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コロナ禍とカレッジフットボール【後編】

コロナ禍とカレッジフットボール【後編】

刻一刻と変わっているコロナ情勢ですが、前回の「中編」記事から数日の間カレッジスポーツ界にも少しずつ朗報が届き始めています。「コロナ禍とカレッジフットボール」最後を締めくくるこの記事ではカレッジスポーツ界の新たな動きとともにここまでの話を総括したいと思います。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

コロナウイルスの影響で世界中で経済が混乱しその規模はコロナ禍が収束した後にも更に尾を引くと言われていますが、アメリカのカレッジスポーツ界でもその波は既に押し寄せています。前回の記事でもご紹介したとおり、大学バスケットボール界の一大イベントである「マーチマッドネス」が中止になったことによる損失は甚大であり、その余波として各大学では軒並みバジェットの面で下方修正を余儀なくされています。

その一環として多くのカレッジフットボールコーチや彼らの長である体育局長らのお給料の一部をカットする大学も出てきています。現在まで筆者が確認している大学を下に紹介します。(発表があった日時順)

  • アイオワ州立大
  • ワイオミング大
  • サウスフロリダ大
  • ルイビル大
  • ワシントン州立大
  • ウェイクフォレスト大
  • ミズーリ大
  • シラキュース大
  • ウエスタンケンタッキー大
  • コロラド大
  • ラトガース大
  • ミネソタ大
  • カンザス大
  • オレゴン大
  • カンザス州立大
  • バージニア大
  • サザンカリフォルニア大
  • ウエスタンミシガン大
  • ウィスコンシン大
  • テキサスクリスチャン大
  • サウスカロライナ大
  • アーカンソー州立大

また大学スポーツを管理するNCAA(全米大学体育協会)の上層部も20%のペイカット。Big 12カンファレンスのコミッショナー、ボブ・ボウルスビー氏は10%のペイカットがある模様。


一筋の光

さて、実際のカレッジフットボール界では来シーズン開幕への希望の一筋の光が見えてきています。

まずNCAAは先週水曜日に6月1日からフットボール(とバスケットボール)選手がキャンパスに戻ってきて自主トレーニングを行ってもいいという決定を下しました。

NCAAは3月中旬から大学のキャンパス内での部活動を禁止してきましたが、それがいよいよ解禁となるわけです。これは自主トレということでコーチ陣から直接指導を受けることは出来ないという条件付きではありますが、これまで自宅という限られた条件下でしたトレーニングを積めなかった選手たちからすれば大きな前進ですし、何よりも今後これから部活動の再開に拍車をかけてくれるような期待感をもたせてくれます。

とはいうものの、この決定が出たからと言ってどの大学でも選手を呼び戻すことができるというわけではありません。それはそれぞれの大学や自治体のルールに則って行われるということで、大学の方針として生徒がキャンパス施設に足を踏み入れることを許可していない場合はNCAAの決定があったとしても選手はキャンパスに戻っては来れないのです。

この決定を受け早速行動に打って出たのは大学スポーツ界の最大手であるサウスイースタンカンファレンス(SEC)。彼らは同日夜に6月8日から自主トレをキャンパスで許可することを投票の末に決定しました。ただここでも最終決定権は各大学に委ねられるということで、しかも自主トレは大学側の厳しい管理・監視下の元で行われることになるということです。

またBig 12カンファレンスも同じように選手がキャンパスで自主トレすることを6月15日から認める決定を下しました。その他の「パワー5」カンファレンスであるBig Tenカンファレンスアトランティックコーストカンファレンス(ACC)、Pac-12カンファレンスも同様の動きが近いうちに見られると予想されています。

春季トレーニングがキャンセルになりそれ以降もまともに筋トレなど出来なかったであろう選手たちにしてみればまさに朗報だといえるでしょう。あるアンケートでは参加総数が45人とサンプルサイズが小さいとは言え実に8割の選手がキャンパスに戻りたいと答えたといいます。

確かにまだ2020年度シーズン開幕に懐疑的な声は聞こえます。例えばミシガン大学長のマーク・シュリッセル氏は「秋学期の授業がキャンパスにて対人形式で行うことが出来ないのであれば大学スポーツを開催することはない」と言っていますし、ミシガン大の永遠のライバルであるオハイオ州立大の体育局長、ジーン・スミス氏はたとえ無観客でシーズンを観光したとしてもそれで選手たちの安全を確保できる保証はない」という旨の発言もしています。

一方でテキサスA&M大ジンボ・フィッシャー(Jimbo Fisher)監督は「全ては予定通りに行われることになるでしょう」と話しています。実際既に新入生である1年生はキャンパスに到着しており、ウイルステストなどを受けているということ。ということは部施設の一部(メディカル部門など)は既に開放されていると推測されます。つまりサポートスタッフは仕事に復帰しているということになりそうです。

またFOXスポーツのカレッジフットボールの顔とも言えるジョエル・クラット(Joel Klatt、元コロラド大)氏は以下のようなツイートを残しています。

これはクラット氏自身の考えであり事実という訳ではありませんが、ここまでの流れを見て2020年度シーズンが現実のものとなると感じている全米のファンは少なくないと思います。

新しい「ノーマル」

今回のNCAAの決定、およびSECやBig 12カンファレンスの追随は緩やかに状況が良くなっているという現状を受けてのものであります。通年なら8月初旬のプレシーズン入りまではキャンパスで「自主トレーニング」と言う名の半強制的セッションが行われるわけで、それと比べるといつもよりは遅めだといっても6月に入ってようやく選手がキャンパスに戻ってこれる目処が立ったのは吉報です。

しかしだからといってシーズンが本当に開幕するかということはまだわかりませんし、この状況下ならば開幕しても今まで通りに行くとは思えません。たとえ開幕前までにコロナウイルスに効果のあるワクチンが開発されたとしても、それを臨床実験を経て世に広まるまでには時間がかかります。それが地につくまではカレッジスポーツだけでなく全てのスポーツイベントや大衆が集まるエンタメイベントで何らかの制限が設けられることになるでしょう。

それが無観客試合なのかもしれませんし、客を入れたとしても総動員数を相当減らして人口密度を最小限に留めるような処置が施されるかもしれません。またスタジアムに入る際にもひょっとしたら何らかのスクリーニングがあるかも知れませんし、チケットブースが撤廃されて全てコンタクトレスのエントリーになるとか、スタジアム内の売店が無くなるとか、トイレに入れる人数に制限が設けられるとか・・・考えるだけでカオスです。

選手たちに至ってもそうです。部施設に入る際に体温チェックなどのスクリーニングが義務付けられたり、ロッカールームに入れる人数が限られたり、怪我の治療を受ける方法が変わったり、チームミーティングやポジションミーティングがバーチャルになったりするかもしれません。

また練習中でもコーチはマスクをしなければならなくなるかも知れないし、練習中に使用するタオルや水分補給用のボトルもシェアするようなことはできなくなるかも知れない。そのような自体に陥ったとき、当然マスクや殺菌剤、タオル、体温計、除菌用グローブなどこれまで以上の物資が必要になるでしょうし、それを管理する人的リソースの確保の問題も出てくるでしょう。そうなれば必然的に資金が潤沢なチームとそうでないチームとの差は出てしまいます。

コロナとどう付き合うか

NCAAのプレジデントであるマーク・エマート氏は「学生アスリートがコロナウイルスに感染するのは時間の問題だ」と正直に話しています。だからこそそうなったときに迅速に対処できるシステムの構築が必要なのだと。

日本では非常事態宣言が解除され緩やかながら通常生活を取り戻す流れが出来始めているようです。アメリカでも場所によって異なりますが遅かれ早かれ現在のようなロックダウンが解除される日が来るでしょう。しかしだからといってそれがコロナウイルスを完全撲滅した日になるとは到底思えません。

ひょっとしたら今後コロナ禍以前のような生活は戻ってこないのかも知れません。少なくとも以前マスク装着は不必要だと言われ続けてきたアメリカでは今後マスクが日常必需品となることは目に見えています。そういった意味で今後私達は「新しい普段の生活」を経てコロナウイルスと共存していかなければならなくなるのでしょう。

カレッジスポーツだけに限って言えばそれがどんな世界となるのか?開幕したとしてもその後に選手の中で感染者が出たとすればそれで一気にシーズンが中断されてしまうという図も容易に想像できます。エマート氏も言うとおりアスリートが感染してしまうことは予防することは困難だとするならば、今季開幕は無謀な賭けなのか?

いろんな理由で開幕を急ぎたい連中もいます。一方でコロナの拡大をどんな手を使ってでも食い止めたいとする連中もいます。これから2ヶ月の間、倫理と利益の間で頭を悩ませる方々が出てくることでしょうね。我々はその行く末を見守るしかなさそうです。

今後も当サイトでは刻一刻と変わるカレッジフットボール情勢をお伝えしていきたいと思います。

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