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CFP全米王座決定戦レビュー【2025年度】

CFP全米王座決定戦レビュー【2025年度】

#1 インディアナ大 27、#10 マイアミ大 21

2026年1月19日、フロリダ州マイアミに構えるハードロックスタジアムにて、カレッジフットボール史に残る歴史的一戦が繰り広げられました。この試合で第1シードのインディアナ大が第10シードのマイアミ大を27対21で破り、同大学史上初となるナショナルチャンピオンシップの称号を手にしたのです。

かつて「NCAA史上最多敗戦数」という不名誉な記録を持っていたインディアナ大が、カート・シグネッティ(Curt Cignetti)監督のもとで16勝0敗という完璧なシーズンを完遂したことは、長いカレッジフットボールの歴史を振り返っても類を見ないほどのリビルドであることは間違いありません。

今回は激戦となった頂上決戦を振り返ります。

試合経過

第1クォーター

第1Qは、両チームの強力なディフェンスが激突し、非常にフィジカルでロースコアな展開となりました,。

試合の方はコイントスで勝ったインディアナ大が後半最初の攻撃権を選択したため、マイアミ大の攻撃で試合が始まりました。マイアミ大は期待の新人WRマラカイ・トニー(Malachi Toney)へのパスで1stダウンを1度更新しましたが、その後はインディアナ大守備陣に阻まれパントに終わります。

インディアナ大も最初のシリーズで1stダウンを1回更新したものの、自陣深くから抜け出せずパントを選択。その後、インディアナ大のLBエイデン・フィッシャー(Aiden Fisher)がマイアミ大QBカーソン・ベック(Carson Beck)をサックするなどして、再び3アンドアウトに追い込みます。

一方マイアミ大の強力なDL陣は、インディアナ大QBフェルナンド・メンドーサ(Fernando Mendoza)に激しいプレッシャーをかけ続け、彼がリズムに乗らないようアグレッシブに仕掛けていきます。その影響もあり、直近2試合で見せ続けてきたような効果的なパスプレーがあまり見られませんでした。

そんなメンドーサでしたが、マイアミ大ディフェンスのラッシュをかわすためにショートパスを多用する戦略に切り替えます。そしてメンドーサからオマー・クーパー・Jr(Omar Cooper Jr.)への25ヤードのパスが決まり、一気にマイアミ陣内へ攻め込みます。

その後のプレーで、メンドーサがRBにハンドオフした直後、マイアミ大のDBジャコビ・トーマス(Jakobe Thomas)が彼の顎付近に激しいタックルを喰らわせ、これによりメンドーサは唇を切り流血。ターゲッティングの反則もあり得たかもしれませんが、審判のイエローフラッグは出ず、シグネッティ監督が激しく抗議する場面もありました。

結局このドライブはエンドゾーン内でのパス失敗によりTD獲得までには至りませんでしたが、Kニコラス・ラディチック(Nico Radicic)が34ヤードのFGを成功させ、インディアナが3対0と先制します。

マイアミ大の攻撃は1プレーあたり平均1.6ヤードに抑えられ、1stダウン更新はわずか1回。QBベックのパスは6本中2本成功(9ヤード)と、インディアナ大のディフェンスに完全に沈黙させられてしまいました。

第2クォーター

第1Qを3対0で終えたインディアナ大は、第2Qで試合の主導権を決定づける見事なドライブを見せました。

自陣43ヤード付近で3rdダウン13ヤードという窮地に立たされたインディアナ大に対し、マイアミ大のスターDEルーベン・ベイン・Jr(Rueben Bain Jr.)がオフサイドの反則を犯し、これによりフリープレーを得たメンドーサのパスは失敗に終わりましたが、やり直しとなった3rdダウンプレーでインディアナ大が1stダウンを更新しドライブが継続。

このチャンスを活かし、RBのカエロン・ブラック(Kaelon Black)が3rdダウンという状況ながら中央を突破する20ヤードのランを決め、一気に敵陣深くへ侵入します。

そしてこのドライブの仕上げは、TEライリー・ノワコウスキー(Riley Nowakowski)によるゴール前1ヤードからのフルバックのような力強いエンドゾーンへのダイブ。これでインディアナ大が10対0とリードを広げました。このドライブは14プレー、85ヤードに及び、6分28秒というかなりの時間を費やす結果となり、試合の流れをインディアナ大に引き寄せることに成功します。

一方のマイアミ大オフェンスは、この第2Qの大部分で完全に沈黙。第1Qから数えて4回連続の3アンドアウトを喫し、一時は最初の22分間でファーストダウンを1回しか更新できないほど停滞してしまいます。

この流れをなんとか打開したいと考えたマリオ・クリストバル(Mario Cristobal)監督は、自陣34ヤードというリスクのある位置で4thダウン1ヤードからのギャンブルを敢行。これをRBマーク・フレッチャー・Jr(Mark Fletcher Jr.)がわずか数センチの差で更新に成功し、ようやく攻撃の火が着きます。

そしてマイアミ大はQBベックがWRトニーへの25ヤードパスを通し、敵陣32ヤード付近まで前進しようやくインディアナ大陣内へ攻め込み得点のチャンスを掴みます。しかし、4thダウン2ヤードの場面でクリストバル監督は強気な姿勢を崩し、Kカーター・デービス(Carter Davis)を送り出しましたが、放たれた50ヤードのFGは無情にも右のゴールポストを直撃し、失敗に終わってしまいます。

結局インディアナ大が10対0のリードを保ったままハーフタイムを迎えました。スタッツ面でもインディアナ大がマイアミ大を総獲得ヤードで169ヤード対69ヤードと圧倒。完全に試合のテンポを牛耳っていました。

第3クォーター

後半開始直後、それまで沈黙していたマイアミ大の攻撃陣がついに目を覚まします。

第3Q開始早々の11分06秒、QBベックからのハンドオフを受けたRBフレッチャー・Jr.が右サイドから抜け出し、そのまま独走の57ヤードのランTDを決めました。これによりスコアは10対7となり、マイアミが一気に3点差まで詰め寄りましたが、何よりもこの時点までマイアミ大は得点の雰囲気すら醸し出すことができなかったため、このフレッチャーの起死回生のプレーで会場のマイアミ大ファンのボルテージは最高潮に達しました。

一方、さらにプレッシャーの度合いを増してきたマイアミ大のフロントセブンの前に、インディアナ大のオフェンスは停滞の時間を迎えます。彼らは第3Qを通じて14プレーでわずか11ヤード(1プレー平均0.8ヤード)しか獲得できませんでした。それもこれも、マイアミ大のベイン・Jrやアキーム・メシドー(Akheem Mesidor)らによる激しいパスラッシュの影響であり、メンドーサはこのQだけで3つのサックを喰らってしまいます。

インディアナ大の攻撃が停滞し、モメンタムがマイアミ大へと流れるかと思われた中、試合の流れを変えるスペシャルチームの好プレーが飛び出します。自陣深く(7ヤードライン)に追い込まれたマイアミ大はパントを余儀なくされますが、インディアナ大のDLミカイル・カマラ(Mikail Kamara)が猛烈なスピードで大外から駆け上がりこのパントをブロック。そしてこのルースボールをLBアイゼア・ジョーンズ(Isaiah Jones)がエンドゾーン内でリカバーし、スペシャルチームによるTDが生まれたのです。

実はこれはCFP史上初となる、ブロックパントからのリターンTD。これにより、インディアナ大はオフェンスが停滞しほとんど前進できなかったにもかかわらず、スペシャルチームの奮闘により17対7と再び2ポゼ差にリードを広げました。

しかし、リードを広げられたマイアミでしたが、落ち着きを取り戻したベックが第3Q終盤に魅せます。自陣19ヤードから攻撃を開始したマイアミ大は、ベックからCJ・ダニエルズ(C.J. Daniels)への24ヤードパスなどで着実に前進します。ベックはさらにトニーへの22ヤードのパスを通し、相手陣内12ヤードラインまで攻め込んだところで第3Qが終了しました。

第3Qはマイアミ大が攻勢を見せ、インディアナ大のパントブロックからのTDというスペシャルチームによる得点がなければ、マイアミが完全に逆転していた可能性が高かったという、非常に緊迫した15分間でした。

第4Qクォーター

第3Q終盤からのドライブを継続していたマイアミ大は、第4Q開始直後に点差を縮めます。

相手陣内3ヤードラインで3rd&1ヤードという状況を迎えたマイアミ大は、ボールをRBフレッチャー・Jrに託し、その期待に応えるようにフレッチャー・Jrが3ヤードのTDランを決め、17対14と再び点差を3点に縮めます。

緊迫した展開となりますが、未だリードするインディアナ大は続くドライブで敵陣37ヤードまで進むも、4thダウン残り5ヤードという局面に立たされます。ここでシグネッティ監督は強気に4thダウンギャンブルを選択。失敗すれば一気に流れがマイアミ大へ流れていきそうな状況でしたが、ここでメンドーサがチャーリー・ベッカー(Chalie Becker)へ19ヤードの見事なバックショルダーパスを通し、攻撃を継続させます。

そして、この試合最大のハイライトは、残り9分18秒に訪れました。

インディアナ大は敵陣12ヤードで4thダウン残り4ヤードとなり、当初はFGユニットを送り出そうとしたシグネッティ監督はここでタイムアウトをコール。そしてタイムアウト後にFGユニットを引っ込めてオフェンスチームをフィールドに再度送り込み、再び4thダウンギャンブルを選択。

既に敵陣奥深くまで攻め込んでおり、たとえコンバートできなくてもディフェンスに運命を委ねるということでこの強気の采配に出たシグネッティ監督。そしてこの状況でコールされたプレーがなんとQBドロー。4人から6人のタックラーを弾き飛ばしながら決死のランを見せたメンドーサは1stダウンマーカーを超えるとさらに前進し続け、最後は身を挺してエンドゾーンへダイブ。このハイズマントロフィーを獲得したメンドーサによる、不屈の豪快なランTDによりインディアナ大は24対14とリードを再び10点に広げたのです。

観ている者全てを突き動かしたメンドーサのTDにより、点差を広げられてしまったマイアミ大でしたが、わずか2分34秒で91ヤードをドライブする猛反撃を見せます。その立役者となったのがエースWRトニー。ジェットスウィープ気味に左から流れてきたトニーにベックがボールをトスすると、そのままスピードに乗ったトニーが味方のブロックに守られながらスルスルと相手を交わし、最後はスピンムーブの末に22ヤードのTDプレーを完墜。スタジアム中を飲み込んだメンドーサの劇的TDによる諦めムードを一掃するプレーでマイアミ大が三度3点さに迫りました。

試合の残り時間が約6分半となり、ここからのドライブ如何で試合が決まりそうな雰囲気が漂っていましたが、インディアナ大は続くドライブで冷静にゲームクロックを削っていきます。メンドーサはWRイライジャ・サラット(Elijah Sarratt)やベッカーへ次々とパスを通しマイアミ大エンドゾーンを目指します。さらにレッドゾーン付近までたどり着くと時間を削るためにランを多用。その度にマイアミ大はタイムアウトを消費して迎えた残り1分56秒。マイアミ大陣内14ヤードまで進撃したインディアナ大はここで1stダウンを取ってしまえば事実上試合終了という場面を迎えます。

この2nd&1ヤードという絶好のシチュエーションでなんとオールアメリカンのOLカーター・スミス(Carter Smith)が痛恨のフォルススタート。これで5ヤード罰退となり、結局このせいで1stダウンを奪うことができず、最後はラディチックが33ヤードのFGを成功させて、残り1分42秒で27対21としました。

インディアナ大がFGに甘んじたことで6点差となり、マイアミ大はTDさえ奪えば逆転というまたとないチャンスが生まれます。残り時間は1分42秒。今年カレッジ生活6年目のベテランQBベックにその希望全てが託されることになりました。

早いテンポで敵陣を目指すマイアミはインディアナ大陣内41ヤードまで攻め込みます。しかし残り51秒、ドロップバックしたベックは左方向に流れたキーラン・マリオン(Keelan Marion)目指してロングトスを狙いますが、これがアンダースローとなり、すかさずジャマリ・シャープ(Jamari Sharpe)が値千金のインターセプト。

実はこのシャープ、マイアミ市出身選手で地元の大学であるマイアミ大に入部を希望していたにも関わらず、スカラシップ(スポーツ奨学金)を提示してもらえなかったという過去をもつ選手。そんな彼が地元マイアミで自分を拒否したチーム相手に自らの手で鉄槌を下すインターセプトを決めるというなんとも因果な巡り合わせ。

というわけで、最後の最後までもつれた激戦を制したのはインディアナ大。開幕前は誰もが予想すらしなかった彼らの快進撃は、今後カレッジフットボールの世界で後世まで語り継がれるほどの偉業となり、激動の2025年度シーズンは幕を下ろしたのでした。

勝因と敗因

インディアナ大の勝因

4thダウンギャンブル

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点差が10点以上離れることがなかった僅差の展開となったこの試合において、TDを狙うかそれともFGを狙うかというのは試合の流れを大きく左右する決断です。場合によっては4thダウンのシチュエーションでもコンバージョンを狙う「賭け」に出ることもあるでしょう。

インディアナ大のシグネッティ監督はこの試合で「4thダウンギャンブル」を2度トライしました。

まず一つ目は第4Q残り時間約11分、相手陣内37ヤード地点で迎えた4th&5ヤード。17対14の3点差のリードを守っていた場面でしたが、マイアミ大が2つ連続でTDを奪ったことでモメンタムが相手に流れかけていた状況。だからどうしても追加点を奪ってその流れを断ち切りたかったわけです。ここで4thダウントライをコンバートできなければマイアミ大に逆転のチャンスを与えかねないという中で打って出たギャンブルがこのシーン。

ここでメンドーサからのパスを体制を崩しながらもベッカーが見事にキャッチ。ピンチを凌いでドライブを継続するのに成功したという場面です。

そしてもう一つのギャンブルは、同じドライブでの敵陣12ヤードでの4th&4ヤードというシーン。一度はFGを送り込もうとしますが、シグネッティ監督はここでタイムアウトをとります。実際のところはというと、FGユニットを送り込むのに手間取り、ディレイオブゲームの反則を回避するためにタイムアウトをとったというのが本当のところのようですが、このタイムアウトの間にシグネッティ監督はFGではなく「Go for it」のギャンブルに打って出ます。

そして生まれたのが前述のメンドーサの歴史に残るQBドローからのTDランとなった訳です。

4thダウンギャンブルは成功すれば英断ともてはやされ、失敗すれば愚策と罵られる、諸刃の剣でもあります。しかもそれを全米王座決定戦という大舞台で繰り出すというのはなかなかできた事ではないでしょう。この恐れを知らないシグネッティ監督の采配が結果的にインディアナ大の追加点に繋がったとも言えるわけです。

スペシャルチームのスペシャルプレー

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オフェンスが停滞していた第3Qに繰り出された、カマラの猛烈なプレッシャーによって現実のものとなったパントブロック、そしてそれをジョーンズがエンドゾーンでリカバーしてTDを記録した一連の流れもインディアナ大の勝利に貢献していると言えます。

このプレーは、マイアミ大RBフレッチャー・Jrが後半開始時に57ヤードのTDランを決めて勢いがマイアミに乗りかかっていた矢先のプレーであり、相手の反撃ムードを黙らせたという点でも重要ですが、結果的にファイナルスコアが6点差だったことを考えると、このパントブロックからの7点がなかったら、ひょっとしたらマイアミ大にリードを奪われていたかもしれな勝った訳です。

前後の流れで試合の状況は変わりますから、「このパントブロックがなかったら試合の結果は絶対に変わっていた」とは言えませんが、僅差のぶつかり合いの中でオフェンス・ディフェンスだけでなくスペシャルチームの働きが試合結果に影響したかもしれないと考えるだけでも、このユニットの重要さが浮かび上がってくるわけです。

DLの圧倒的なパフォーマンス

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全米3位のサック数を誇るインディアナ大のDL陣が全米屈指のパスプロ能力を誇るマイアミ大のOL陣を圧倒できた理由は、単なるフィジカルな強さだけでなく、巧妙な戦術的バリエーションとラインマン同士が交差する「スタント」を駆使してマイアミ大の巨漢ベテランOLとQBベックを混乱させることに成功したことが挙げられます。

しかもマイアミ大のOL陣のサイズの平均が身長6フィート5インチ(約195センチ)以上、体重325パウンド(約147キロ)に対し、インディアナ大のDL陣のサイズは身長平均6フィート3インチ(約190センチ)、体重270パウンド(約122キロ)と大きく差をつけられているにもかかわらず、相手の大きな壁を崩すことができたのは圧巻。

スピードとパワー、そして多彩な独自のプレッシャーパッケージを多用し、複雑な動きによりマイアミ大が得意とする素早いパスのファーストリードのオプションを奪い、ベックにセカンドオプション、サードオプションに頼らざるを得ない状況を作り上げ、その結果ベックをポケット内に閉じ込めることに成功。その結果彼らの攻撃のテンポは序盤から崩れ、前半だけで許したオフェンスヤードはたったの69ヤードにとどまりました。

また第1Qから第2Qにかけて、マイアミ大オフェンスを4回連続の3アンドアウトに追い込み、相手OL陣にリズムを掴む隙を与えませんでした。

その中でも特にカマラのパフォーマンスは圧倒的でした。彼はエッジからの鋭いラッシュでベックに何度もプレッシャーをかけ続け、試合を通してマイアミ大OLのパスプロの脅威となりました。

しかも彼の活躍は守備だけにとどまりませんでした。第3Qにはマイアミ大のパントプロテクションを突き破ってパントブロックを成功させ、そのままリカバーTDに繋げるという歴史的なビッグプレーを生みました(前述)。

そして試合の最終局面にてマイアミ大が逆転を狙ったドライブでも、DL陣のプレッシャーが決定的な役割を果たしました。試合を通じてかけ続けたプレッシャーがベックの判断を鈍らせ、最終的にシャープによる決勝のインターセプトを導き出したと考えれば、インディアナ大DL陣が勝利に大いに貢献したと言えそうです。

メンドーサのハイズマンモーメント

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そしてやはり語らずにいられないのが、スタッツには現れないメンドーサの勝負強さです。

この日のメンドーサのスタッツは27回中16回パス成功(成功率約60%)に186ヤード、0TD。ランでもサックを含めるとマイナス8ヤードとシーズン中並びに直近2試合(アラバマ大、オレゴン大)と比べれば、彼のベストゲームとは程遠い数字しか残せませんでした。

しかし、オフェンスのリーダーとしてフィールドに立ち続け、迫り来るマイアミ大の激しいプレッシャーに流血する場面も見られましたが、勝負どころではベッカーへのバックショルダーパスなどを決めてドライブを継続させました。

そして第4Qのレッドゾーンでの4thダウンでのQBドローからの決死のダイブによるTDプレーは、今後長く語り継がれそうな魂のこもったものでした。

マイアミ出身ながらマイアミ大に入部させてもらえなかったという背景を持つメンドーサが地元マイアミでそのマイアミ大を倒して全米チャンピオンになる・・・。これ以上ないシナリオを自らの手で掴み取った訳です。

マイアミ大の敗因

前半のスロースタート

マイアミ大は追う展開にありながら後半21点を叩き出してインディアナ大を大いに脅かしましたが、前半無失点に抑えられてしまったことが大きく結果に響きました。

OL陣がインディアナ大フロントセブンの多彩なラッシュに対応するのに大いに苦戦。これによりベックはペースを掴めず、試合開始から22分間ファーストダウンを僅か1つしか獲得できず、4ドライブ連続で3アンドアウトに追い込まれ、前半の獲得ヤードがたったの69ヤードに抑え込まれたのは痛手でした。

スペシャルチームの失態

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接戦において勝負に差が出るのはターンオーバーだったりスペシャルチームプレーだったりしますが、マイアミ大はスペシャルチームで実質10点を失っています。

まずは前半終了間際、得点のチャンスで放たれた50ヤードのFGがゴールポストを直撃してミスミス3点のチャンスを逃しました。確かに50ヤードほどのロングFGが簡単に成功するとは思えませんが、これを失敗したことで前半完封させられてしまったことは少なからず選手たちを焦らせたに違いありません。

そして第3Q、マイアミ大が攻勢に出てモメンタムが変わりかけていた状況で起きたパントブロック。ブロックしたカマラのチェックミスは明らかであり、これが相手のTDにつながってしまったのは大打撃でした。

最終スコアがワンポゼ差だったことを考えれば、マイアミ大としては「あのFGが決まっていれば・・・」「あのパントブロックがなければ・・・」と考えてしまうのも無理はありませんが、それも後の祭り。競り合っていた展開だったからこそ、少しのミスも許されなかったわけで、それが試合の結果に繋がったと言っても過言ではありません。

勝負どころでの痛恨のミス

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少しのミスも許されないという面では、スペシャルチームの失態以外にもマイアミ大は自ら犯したミスで首を絞めてしまったという場面が他にも数個見られました。

例えば第2Q、インディアナ大が3rdダウン&13ヤードという状況で彼らはパス失敗に終わりパントを余儀なくされたと思われたシーンにて、マイアミ大のDLベイン・Jrがオフサイドを犯してしまい、この3rdダウンプレーがやり直しとなった結果インディアナ大が1stダウンを奪って最終的にTDにつながってしまいました。

またすでにご紹介したメンドーサの劇的なTDランですが、当然このプレーは彼の鬼神の如しパフォーマンスが特筆すべきなのですが、一方でマイアミ大ディフェンスは6人から7人がかりでメンドーサを止めにかかるもことごとく蹴散らされてしまっているわけです。これだけの人数がいながらタックルで仕留められなかったという事実も見逃せません。

そして試合を最終的に決めてしまったベックのパスインターセプション。ベックはマイアミ大オフェンスの拠り所としてチームの快進撃をここまで支えてきた功労者です。しかしそれと同時にプレッシャーを受けるとパスの成功率が落ちるといった点や、肘の手術を受けたことで昔ほど長いパスを力強く投げられなくなったと指摘される点もあり、このアンダースローのパスによるインターセプションもベックの限界を見させられた気にさえなりました。

総括

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歴史的に見てNCAA1部・FBS界隈では底辺を行ったり来たりしていたインディアナ大。かつてはNCAA史上最多敗戦数を記録していたほどのチームで、いまだかつて彼らがナショナルタイトルはおろか、Big Tenカンファレンスのタイトルゲームに進むことすら想像できなかったようなチーム。

2023年には3勝9敗と散々でありながらいつも通りという、残念であることを通り越して通常運転ぐらいにしか思われなかったチームがシグネッティ監督就任後たったの2年で全米王者に上り詰めてしまったこの事実・・・。これはアメリカのスポーツ界を見渡しても史上最大級のサプライズと言えます。

しかも、このナショナルタイトルを16勝0敗というとんでもないレコードで達成しており、長いカレッジフットボールの歴史上でも16勝を記録したのは1894年(1994年の間違いではありません笑)のイェール大以来という快挙まで成し遂げてしまったのです。

その全てはシグネッティ監督の就任から動き出したミラクルドラマなわけですが、「自分たちに限界を設けるな」という勝者の信念が、長年こびりついていた負け犬根性を一掃し、オハイオ州立大、アラバマ大、オレゴン大、そしてマイアミ大という、いわゆる「ブルーブラッド」と称される名門校を次々と薙ぎ倒すほどの最強集団に変貌を遂げたのです。

また、彼らの成功の陰にある、新時代のロースター管理運営力も見逃すことはできません。元々彼らは高校生のリクルーティングにおいて全米トップ級というわけではありませんでした。しかし、トランスファーポータル、そして巨額なNIL(Name/Image/Likeness)による経験値の高い転校生でロースターを組むことで、俗にいう「5つ星」のスーパースターがいなくても全米優勝が可能であることを自ら証明したのです。

そういう意味では今年のインディアナ大は現在のカレッジフットボールの成功モデルであり、時代が生んだ寵児とも言えるかもしれません。

もちろんインディアナ大の勝利は、コーチ陣たちの緻密な戦略、リスクを恐れないシグネッティ監督の采配に裏打ちされていました。特に多くのコーチ達がシグネッティ監督がNCAA2部のチームでコーチしていた時からのアシスタントであり、長く苦楽を共にし意思疎通が完璧なユニットであったことも大きかったと思います。

そしてやはりフェルナンド・メンドーサの存在です。

インディアナ大初となるハイマントロフィー受賞者となった彼は、スタッツを超えた精神的支柱としてチームを牽引し続けました。カリフォルニア大から転校してきたためインディアナ大在籍はたったの1シーズン。しかし、彼の弛まぬ努力と真摯な態度や行動に他のチームメイトが感化され、いつしかインディアナ大は他のどのチームよりも統率の取れた隙の全くない集団になっていったのです。


ここまでカレッジフットボールの王座はごく限られたチームによって独占されてきました。アラバマ大、ジョージア大、オハイオ州立大、クレムソン大、ルイジアナ州立大・・・。それはそれらの強豪チームがそのブランド力を元手に有能リクルートを囲い込んで力を保持してきたという歴史です。

しかし、CFPが12チーム制度に拡張されて参加チームが増えたこと、そして何よりトランスファーポータルとNILの全盛期となった現在のカレッジフットボール界において、ただ単に名前があるだけでは有能選手を集められなくなってきています。そして良いか悪いかは別として、お金さえ注ぎ込めば名門でなくても強いチームを輩出できることが今回のインディアナ大の優勝により証明されました。

またインディアナ大が全米制覇を成し遂げたことにより、2023年度のミシガン大、2024年度のオハイオ州立大に続き、これで3年連続Big Tenカンファレンス所属チームが全米王者を世に放ったことになります。これまではSEC(サウスイースタンカンファレンス)の独占状態が続いてきたことを考えると、カンファレンスの勢力図も変わってきていると言えるのかもしれません。

そしてインディアナ大はチーム史上初優勝を飾ったわけですが、最後に大学史上初優勝を飾ったのが1996年のフロリダ大。それ以降の優勝チームは最低でも過去にどこかで1度は全米タイトルを手にしたことがあったチームだった訳です。こういったことからも、やりようによれば、今までナショナルタイトルなど夢のまた夢だと思われているような、未だ一度も優勝したことがないチームが全米制覇を成し遂げるケースが増えるかもしれません。

このように、インディアナ大の歴史的な快挙は彼らの偉業だけでなく、現在の混沌としたカレッジフットボールの状況を映し出しているともいえそうです。今後シグネッティ監督率いるインディアナ大のダイナスティーが始まるのか、もしくは第2のインディアナ大が現れるのか、はたまた「ブルーブラッド」たちの逆襲が起きるのか・・・。来季以降のカレッジフットボールの行方が今から楽しみですね。

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