アレン監督のダイブ!
Big Tenの開幕戦の中で最もドラマチックだったのは言わずとしれたインディアナ大対ペンシルバニア州立大のゲーム。全米8位のペンシルバニア州立大をオーバータイムの末劇的なエンディングで倒したのはおそらく今後長らく語り継がれていくことでしょう。
インディアナ大といえばかつて男子バスケ部王国として知られた大学であり、フットボール部は常に中堅以下をさまよう程度のレベルでしかありませんでした。
そんなチームを率いるようになったのがトム・アレン(Tom Allen)監督ですが、彼がインディアナ大に来たのが2016年。コーチ業に足を踏み入れた初期の頃は高校フットボールを土壌としていましたが、キャリア15年目となる2007年にインディアナ州にあるNCAA3部のワバッシュカレッジにアシスタントとして就任してカレッジフットボールの扉を叩きます。
そこから小さな大学を点々としながらレジメ(履歴書)を磨き、2012年にはミシシッピ大のLBコーチに就任。そこからサウスフロリダ大を経て2016年にインディアナ大にやって来ます。彼はこの経歴から見ても分かるように他の大御所チームに所属した事があるわけでもなく、アラバマ大のニック・セイバン(Nick Saban)監督や元オハイオ州立大のアーバン・マイヤー監督の流派を汲む人間でも無い叩き上げのコーチなわけです。
そして2016年に当時監督だったケヴィン・ウィルソン(Kevin Wilson、現オハイオ州立大OC)氏が選手を不当に扱ったという疑惑が起きて解雇となるとアレン氏が臨時監督となってボウルゲーム(フォスターファームボウル)を指揮。そしてそのまま正監督として昇格して今に至るわけです。
アレン監督の最初の2年間は共に5勝7敗で負け越しましたが昨年2019年度には8勝5敗を記録。彼らが最後に8勝を飾ったのは1993年のことですから昨年の成績がいかに凄いものだったかが分かります。これによりインディアナ大はアレン監督と7年契約更新をし年収も129万ドル(約1億3000万円)から一気に390万ドル(約3億9000万ドル)に跳ね上がりました。
たった1年の成功でここまでサラリーと契約年数を増やしてしまったのは勇み足だという声も聞かれましたが、今回8位のペンシルバニア州立大を倒したことでとりあえず大学側は一安心していることでしょうし、アレン監督に疑心暗鬼だったファンも一気に彼を全面的にバックアップする側に回ったことでしょう。
そんなペンシルバニア州立大との激戦を制した直後のロッカールーム。試合後のスピーチを繰り出すアレン監督は感極まって言葉をつまらせます。それを見た選手たちは一気に監督へ熱い歓声をあげ、それにつられたアレン監督は選手たちへ感激のダイブ!
We ❤️ you, coach! #LEO pic.twitter.com/nk3x7GUr6J
— Indiana Football (@IndianaFootball) October 25, 2020
カレッジフットボール界には戦略に長けた監督とか、強力な統制力を持つ監督とか、リクルーティングの天才とも言える監督とかいろいろな監督がいますが、アレン監督のような人徳のある監督というのが存在する(もちろん彼だけではありませんが)のを知ることが出来るのはなんだか嬉しいです。