カリフォルニア大は2016年の開幕戦をオーストラリアのシドニーで行います。 ヘッドコーチのソニー・ダイクス(Sonny Dykes)監督はこれまで海外で試合を開催したことのあるカレッジチームやNFLチームの関係者に話を聞いてこの大移動の準備に余念がありません。
8月20日に出発して到着するのが8月22日。機内ではナイキ特注のタイツを履いて身体の疲れを最小限に抑えます。時差ボケも視野に入れねばならず、移動だけでも一苦労となるでしょう。第一、なぜオーストラリアなんだ?と思う方もいらっしゃると思います。それは近年増えてきたオーストラリア出身選手と無関係ではないでしょう。
カリフォルニア大によると、このシドニーでのハワイ大との開幕戦のチケットはすでに7万枚売れたと言っています。ラグビースタジアムであるANZスタジアムのキャパシティが8万3千人であることを考えるとかなりのチケットがさばけたことになります。
最後にカレッジフットボールがオーストラリアで行われたのは1987年。ブリガムヤング大がコロラド大を破った時以来となります。「アメリカンフットボール」と呼称されるこのスポーツはお世辞にもオーストラリアで盛んとは言えないです。
しかし、フットボールも元をたどればラグビーが起源となっていますので、ラグビーがメジャースポーツの一つであるオーストラリアでカレッジフットボールのゲームが行われることは言わば「里帰り」のようなものなのかもしれません。
とは言えオーストラリアでフットボールが注目されつつあるのも事実です。その発端となったのは、ラグビーのスター選手のジャリッド・ヘイン(Jarryd Hayne)が昨年NFLサンフランシスコ49ersに参加したことです。これを機にオーストラリア国内でのフットボールの露出が増え、米スポーツ専門局ESPNのオーストラリア支部でNFLやカレッジフットボールの試合が放送され始めたのです。
カレッジフットボールにおいてオーストラリア出身の選手の多くはパンターです。通常のパントと違い少し横から蹴る方法は「ラグビースタイルパント」と呼ばれていますが、これはオーストラリアンフットボールで用いられるキックの方法です。オージールールとも呼ばれるこのスポーツは同国内で非常に人気のあるスポーツです。ラグビーとは似ていて異なるスポーツです。
オレゴン州立大のあるパンター、ニック・ポレブスキー(Nick Porebski )もオーストラリア出身でオージールールをプレーして育った選手の一人。肩の怪我でオージールール選手としての道は閉ざされたものの、ユタ州の短大に在学中にオレゴン州立大コーチの目に止まり、カレッジフットボールのパンターとして活躍しています。オレゴン州立大は以来オーストラリアにリクルーティングの目を向け出しました。
同じPac-12カンファレンス所属のスタンフォード大ヘッドコーチ、デビッド・ショウ(David Shaw)監督はオーストラリアのフットボールチームのコーチングスタッフを招き、スタンフォード大の練習を見学出来るようにしました。ショウ監督はPac-12がオーストラリアでのフットボール普及に大きな影響を及ぼすだろうと言っています。
「これはPac-12カンファレンスにとって大きなチャンスかもしれません。彼ら(オーストラリア人)がアメリカンフットボールに大変興味を持っているという話をよく耳にします。我々が彼らの国でフットボール普及の手助けができれば、将来的に面白いことになるかもしれない。」
話をカリフォルニア大に戻すと、選手たちも長時間のフライトを経なければならないとしても国外で試合をすることを大変楽しみにしているようです。ただラインマン達など巨漢の持ち主はフライトに耐えられるか心配されますが、ダイクス監督は特別に先発OL/DL選手にはファーストクラスを用意するということです。チームのOLの1人、スティーブン・モアー(Steven Moore)は「それは有り難い。オーストラリアまであんな狭い席に座らなければならないなんてたまったものじゃありませんから。」と胸を撫で下ろしました。
オーストラリアが新たなリクルーティングの土壌となるかどうか...。ただ言えることはカリフォルニア大のような手法は、潤沢な資金があるから可能であって、誰でもできるようなやり方ではありませんが。