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オレンジボウルプレビュー

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今年度のカレッジフットボールプレーオフ(CFP)の準決勝戦第2戦目は1位のアラバマ大と4位のオクラホマ大が対戦するオレンジボウルが戦いの舞台となりました。どちらも今季のカレッジフットボールを代表する強力オフェンスを擁するチームです。アラバマ大が4年連続の決勝戦進出を決めるか、もしくは昨年準決勝で涙をのんだオクラホマ大が雪辱を果たすか・・・。このメガマッチの見どころを探りたいと思います。

数字で見るマッチアップ

アラバマ大  スタッツ
(1試合平均)
オクラホマ大
 47.9 (#2) 得点数 49.4 (#1)
 325.4 (#7) パスオフェンス 324.0 (#8)
 202.15 (#37) ランオフェンス 253.9 (#11)
14.8 (#4) 失点数 32.4 (#91)
178.3 (#13) パスディフェンス 291.4 (#130)
117.0 (#17) ランディフェンス 156.7 (#54)

マレー vs タガヴァイロア

この試合で最も注目されるのは両チームのQB対決です。もちろん対決と言っても二人が直接プレーしあうわけではありませんが、やはりこの二人の対決は見ものです。というのも御存知の通りオクラホマ大のカイラー・マレー(Kyler Murray)とアラバマ大のトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa)はハイズマントロフィーを争った間柄で、シーズン通しての最有力選手だったタガヴァイロアをマレーが後半巻いてトロフィーをかっさらったという背景があります。

その決定的な差となったのが第14週目のカンファレンス優勝決定戦。マレーはテキサス大相手に勝利を奪い好印象を残しましたが、タガヴァイロアはジョージア大相手に大苦戦。足首負傷という不運にも見舞われましたが、途中退場してバックアップのジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts)が代わりに逆転勝利をお膳立てしたというストーリーはハーツのヒロイックな活躍が取りだたされる一方、タガヴァイロアのトロフィー獲りにはマイナス点となってしまい、それが結果マレーが逆転でトロフィーを受賞するに至ったのです。

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マレーはQBレーティングで全米1位、タガヴァイロアは全米2位ということでまさに全米トップクラスのQB同士が激突するわけですが、数日前の時点でマレーは風邪気味、そしてタガヴァイロアはジョージア大戦で負った怪我のために受けた手術からの回復具合は80%ほどということで、どちらも万全とはいえなそうです。

しかしながらマレーは受賞者の意地、そしてタガヴァイロアは受賞を逃した雪辱を果たすためプレーすることでしょうから、この試合で一体どちらのQBが受賞すべきだったのかということが分かる・・・かもしれません。

マレー vs アラバマ大ディフェンス

マレーがハイズマントロフィーを獲得したことでオクラホマ大は昨年のベーカー・メイフィールド(Baker Mayfield、現クリーブランドブラウンズ)に続き2年連続の受賞者を輩出したことになります。マレーの今季の活躍はトロフィー受賞するのにふさわしいものだったといえますが、上にも挙げたとおりアラバマ大のタガヴァイロアが受賞していたとしても多くの人が納得していたこともまた事実。しかしそれが叶わなかったことで彼のチームメイトたちはタガヴァイロアの仇討ちのために是非ともマレーを倒しにかかってくるでしょう。マレーがトロフィーを手に入れたせいで、既に全米トップレベルの実力をもつアラバマ大ディフェンスにさらに火をつけてしまった可能性があるわけです。

数字で見る限りアラバマ大ディフェンスはここまでマレーが対戦してきたどのチームをも凌駕する力を持っています。もしこのディフェンス相手でもマレーがこれまでのようにTDを量産するようなことになれば、もう誰もマレーの実力を疑うことはしないでしょう。そしてそうなればMLBオークランドアスレチックス入りが決まっているマレーをNFLチームが黙って見過ごすということもなくなるはずです。もっとも現時点で彼はファーストラウンダーというのが有力な説のようですが。

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しかしニック・セイバン(Nick Saban)監督が指揮してきたこれまでのアラバマ大チームで唯一と言っていいほど苦手な選手のタイプは機動力を発揮するダイナミックなQBです。例えば元フロリダ大のティム・ティーボ(Tim Tebow)、元アーバン大のキャム・ニュートン(Cam Newton)、元テキサスA&M大のジョニー・マンゼル(Johnny Manziel)、元クレムソン大のデショーン・ワトソン(Deshaun Watson)らには苦杯をなめさせられました。そしてオクラホマ大のマレーもこのカテゴリーに入れることが出来ると思います。

もしアラバマ大ディフェンスを攻略できる選手がいるとすればそれはマレーだと言われてきました。当然フットボールは団体競技なためQB一人で試合を左右できるほど簡単ではありませんが、今季のオクラホマ大はマレーに助けられた試合が何試合もありました。そんなマレーならひょっとしたら過去にアラバマ大ディフェンスを撹乱した選手たちのように彼らを切り刻む事が出来るかもしれません。

アラバマ大オフェンス vs オクラホマ大ディフェンス

上のスタッツを見ていただければ分かる通りアラバマ大とオクラホマ大のオフェンスは非常に似通っています。しかしディフェンス力を見るとその差は歴然・・・。エキスパートやラスベガスなどの予想でアラバマ大が有利だとされている理由はまさにここにあります。

パスディフェンスだけ見れば130位とありますが、これはなんとFBSで正真正銘の最下位。トータルディフェンスでも124位ということでこんなにディフェンスがザルなチームがよくCFPに進出できたものだと感心させられてしまいます。それもこれもディフェンスの不甲斐なさを補填してくれるマレーの存在のおかげなのですが。

リンカーン・ライリー(Lincoln Riley)監督はシーズン途中にディフェンシブコーディネーターで前監督ボブ・ストゥープス(Bob Stoops)氏の実弟であるマイク・ストゥープス(Mike Stoops)氏を解雇し、ラフィン・マクニール(Ruffin McNeill)氏を後継者に起用しましたが、さして守備力向上には繋がりませんでした。

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アラバマ大のオフェンスはタガヴァイロアに加え、全米最優秀WRに贈られるビレントニコフ賞を獲得したジェリー・ジュディ(Jerry Jeudy)ら若く才能あふれるWR陣、ダミアン・ハリス(Damien Harris)、ジョシュ・ジェコブス(Josh Jacobs)、ナジー・ハリス(Najee Harris)という強力なRB陣と駒が揃っています。タガヴァイロアは足首の怪我のせいで100%ではなさそうですが、彼のバックアップが去年の先発QBだったジェイレン・ハーツというのですからまさに鬼に金棒です。

そんなオフェンスをオクラホマ大はどう止めるのか・・・。理想はアラバマ大のランオフェンスによるダメージを最小限にとどめ、手傷を負ったタガヴァイロアにプレッシャーをかけることでしょう。それはまさにSEC優勝決定戦でジョージア大が講じた戦略そのものです。問題はそれを体現できるタレントがオクラホマ大ディフェンスに揃っているのかということですが・・・。

これまでは彼らがどんなに大量失点してもマレーら攻撃陣がその穴を十二分に埋めてくれました。しかしアラバマ大と競り合うには彼らが今シーズン最高のパフォーマンスを見せる必要があります。どんなにヤードを奪われても失点されないようなディフェンスをするとか、されてもFGにとどめるなどしない限り、今回ばかりはマレーでもいつものようにディフェンスの尻拭いをすることは出来ないかもしれません。

総評

この試合はやはりマレーとタガヴァイロアの一騎打ちという構図が一番注目されるポイントです。ハイズマントロフィー受賞者とそのランナーアップ(次点選手)がボウルゲームで直接相まみえるというケースはあまり多くなく、最近では2005年の受賞者(後に剥奪)であるサザンカリフォルニア大のRBレジー・ブッシュ(Reggie Bush)とそのランナーアップだったテキサス大ヴィンス・ヤング(Vince Young)がローズボウルで行われたBCSナショナルタイトルゲームで激突しています。「世紀の一戦」といわれたこの試合ではヤングがブッシュや前年度の受賞者であるQBマット・ライナート(Matt Leinart)を制して全米の頂きに上り詰めました。

オクラホマ大とアラバマ大は2013年のシュガーボウルで対戦したのが最後ですが(この時はオクラホマ大が勝ちました)、マレー自身は実は1度だけアラバマ大と対戦した経験があります。というのも彼は元々テキサスA&M大の選手でオクラホマ大に転校してきたという経緯を持っており、彼がまだ1年生のA&M大選手だった時に途中出場しています。この時は4投中2投を成功させ21ヤードを稼ぎましたが、失敗した2投のうちの1つをインターセプトされてしまいました。もちろんその時のプレーなど何の参考にもなりませんが。

今年で5回目を迎えるCFPにおいてアラバマ大だけが唯一5年連続プレーオフ進出を果たしているチーム。そして初年度こそ準決勝戦でオハイオ州立大に敗れましたが、それ以降は3年連続決勝進出を決め、その内2度もナショナルタイトルを手に入れています。今年はタガヴァイロアという今までにない強力な武器を得て無敵艦隊の名をほしいままにしてきました。

オクラホマ大は今年で2年連続2回目のCFP出場となりますが、去年は準決勝戦でメイフィールドを持ってしてもジョージア大を破るには至らず悔し涙を流しました。ライリー監督は就任2年目で既に2度目のCFP出場を成し遂げていますが、当然狙うは2000年以来のタイトル獲り。セイバン監督率いる絶対王者・アラバマ大に今乗りに乗っている若き指揮官ライリー監督率いるオクラホマ大が挑戦状を叩きつけます。

果たして1月7日にリーバイススタジアムで行われるCFPナショナルタイトルゲームに駒を進めるのはどちらのチームでしょうか?

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