年間最優秀選手賞=MVPというアワードはどのスポーツにもあります。しかしカレッジフットボールには似たようなアワードがいくつも有るのですが、その中でも個人賞として最高峰のアワードがハイズマントロフィーです。
アメリカでフットボールをする選手なら誰もが憧れるこのトロフィーは1935年度からその年の最も優れた選手に贈られてきた歴史あるアワード。ただ単純にMVPと呼ぶには崇高すぎるこのトロフィー。アメリカのスポーツ全般で言っても最も価値のある賞であると認識されています。
そんなハイズマントロフィーの授賞式が12月9日夜にニューヨークで行われました。今年は昨年に引き続きオペラやオーケストラで有名なリンカーンセンターの別館「Jazz at Lincoln Center」が開催地でした。
今年ファイナリストに選ばれたのは以下の4選手です。
マイケル・ペニックス・Jr(ワシントン大QB)
ボ・ニックス(オレゴン大QB)
マーヴィン・ハリソン・Jr(オハイオ州立大WR)
今年は4人のうち3人がQBでWRが1人。そしてその3人のQBは皆もれなく転校生(トランスファー)という、セカンドチャンスをガッチリとものにした選手たちでした(ダニエルズ:アリゾナ州立大→ルイジアナ州立大、ペニックス・Jr:インディアナ大→ワシントン大、ニックス:アーバン大→オレゴン大)
今年のハイズマンレースは開幕前から前年度受賞者のケイレブ・ウィリアムス(Caleb Williams、サザンカリフォルニア大)が最有力候補として挙げられていました。ただワシントン大のペニックス・Jrがシーズン序盤にがっつりと数字を残したかと思えば、ミシガン大のQB J.J.マッカーシー(J.J. McCarthy)が中盤に台頭したり、後半に移るにつれてオレゴン大のニックスがコンスタントに数字を伸ばし、また候補選手だったフロリダ州立大のQBジョーダン・トラヴィス(Jordan Travis)が終盤に大怪我で戦線を離れるなど、候補選手が入り乱れる展開に。
そして栄えある第89代目のハイズマントロフィーを手にしたのは・・・。
Congratulations to @lsufootball quarterback Jayden Daniels, the 2023 Heisman Trophy winner! #HeismanTrophy #morethanatrophy pic.twitter.com/xic2UW3bC4
— The Heisman Trophy (@HeismanTrophy) December 10, 2023
ルイジアナ州立大のジェイデン・ダニエルズでした!
以下が投票結果です。
獲得pt | 1位票 | 2位票 | 3位票 | |
J・ダニエルズ | 2029 | 503 | 217 | 86 |
M・ペニックス・Jr | 1701 | 292 | 341 | 143 |
B・ニックス | 885 | 51 | 205 | 322 |
M・ハリソン・Jr | 352 | 20 | 78 | 136 |
J・トラヴィス | 85 | 8 | 19 | 23 |
J・ミルロー | 73 | 4 | 8 | 45 |
O・ゴーロドン・II | 31 | 1 | 2 | 24 |
C・シュレイダー | 29 | 1 | 2 | 22 |
B・カーラム | 28 | 3 | 2 | 15 |
JJ・マッカーシー | 21 | 1 | 7 | 4 |
ダニエルズとペニックス・Jrのポイント差(Margin of victory)は328点と僅差。これは2018年にカイラー・マレー(Kyler Murray、元オクラホマ大、現アリゾナカーディナルスQB)がトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa、元アラバマ大、現マイアミドルフィンズQB)に競り勝った時以来(296点)の接戦でした。
ちなみに最小のMargin of Victoryは2009年のマーク・イングラム(Mark Ingram、元アラバマ大)とトビー・ガーハート(Toby Gerhart、元スタンフォード大)の28点差でした。また最近ではQBばかりがとりだたされる中、トップ2選手がRBというのも時代を感じますね。
とはいえハイズマントロフィーの記録に深く刻まれるのは受賞者のみ。ほとんどの人は2位以下の選手のことなど覚えていることはありません。
ルイジアナ州立大出身選手としては2019年のジョー・バロウ(Joe Burrow、現シンシナティベンガルズ)以来3人目。
6フィート4インチ(約193センチ)と大柄のQBであるダニエルズは今季327投中236回のパスを成功させ、トータルのパスヤードが3812ヤードに40TDを獲得する傍らパスINTの数がたったの4つと非常にエフェクティブなパフォーマンス披露。さらにパスだけでなくランでも1134ヤードに10TDを稼ぐなどフィールド上で大暴れしました。
また11月11日のフロリダ大戦ではフットボールボウルサブディビジョン(FBS)史上初となる、投げて350ヤード以上、走って200ヤード以上を獲得したQBとなりました。この時のトータルヤードが606ヤードだったのですが、これはSEC(サウスイースタンカンファレンス)で1試合の最多トータルヤードの新記録に。
今季ダニエルズが記録したパサーレーティング(208.01)は過去のハイズマントロフィー受賞者の中ではもっとも高い数字。トータルヤード(4946Yd)は過去3番目の記録。そしてトータルTD数(50)は史上7番目となる数字となりました。
ダニエルズはもともとアリゾナ州立大でカレッジキャリアをスタートさせましたが、2022年にルイジアナ州立大にトランスファー(転校)してきた選手。セカンドチャンスを大いに活かして今回この映えあるトロフィーを手にしましたが、トランスファー選手としてトロフィーを受賞したのは過去7年間のうちダニエルズで5人目。(2022年のケイレブ・ウィリアムス、2019年のジョー・バロウ、2018年のカイラー・マレー、2017年のベーカー・メイフィールド)ここ最近のトランスファー事情を反映しているような結果です。
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ダニエルズは大学でのプレー資格を全て使い切っており、2024年のNFLドラフト入りすることが予想されています。その彼の所属チームであるルイジアナ州立大は1月1日に行われるレリアクエストボウルでウィスコンシン大と対戦することが決まっていますが、ダニエルズがこのボウルゲームに出場するかどうかはわかっていません。ドラフト前にボウルゲームに出場して怪我を負って株を下げることを嫌ってオプトアウトするのは近年よくある事例です。
投票数で2位だったペニックス・Jrはカレッジフットボールプレーオフ(CFP)準決勝戦であるシュガーボウルでテキサス大と対戦することになっており、少なくとも大学生としてあともう1試合は彼の活躍を拝めることができます。3位だったニックスはリバティー大とのフィエスタボウルに出場するかどうか注目が集まっていましたが、オレゴン大のメンバーとして最後にユニフォームを着て試合に出ることを明らかにしました。そして4位のハリソン・Jrはもう1年プレーできる資格を持っていますが、もしドラフトにアーリーエントリーするならチームが出場するオレンジボウル(ミズーリ大と対戦)に出場しないかもしれません。
【当ツイッターアカウントでの投票結果】
本日12月9日(土)アメリカ東部時間夜8時から、カレッジフットボール界で最も歴史が古く格調高い個人賞、ハイズマントロフィーの授賞式があります。
— Any Given Saturday (@ags_football1) December 9, 2023
手に入れれば未来永劫カレッジフットボールだけでなくスポーツ界にその名を刻む貴重なトロフィー。果たして第87代目の受賞者は・・・
【ジェイデン・ダニエルズの受賞スピーチ動画】