131チームいるFBS(フットボールボウルサブディビジョン)の中から紆余曲折を経て最後に残ったのが全米1位のジョージア大と同3位のテキサスクリスチャン大(TCU)です。
そして両チームには相当数のハイレベル選手たちが揃っています。ハイズマントロフィーファイナリストやNFLドラフト第1巡候補など・・・。そういった選手は高校時代からの評価も高かったりします。星の数だけでチーム力を図ることはできませんが、一方で5つ星や4つ星の選手の数は多い方がいいに決まっています。
There will be loads of talent on display in the CFP Championship Game 📊💪Do you agree with both teams’ rankings? pic.twitter.com/XZkKtqFJog
— FOX College Football (@CFBONFOX) January 5, 2023
4つ星5つ星選手が即戦力と考えられていますが、そうなるとジョージア大の方が圧倒的にタレントの量は優っています。でも実際大学に入って成長し続けた高いクオリティーの選手はTCUにも存在します。
今回は両チームの注目選手を独断と偏見で選んで紹介したいと思います。
目次
ジョージア大
ステソン・ベネット(QB)
ジョージア州出身でジョージア大の大ファンだったステソン・ベネット(Stetson Bennett)は憧れのジョージア大にウォークオン(非スカラシップ選手)として入部しますが、激しいポジション争いの末2年生の時にジョージア大を一旦離れ短大に編入します。そこで結果を残した彼はジョージア大から戻ってこないかという勧誘を受けて復帰。
そしてコロナ禍となった2020年、当時4番手だったベネットでしたが、先発候補がシーズン開始前にオプトアウト、2番手と目されていたサザンカリフォルニア大からの転校生J.T.ダニエルズ(J.T.ダニエルズ、現ライス大)は怪我で出遅れ、開幕するとベネットは2番手のQBに。そしてその2番手のQBがスランプに陥るとついにベネットに出番が回ってきます。
結局この年はシーズン終盤にダニエルズが現場復帰するまで5試合に出場。予想外にもパスの精度があり機動力も備わっておりチームメイトからは「メールマン」(確実に手紙を届けてくれる郵便配達員)というあだ名をもらったほどです。
そして2021年は開幕時こそ先発はダニエルズでしたが、初戦で彼が再び負傷。以来ベネットが先発を任されチームの連勝に貢献。そしてついに全米王座決定戦ではそれまで2度敗れていたアラバマ大を3度目の正直で破ってナショナルタイトルを獲得したわけです。
そんなシンデレラシーズンを終わらすことなく今年もチームに帰ってきたベネット。開幕当初から派手さはなくとも効果的にオフェンスを回す司令塔ぶりを発揮。そして最終的にはカレッジフットボール界最高峰の個人賞であるハイズマントロフィーのファイナリストに選ばれるという快挙。
入部時には一介のウォークオン選手だったベネットも今ではチームから絶大な信頼を寄せられるリーダーに成長。そのバックグラウンドとどこにでもいるような青年という風貌から(笑)それ相応の評価を受けてはいないと思いますが、クラッチプレーヤーであることは確か。
先日行われたピーチボウルでは、オハイオ州立大を追う展開で迎えた4thQだけで190ヤードのパスを記録。これはどのCFPボウルゲームにおいても最多のパスヤードだったそうです。
苦労してここまでやってきたという燻し銀のベネットの存在はおそらく外から見ているよりもはるかにチームにとっては重要なんじゃないかと思います。
ブロック・ボワーズ(TE)
ジョージア大のリーディングレシーバーはWRではなくTEのブロック・ボワーズ(Brock Bowers)。1年生だった昨年もチームのナンバーワンレシーバーでしたが、今年もここまで790ヤードに6TDと活躍。彼の強みはそのフレームに似つかない身体能力とスピード。今年はそれを生かしてランプレーでも重用されるなどしてきました。
また先日のピーチボウルでは彼の絶妙なボディーバランスでファーストダウンを奪ってドライブを継続させるなど数字以上の活躍を見せており、ベネットの頼れるターゲットとなっています。二列目でのミスマッチは相手にとっては脅威。
ラッド・マッコンキー(WR)
そのボワーズの次にレシーブヤードが多いのがこのラッド・マッコンキー(Ladd McConkey)。小柄ながらアジリティの高さとパスキャッチの能力で今季躍進。タイプ的にはウェス・ウォーカー(Wes Walker)氏とかジュリアン・エドルマン(Julian Edelman)氏を彷彿とさせます。スロットからスウィープでも力を発揮する選手。
ケニー・マッキントッシュ(RB)
今季ジョージア大には1000ヤードラッシャーはいませんが、RB2枚看板の1つを背負うのがこのケニー・マッキントッシュ(Kenny McIntosh)。彼はここまで779ヤードのランに10TDを奪っていますが、パスキャッチも得意で今季はボワーズ、マッコンキーに次ぐチーム3番目の理シー部ヤードを記録(505ヤード、2TD)。非常に器用で汎用性の高い選手です。
ジェイレン・カーター(Jalen Carter)
次期NFLドラフトで最も注目されているDL選手の一人がこのジェイレン・カーター(Jalen Carter)。昨年はトレヴォン・ウォーカー(Trevon Walker、現ジャクソンビルジャガーズ)、ジョーダン・デーヴィス(Jordan Davis、現フィラデルフィアイーグルス)、デヴォンテ・ワイアット(Devonte Wyatt、現グリーンベイパッカーズ)といったそうそうたるファーストラウンダーをして、実はカーターが一番能力が高かったと言わしめた選手です。
キーリー・リンゴ(CB)
CBのキーリー・リンゴ(Kelee Ringo)も次期ドラフトにて注目度の高い選手。ここまで41タックル、2パスINT、7パスブロック、そしてフォースドファンブル1つと、若干不安視されるジョージア大バックフィールドを束ねる選手。TCUとの試合ではWRクウェンティン・ジョンストン(後述)とのマッチアップが見もの。
テキサスクリスチャン大
マックス・ドゥガン(QB)
今シーズン上記のベネットと共にハイズマントロフィーファイナリストに選ばれたマックス・ドゥガン(Max Duggan)ですが、このようなスポットライトを浴びるまで紆余曲折あった苦労人でもあります。
新型コロナのパンデミックで揺れた2020年。選手たちは開幕に先駆けて綿密な健康診断を受けることが義務付けられましたが、その過程でドゥガンの医師は彼の心臓に異変を察知します。当時コロナに感染すると心筋炎になりやすいと言われており、心臓のテストはそのためのものだったのですが、偶然にもこの心臓のコンディションが発見されたのです。
このレアな病気を治すためにドゥガンは9時間の手術を受けますが、術後に血液凝固を起こして緊急手術を受けるなど生死を彷徨う経験をします。
この手術から復帰しフィールドに戻ったドゥガンでしたが、翌年の2021年には足の骨折と靭帯断裂という重傷を負って戦線離脱を余儀なくされます。
そしてオフシーズン。彼をリクルートしたゲリー・パターソン(Gary Patterson)監督は成績不振の責任を取り解雇。その代わりにやってきたのがソニー・ダイクス(Sonny Dykes)監督でしたが、ドゥガンはダイクス監督の構想から外れベンチスタートに。
これでドゥガンは先発機会を求めて他校へトランスファー(転校)するかと目されましたが、彼はTCUに踏みとどまりチャンドラー・モリス(Chandler Morris)のバックアップに徹します。しかしそのモリスはコロラド大戦で負傷退場。そこでドゥガンに先発の座が回ってきたのです。
以来ドゥガンはここまでのチームの快進撃になくてはならない人材となりましたが、それもTCUに残留しチームのためなら何でもするという強いチーム愛があったからにほかありません。それはBig 12カンファレンス優勝決定戦のカンザス州立大戦で、負けはしたものの全てを出し切り息ができずに立つことすらままならなかった彼の姿からも見てとれました。
パスの精度はとり立てて高いというわけではありませんが(63.7%)、投力はありまた機動力でも相手ディフェンスを翻弄できる力を持っています。そしてここぞという時のクラッチプレーヤーぶりも忘れてはなりません。
ジョージア大ほどのディフェンスを相手にするからにはTCUのオフェンスにミスは許されませんが、それもこれもドゥガンの出来にかかっていると言えそうです。
クウェンティン・ジョンストン(WR)
今季中盤から後半にかけて一気に躍進してNFLドラフトでも一番最初に指名を受けるWRではないかといわれるまでになったのがクウェンティン・ジョンストン(Quentin Johnston)です。開幕以来鳴かず飛ばずだったものの、5戦目のカンザス大戦では14キャッチに206ヤード、さらにオクラホマ州立大戦でも180ヤードを記録するなどして一気に注目を集めました。
身長6フィート4インチ(約193センチ)という長身と50/50ボールでの強さ、そしてRAC(キャッチ後のラン)の上手さも一品。ジョージア大ディフェンスのバックフィールドを攻略するには彼の力が必須です。
ケンドレ・ミラー&エマリ・デマカド(RB)
パスを多用するエアーレイドオフェンス系を好むダイクス監督ですが、彼の場合はランをおろそかにすることなくバランスの良いスキームを使用しますが、その証拠としてRBケンドレ・ミラー(Kendre Miller)は今季1300ヤード以上を足で稼ぐ全米を代表する立派なRBに成長しました。
ただ彼は前戦のフィエスタボウルで膝を負傷して途中退場。ジョージア大との試合に彼が間に合わなければその大役はエマリ・デマカド(Emari Demercado)に託されます。ただ彼はフィエスタボウルでミシガン大相手に150ヤードを走り切っており、不測の事態に備えて彼もいつでもいける準備をしていることでしょう。
ディラン・ホートン(DL)
今季のTCUはシーズン前半にはオフェンスばかりがとり立たされましたが、後半に入るとディフェンスもオフェンスに追いつき力を発揮しだしましたが、その一因とも言えるのがDLディラン・ホートン(Dylan Horton)の台頭。最初の6試合まではQBサックが皆無でしたが、その後はトータルで10個を量産。ミシガン大戦では4つのQBサックに1つのフォースドファンブルと大活躍。サックをここまで9つしか許していないジョージア大OLとの対決は見ものです。
ディー・ウィンターズ(LB)
LBのディー・ウィンターズ(Dee Winters)もホートンと同じく4年生でTCUディフェンスの二列目を束ねる優秀なLB。高い反射神経とスピードで彼はホートンに次ぐチーム2番目に多くQBサックを記録(7.5)。また先のミシガン大戦ではピックシックスも披露しており、ターンオーバーマージンで幾分苦戦しているジョージア大(-2)に対峙するにはウィンターズのここぞというプレーに期待したいところ。
トレヴィウス・ホッジス・トムリンソン(CB)
ディフェンシブバックフィールドではドラフトでも注目を浴びるトレヴィウス・ホッジス・トムリンソン(Tre’Vius Hodges-Tomlinson)。背は高くないものの、それをスピードと身体能力で補います。今季最優秀DBに贈られるジム・ソープ賞を受賞したホッジス・トムリンソンは先日のミシガン大戦で6回のターゲットで許したキャッチはゼロときっちりと仕事をこなしました。ちなみに彼の叔父さんはTCUのレジェンダリーRBラダニアン・トムリンソン(LaDainian Tomlinson)です。
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