かつては常にトップ10に顔を連ねていたテネシー大。しかし最近はその形を潜め、昨年こそ開幕前には高評価を得ましたが、その期待に応えることはできませんでした。
フルマー元監督のレガシー
テネシー大が苦戦を強いられているのは名将フィリップ・フルマー(Phillip Fulmer)氏が引退に追い込まれた2008年後からです。フルマー氏は生え抜きの選手・コーチとして長きに渡りテネシー大に従事してきた人物。1992年にヘッドコーチに昇格して以来チームを去ることになった2008年まで一貫して「テネシー愛」を貫き、通算152勝52敗という好成績を残しました。
1998年には初代BCSナショナルチャンピオンにも輝き、名実ともにトップコーチの仲間入りを果たしました。その後はナショナルタイトル・SECタイトルを獲得することはありませんでしたが、2001、2003、2004、2007年に東地区のディビジョンタイトルをゲット。その存在感を見せつけていました。ただ、2008年には5勝7敗と振るわずそのシーズン後に引退に追い込まれたのです。
後年はかつてのような絶対的に強いテネシー大を作り上げることはかないませんでしたが、近代のテネシー大を全米のトップレベルに押し上げた彼の手腕は疑う余地はありません。152勝というテネシー大での勝利数は同大学でレジェンドであるロバート・ネイランド(Robert Neyland、1926年-1952年)氏の173勝に次ぐ第2位の数字なのですから。
苦戦続きのテネシー大
一方2008年にフルマー氏を「追い出した」テネシー大はというとそこから鳴かず飛ばず。彼の後継者に選ばれたレーン・キフィン(Lane Kiffin、現ミシシッピ大監督)氏は1年でテネシー大を去り(サザンカリフォルニア大監督に就任)、2010年から2012年チームを率いたデレック・ドゥーリー(Derek Dooley、現ニューヨークジャイアンツアナリスト)氏は3年間で15勝21敗、そして2013年からは現在までブッチ・ジョーンズ(Butch Jones、現アーカンソー州立大監督)監督がチームを指揮していますが30勝21敗ということでいずれのコーチもフルマー氏が残したインパクトには遠く及ばない状況です(もちろん在位年数は比べられませんが)。
そんなテネシー大ですが、昨夏に体育局長のデイヴ・ハート氏が今年春限りで退職することを表明。そして同大学はその後釜探しをしていたのですが、そのポジション候補に当初挙げられていたのがフルマー氏でした。
2012年には殿堂入りも果たし、テネシー大一筋でやってきたフルマー氏を体育局の長として迎えるのは、たとえ大学側が彼に引退を迫ったという事実があったとしても、自然な流れだと誰しもが思いました。
しかしテネシー大学側は別の考えがあったようで、2月末にカンザス州立大で体育局長をしていたジョン・カリー氏に白羽の矢を立てたのです。
カリー氏は元々テネシー大の卒業生であり、かつてはテネシー大の体育局でも働いたことがある人物ということで、適材適所であることは理解できます。しかしフルマー氏が1月の時点で最有力候補だと噂されていたことを考えると、この決断に驚きを隠せません。
ハインズワース氏の叫び
そう思っているのは何も私だけではないようで、特にフルマー氏に師事した元選手たちはかなり怒っているみたいです。1999年から2001年までテネシー大で活躍し、その後もNFLで2度のプロボウルにも選出されるなどしたDLアルバート・ハインズワース(Albert Haynesworth)氏もそのうちの一人です。
ハインズワース氏は自身のツイッターで以下のようなツイートを載せました。
WAKE UP UT LEADERS!!!!! Since you unjustly fired him UT Athletics hasn’t done a damn thing except for the late great Pat Summit’s era!!! pic.twitter.com/GbuTbTaC4g
— Albert Haynesworth (@haynesworthiii) March 1, 2017
(本文訳:一体いつになったらテネシー大はチームを全米の桧舞台に押し上げてくれた男(=フルマー氏)への無礼をやめるんだ???フルマー監督は自分にオレンジ色(テネシー大のスクールカラー)の血が流れているくらい(=テネシー大を愛している)というのに、今回の体育局長の話(フルマー氏に白羽の矢が立たなかったこと)で彼の血は怒りの褐色になっていることでしょう!!私はテネシー大がSECで鳴かず飛ばずであることにもううんざりしてるのです。フルマー監督ならテネシー大をまた偉大なるチームにしてくれるはずなのに!!!!!!)
(ツイッターコメント訳:テネシー大のトップたち、目を覚ませ!!!!! 彼(フルマー氏)を理由もなく解雇して以来、唯一成功したのは(昨年6月に亡くなった女子バスケ部元監督の)パット・サミット監督ぐらいで、あとはテネシー大の体育局は何一つ成し遂げることが出来ていないじゃないか‼︎!)
ハインズワース氏はカリー氏のことをとやかくは言っていませんが、フルマー氏のリーダーシップの下ならばかつて自分が在籍していた時のような強いテネシー大を蘇らせてくれると信じていたのでしょう。
ただ監督業と体育局長としての仕事は必ずしも相容れるものではありませんから、フルマー氏が体育局長として経験上相応しいいのかというのは分かりません。が、オレゴン大のマイク・ベロッティ(Mike Bellotti)氏、ネブラスカ大の氏トム・オズボーン(Tom Osborne)、ウィスコンシン大のバリー・アルバレズ(Barry Alvarez)氏など元フットボール部監督が体育局を率いるというケースはいくらでもあります。フルマー氏の話は確かに噂でしかありませんでしたが、ひょっとしたら大学側とフルマー氏との間に何か亀裂でも入っているのでしょうか。