先週7月5日カンザス大の新体育局長(AD)に元アーカンソー大体育局長のジェフ・ロング(Jeff Long)氏が就任することが明らかになりました。
苦戦するカンザス大フットボール部
カンザス大は去る5月にシェオン・ジンガー(Sheahon Zenger)氏を解雇しており、その後釜を探しているところでした。ジンガー氏はなかなか成績が上がらない同大フットボール部の責任を取るべきだという声が挙がっていました。ジンガー氏が起用した現監督のデヴィッド・べティ(David Beaty)は過去3年間で3勝33敗。さらに彼の前任者で同じくジンガー氏が連れてきたチャーリー・ワイズ(Charlie Weis)氏も3年弱のシーズンで6勝22敗ということで、ジンガー氏の行きの掛かったフットボール部は9勝55敗というとんでもない成績しか残せなかったのです。
このサイトでも以前紹介しましたが、いかにフットボール部で知られていないカンザス大もファンたちはこのチームの体たらくには大憤慨。ジンガー氏を追い出す抗議行動も起こっていましたが、それが実際に現実のものになったわけです。
【関連記事】カンザス大のチケット売上が大幅に減少
新ADジェフ・ロング氏
今回新しくカンザス大のADに就任したロング氏はそれまで10年間アーカンソー大の体育局を率いていました。それだけでなく2013年からは初代カレッジフットボールプレーオフ(CFP)選考委員会の委員長も兼任。業界では尊敬を集める腕利きの人物だったのです。
そんな人物がなぜアーカンソー大から解雇されてしまったのか。それもまたジンガー氏と同じようにフットボール部の成績に大いに関係しています。ロング氏は2012年シーズン終了後にBig Tenカンファレンスで堅実な成績を収め続けていたウィスコンシン大のブレット・ビルマ(Bret Bielema)監督を引き抜きます。2010年から3年連続カンファレンスタイトルを獲得していたビルマ監督の才能にロング氏が賭けたことになりますが、当時はビルマ監督がウィスコンシン大を出ることのほうが驚きでした。アーカンソー大が所属するサウスイースタンカンファレンス(SEC)のブランド力に負けたということでしょうか。
しかし残念ながらビルマ監督指揮下のアーカンソー大は彼がウィスコンシン大で残した成績をコピーすることは出来ず、5年間で29勝34敗と惨敗。一向にチームが上向く気配が見られない中、彼を雇用したロング氏を追い出すことで新ADにビルマ紙をを解雇させようという心図もりだったのです。
ADとしての仕事がフットボール部と男子バスケットボール部を強くするということが最重要課題であるのはどの強豪チームも一緒ですが、それだけでなく体育局全体をまとめ上げるだけの器量も必要です。これまでのキャリアや経験からもロング氏がそれを満たしているのは誰の目から見ても明らかでした。
ですからカンザス大がロング氏を新ADに起用したのは懸命な判断だったといえます。
カンザス大フットボール部の命運
とはいえ彼が来たからと行ってカンザス大フットボール部がいきなり強くなるということはありません。しかしロング氏がカンザス大フットボール部にもたらすもの・・・。それは確実に存在します。
つまり現カンザス大監督のべティ氏に残された時間はそう長くはないということです。
後のないベティ監督
ロング氏に立ちはだかる大きな壁には当然ながらフットボール部のオーバーホールが含まれています。この壁をどうやって乗り越えるかを語る時、べティ監督が率いるチームのことを語らないわけにはいかないのです。
「(べティ監督が)とても良い人物であり、常に一生懸命仕事に取り組むコーチであることは承知しています。しかしこのフットボール部はこれまで何も成し遂げることが出来ていないのです。」とロング氏はビーティ監督体制が自ら描くプログラムとは程遠いと暗示しています。
べティ監督をシーズン開始前に解雇するには遅すぎますから、彼に残された時間はあと1シーズンと見るのが妥当でしょう。2018年度に全米を驚かすような結果を残さなければ今年12月に彼のオフィスがカンザス大フットボール部施設に残されているとは思えません。
150万ドル(1ドル100円計算で1億5千万円)のサラリーを受け取るロング監督もカンザス大でフットボール部を強豪チームに再建させるのが簡単なことではないのはわかっているはずです。ただ弱小とされてきたカンザス大も2007年度には12勝1敗という成績を残してBig 12カンファレンスを制した過去もあります。つまり全く不可能というわけではないわけです。
カンザス大の命運は今年べティ監督が奇跡でも起こさない限り、彼の後任を選ぶロング氏の手腕にかかっているといえます。