オハイオ州にあるボーリンググリーン州立大の元選手が在学中に複数回の脳震とうを負い、結果脳に深刻なダメージを受けたとして大学側を訴えていましたが、この度ホーリンググリーン州立大がこの元選手に71万ドル(1ドル100円計算で約7100万円)の賠償金を支払うことで合意しました。
脳震とうを誤診
訴えた内容としては大学のスタッフがこの選手が脳震とうの症状を報告したにもかかわらず練習を続行させたとしています。2010年に3度の脳震とうを負ったとしていますが、自分の名前を思い出せなかったり、自分が停めた車の場所が分からなくなったり、また非常に深刻な頭痛の症状があったにもかかわらずちゃんとした診察や適切な治療を受けないまま、練習に戻されたと言っているそうです。
ちなみにこのケースが起きた当時のヘッドコーチは現在ウェイクフォレスト大のヘッドコーチであるデーブ・クラウソン(Dave Clawson)氏でした。
ボーリンググリーン州立大は自分たちはこの元選手を傷つけるようなことは何一つしなかったと主張していますが、このままこの訴訟が長引くのを懸念して賠償金で和解する道を選んだのでした。この和解により元選手は今後大学側に新たな訴訟などは起こさないと言う条件を受け入れたと言うことです。
脳震とうの脅威
脳震とうの研究で有名なボストン大医学部のロバート・カントゥ(Dr. Robert Cantu)医師がこの元選手を診察した結果、適切な処置を当時施されなかったため彼の脳に永久的なダメージが起きたという結論に至りました。またピッツバーグ大医学部の脳震とう研究所のマイケル・コリンズ(Dr. Michael Collins)医師も元選手を診察し、彼の認識能力は平均を大きく下回ったというテスト結果が出たことがわかりました。
この選手は2010年に3度目の脳震とうを負った後引退を余儀なくされ、またその後も脳震とうの症状に悩まされたことと、スポーツ奨学金を授与されなくなったことにより大学を退学しなければならなくなりました。現在も鬱の症状や偏頭痛、不安定な精神状態、不眠症などの症状を引きずっているそうです。
アメリカは何でもかんでも裁判沙汰になるのでこのようなニュースは目新しいものではないのですが、このサイトでも扱っているように脳震とうは現在頻繁に話題に挙げられるほど重要な案件です。特に脳震とうが及ぼす長期的な影響が解明されつつあり、脳震とうに対するアプローチの仕方が変わりつつあります。いくつかのルール改正もこの脳震とうを予防する為になされたものもあり、今後さらにフットボールと脳震とうは切っても切れない間柄になっていくでしょう。またこの元選手のように所属チームを訴えるようなケースが増えるかもしれません。