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鬼の居ぬ間に・・・

鬼の居ぬ間に・・・

選手のトランスファー(転校)のニュース、そしてコーチたちの鞍替えのニュースはこのサイトで紹介しきれないほど頻繁に起きています。そんな中でも特に目を引くのがアラバマ大のコーチ陣の出入りの激しさです。

アラバマ大はニック・セイバン(Nick Saban)監督指揮下で13年目に入ろうとしていますが、彼はこの間5回もナショナルチャンピオンに輝いています。セイバン監督にとってアラバマ大で初めて全米制覇を成し遂げたのが2009年であることを考えれば、過去10年間の間に5度もタイトルを獲得していることになり、単純計算で2年に一回はアラバマ大が全米の頂点に立っていることになります。これは物凄いことです。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

ルイジアナ州立大時代の2003年にもナショナルタイトルを獲っていますので、セイバン監督は通算6度も全米制覇を成し遂げました。これは同じアラバマ大で過去に監督を務めたレジェンドであるポール・「ベアー」・ブライアント(Paul “Bear” Bryant)元監督が持っている歴代最多勝利数に並んでいることになります。昨シーズンはブライアント元監督を越えて単独最多勝利監督に躍り出るチャンスがありましたが、決勝戦でクレムソン大に敗れその栄冠はお預けとなりました。

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現役監督としてだけでなく歴代の監督を全て含めても最高で最強の監督と名高いセイバン監督ですが、彼は積極的に他チームで解雇された元監督を自らのアシスタントやアナリストとして呼び寄せることでも有名です。これまでチームにはレーン・キフィン(Lane Kiffin、元サザンカリフォルニア大、現フロリダアトランティック大)氏、マリオ・クリストーバル(Mario Cristobal、元フロリダインターナショナル大、現オレゴン大)氏、スティーヴ・サーキジアン(Steve Sarkisian、元サザンカリフォルニア大→元アトランタファルコンズOC)氏、ブッチ・ジョーンズ(Butch Jones、元テネシー大、現アラバマ大アナリスト)氏などが在籍。才能ある人物を積極的に起用してきました。

また彼の下でアシスタントを務めてきた人物たちが別のチームで監督に育ったと言うケースも多いです。例えばマーク・ダントニオ(Mark Dantonio、ミシガン州立大)監督、ジンボ・フィッシャー(Jimbo Fisher、現テキサスA&M大)監督、ウィル・ムスチャンプ(Will Muschamp、現サウスカロライナ大)監督、 カービー・スマート(Kirby Smart、現ジョージア大)監督、ジェレミー・プルイット(Jeremy Pruitt、現テネシー大)監督などなど・・・。よく見てみればサウスイースタンカンファレンス(SEC)の約1/3のチームの監督がセイバン監督に師事したことがある人物という・・・。

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セイバン監督(左)と当時OCだったスマート氏

このようにセイバン監督が実力のある監督レベルのコーチを呼び寄せ、そして彼のもとで育ったアシスタントが監督として巣立っていくというサイクルを何年も続けてきたわけです。そうなると当然コーチ陣の顔ぶれは毎年変わっていきますが、過去4年間でセイバン監督は実に18人ものアシスタントコーチを失っています。その比較としてクレムソン大を挙げると、彼らは同じ4年間で失ったアシスタントコーチの数はたったの2人。ハイプロファイルのコーチを抱えるのと引き換えに、セイバン監督のコーチ陣は安定性を欠いています。

そしてこの激しいサイクルに拍車をかけている理由として、コーチたちがセイバン監督の帝王学を学びに来ているだけだという姿勢と、実際にスタッフになってみてその要求の高さに音を上げてチームを去っていく人たちも少なからずいるからなのではないかと、勝手に推測してしまいます。前述のキフィン監督もオフェンシブコーディネーターとしてチームに帯同していた時、スタッフミーティングの長さ、そして始まる時間の早さに文句を言っていたぐらいです。

そして極めつけはサイドラインで公共の面前で怒鳴られることです。キフィン監督が試合中にメチャクチャ怒られていたことは記憶に新しいところですが、それが嫌になってアラバマ大を出て行くコーチがいたとしても驚きはしないことです。

そんなこんなで今年もシーズン後にまた5人のコーチが去ったことが分かっています。オフェンシブコーディネーターのマイク・ロックスリー(Mike Locksley、メリーランド大監督)氏、ディフェンシブコーディネーターのトシュ・ルポイ(Tosh Lupoi、クリーブランドブラウンズ)氏、WRコーチのジョシュ・ガティス(Josh Gattis、ミシガン大オフェンシブコーディネーター)氏、OLコーチのブレント・キー(Brent Key、ジョージア工科大OLコーチ)氏、そしてQBコーチだったダン・イーノス(Dan Enos)氏です。

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QBトゥア・タガヴァイロアとイーノス氏

ご覧の通り2年連続で攻守コーディネーターを一新しなければならなくなったセイバン監督ですが、シーズン中にロックスリー氏がメリーランド大の新監督に就任することは分かっていました。そこでセイバン監督はその後釜にQBコーチのイーノス氏を昇格させるつもりでした。・・・が。

イーノス氏はなんとマイアミ大の新OCに就任することが明らかになったのです。

この異動にはいささか合点がいきませんでした。イーノス氏は既にOC昇格が当確だったわけで、それを蹴ってマイアミ大の同じポジションにつくというのは不可解でした。マイアミ大は当然ブランド力のあるチームではありますが、チームの強さで言えばどちらのほうが上なのかは明白です。もちろんコーチそれぞれ目指すものや哲学がありますから、それは我々の知る由もありませんが・・・。

 

しかしこのイーノス氏の移籍に関して面白い裏話が。

なんとイーノス氏がマイアミ大のOCに就任したことをセイバン監督は知らなかったのだそうです。

それはクレムソン大とのナショナルタイトル戦が終わってから数日後の1月11日。スタッフミーティングに現れたセイバン監督が席につきスタッフの顔を見渡して放った一言。

「ダン(イーノス氏)はどこだ?!(怒)

イーノス氏のオフィスをチェックしに行ったアシスタントコーチがそこで見たものはもぬけの殻となったイーノス氏の部屋でした。そしてひょっとしたら既にオフィスをロックスリー氏が居たオフィスに移したのではないかとそこをチェックするもイーノス氏の姿は見えず。

それもそのはず、イーノス氏は3時間後に発表されるマイアミ大新OC就任のためにタスカルーサ市をすでに去っていたのです。どうやら前日夜な夜な戻ってきてオフィスから私物を全て片付けたとこの事。アシスタントコーチの中にはそのことを知っていた人物も居たようですが、流石にそんなニュースをセイバン監督に伝える役にはなりたくなかったでしょうね。

そんなだまし討ちを食らったセイバン監督はこのことに関してまだコメントを残していませんが、おそらくそのうち定例記者会見か何かの場で真実を語る日が来るかもしれません。

そして当のイーノス氏ですが、この報道に対して反論するツイートを残しました。

私は雇用主に辞めることを伝えずに職場を去るようなことは絶対にしません。バックレたわけでもありません。CNS(コーチ・ニック・セイバン)そしてアラバマ大にはリスペクト以外の気持ちはありません。とどのつまり、これはビジネスであり、私にとっては(アラバマ大を)去る時が来たということです。RTR(ロール・タイド・ロール、アラバマ大の合言葉)、CNS、そしてプログラムに幸運がありますように。

つまり自分はしっかりと辞めることを伝えてチームを去ったということですね。だとするとセイバン監督が知らなかったという当初の報道がデマだった可能性がありますが、複数の情報筋がセイバン監督は本当にミーティングにイーノス氏が表れなかったときまで何も知らなかったと言っています。

しかしよくツイートを見ると、辞めることを伝えた相手が「Them」となっています。これはひょっとしたら大学の関係者、特に人事部の人間には伝えたということなのかもしれません。「Him」ではないと。もちろんこの「Him」とはセイバン監督のことです。契約している以上勝手に出ていくことは出来ませんから、何らかの方法で大学側には辞めることを伝えてはいたとかそういうことなのかも・・・。

まあ真相はまだ分かりませんが、もしこれが本当の話だったら面白いですよね。コーチ界隈などは広いようで狭いですからイーノス氏がセイバン監督に鉢合うことだってあるでしょうし。まあ既に二人で話し合って決着はついているかもしれませんが。

ちなみにイーノス氏がなるはずだったOCには今のところ前述のサーキジアン氏が復帰(アトランタファルコンズのOCをクビになったため)、そしてOLコーチには元ラトガース大監督で昨年までサーキジアン氏とともにファルコンズでコーチングをしていたカイル・フラッド(Kyle Flood)氏、さらにかつてアラバマ大でコーチ歴があり、昨年までフロリダ大のDLコーチをしていたサル・サンセリ(Sal Sunseri)氏が同じく古巣に復帰する予定だとか。

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