かつてアーバン大を率い、最近ではアクロン大の監督を7年間務めたテリー・バウデン(Terry Bowden)氏。2018年度シーズンは4勝8敗と冴えず解雇されてしまいしばらく無職でしたが、この度バウデン氏の再就職が決まりました。それは王者・クレムソン大なのですが・・・。
その名字からもピンとくる方がいるかもしれませんが、バウデン氏はフロリダ州立大のレジェンド、ボビー・バウデン(Bobby Bowden)氏の息子さんです。ウエストバージニア大でプレーしたテリー・バウデン氏は父のいるフロリダ州立大で大学院生コーチとして1982年からコーチ業に進みます。その後は10年間は小さな大学でコーチとしての腕を磨き、1993年に名門・アーバン大のヘッドコーチに抜擢されます。
アーバン大での初年度となった1993年は内外を驚かす快進撃を見せ、いきなり11勝0敗の全勝シーズンを飾りました。残念ながらこのシーズンは過去のNCAAルール違反による制裁が課されており、所属するサウスイースタンカンファレンス(SEC)の優勝決定戦やボウルゲームに出場することが禁じられており、当時のシーズン唯一の無敗チームながら優勝争いにも絡むことは出来ませんでしたが、ビッグリーグで華麗なるデビューを果たしました。
アーバン大時代のバウデン氏
翌年の1994年も開幕以来9連勝とし、1993年の11連勝と合わせて20連勝を記録。これはアーバン大部史上最長の連勝記録となり、バウデン氏の株はさらに上がることになります。
1997年にはバウデン氏率いるアーバン大はSEC西地区を制してSEC優勝決定戦へ。東地区代表のテネシー大相手に20対7というリードを奪いながら、対戦相手のQBペイトン・マニング(Payton Manning)に第4Qに逆転を許し、惜しくも敗戦。
この時点まででバウデン氏のアーバン大での戦績は46勝12敗1分けと素晴らしいものでしたが、1998年に事態が変わることになります。リクルーティング上の問題、選手のフィールド外での悪評によってアーバン大上層部との確執が起き、さらに選手の怪我の続出も合って1998年度シーズンは開幕6戦で1勝5敗と大失速。7戦目を前にバウデン氏は監督の座を持することになったのです。
その後はテレビでのカレッジフットボール解説者を10年ほど務めましたが、その間も現場復帰の意志は強く、数々のチームの監督職に興味を示していましたが、彼にそのチャンスが回ってくることはありませんでした。しかし2009年にNCAA2部のノースアラバマ大の監督に就任することで遂に現場復帰。初年度には11勝2敗でカンファレンスタイトルを獲得しプレーオフでも準々決勝まで駒を進めました。3年間のノースアラバマ大での戦績は29勝9敗と全て9勝以上という好成績を残し、それが評価されて2012年にはNCAA1部でFBS(フットボールボウルサブディビジョン)所属のアクロン大監督に就任しました。
アクロン大時代のバウデン氏
アクロン大では最初の3年間負け越し続きで苦戦しましたが、4年目の2015年に8勝5敗をあげると、2017年にはミッドアメリカンカンファレンス(MAC)の東地区を制するなどしましたが、全体的には7年間で35勝52敗と芳しくなく、昨シーズン後に解雇されてしまいました。
[quads id=4]そんなバウデン氏ですが、先日今をときめくクレムソン大のフットボールスタッフとしてコーチ陣に入閣することが分かりました。
ただこれにはキャッチが。数々のチームでの監督経験があるにも関わらず、この度のバウデン氏のクレムソン大での立場は無給のインターン。63歳にして裸一貫からの出直し・・・とでもいいましょうか。
とはいってもクレムソン大に来たのは単にタダ働きをしながらダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督に仕えるためだけではありません。バウデン氏はインターンをしながら、アスレティックリーダーシップの修士号を得るために大学院生となるということです。
クレムソン大としてはバウデン氏の役目が脇役だとしても、これまでの経験をチームにどんな形でも還元してもらえることは大いなる強みとなるでしょう。
ちなみにバウデン氏のお兄さんであるトミー・バウデン(Tommy Bowden)氏は元クレムソン大監督。1999年から2008年までチームを率いたトミー氏は当時まだ現役だった父のボビー氏率いるフロリダ州立大と何年も対戦し、この試合は「バウデンボウル」とも呼ばれていました。2008年シーズン途中で成績不振で解雇され、それを引き継いだのがスウィニー監督ですが、その彼のもとにトミー氏の弟であるテリー氏が入門するというのはなんとも不思議なめぐり合わせです。