み入れる必要があったのです。」とキャスティグリオン氏は付け加えました。
「これまでもNCAAは誰かが文句を言うとそれを改善する為に特に吟味もせずルールを改正するというやり方をして来た。『文句を言うやつがいるならば廃止してしまえ』と。願わくば近い将来NCAAがしっかりと状況を把握しサテライトキャンプを復活させることを祈ります。」とキャスティグリオン氏は締めています。
サテライトキャンプは当然リクルーティングにおいて重要な比重を占めているのですが、上のオクラホマ大のようにサテライトキャンプがリクルート達にもチャンスを与える良い機会であるにも関わらず、それを廃止するのは彼らにとってもマイナスだ、と主張するチームやコーチ達も多く存在するのです。まあ偽善的と言えばそれまでではありますが(苦笑)。