関係各所の高い期待に応えられず残念ながら解雇されてしまったレス・マイルズ(Les Miles)監督。この解雇劇をめぐり、選手や同業者たちはどのような反応を見せたのでしょうか?
リアクション
ルイジアナ州立大の選手たちもまたマイルズ監督の解雇のニュースを複雑な気持ちで受け止めているようです。
アーバン大での敗戦から傷が癒える間もない翌日となる日曜日の午後、突如として自分たちの慕うコーチが解雇されたというニュースを聞かされた選手たちの心情は計り知れません。
WRトラヴィン・ドゥラル(Travin Dural)らは「次の試合のためにどうやってオフェンスを立て直すのか」を話すためにフットボール施設に足を運んだところ、そんな話をする代わりにマイルズ監督のクビを知らされたのです。そういった噂が立っていることは知っていたとしても選手にとってはまさに寝耳に水だったわけです
「未だに信じられません。こんなことになるなんて全く想像していませんでした。マイルズ監督は最高の監督でこれまでルイジアナ州立大に多くの素晴らしいギフトを送り続けてくれました。監督はいつでも私達選手のことを一番に考えていてくれました。選手一同打ちひしがれています。」とドゥラルはうなだれました。
スターRBレナード・フォーネット(Leonard Fournette)はこの日アーバン大戦で痛めた足首の診察のためチームドクターを訪れていましたが、その時このニュースを耳にしたといいます。
「それは本当にショックでした。確かにこの世界は勝負の世界ですから仕方ないことであることは分かっていますが、こんな事態になってしまったのは本当に辛いです。」とフォーネットは口にしました。
一方、現在テキサスA&M大のディフェンシブコーディネーターで過去にマイルズ監督の下ルイジアナ州立大でもディフェンシブコーディネーターを務めたジョン・チャヴィス(John Chavis)氏もマイルズ監督の解雇に思いを寄せました。
「レス(マイルズ監督)のような素晴らしいコーチが解雇されてしまうのを見るのはどんな時でも辛いものです。彼は殿堂入りコーチであり、ルイジアナ州ではレジェンド的存在です。私にルイジアナ州立大のような歴史あるチームでコーチするチャンスを与えてくれたレスには本当に感謝しています。ただ、ルイジアナ州立大が彼をこんな風に解雇したことに関しては正直あまり驚いてはいません。何故なら私がルイジアナ州立大に在籍していた頃から大学は彼を解雇しようとしていたからです。」
チャヴェス氏は2014年度シーズン後にルイジアナ州立大を離れましたから、少なくともこの『大学側が解雇しようとしていた』という話はこれ以前の話となります。2011年にはナショナルチャンピオンシップに進出していますからこれ以降のことと想像できますが、ルイジアナ州立大の(というかその一握りの権力を持った支持者たちの)タイトル獲りへの狂気とも言える欲求が見えてきます。
チャヴェス氏がルイジアナ州立大を去った際、マイルズ監督との軋轢があったという噂も立ちましたが、彼はこれを否定。その理由は「ルイジアナ州立大上層部は信じられる連中ではなかったから」だと言っています。
ファンのチームへの期待は高かったでしょうから、今季のように全米5位で出発しつつもその力を発揮できずにランク外へ転落するチームを見るのは辛いでしょう。マイルズ監督解雇を歓迎する人々もいる中、人々に愛されたコーチが追い出されたことに心を痛めているファンも大勢います。
あるファンはアーバン大敗戦後、このままマイルズ監督が解雇されてしまうかと尋ねられ、「いや、彼はルイジアナ州立大の監督として引退するまでコーチするべきだと思う。彼が解雇されてしまうとは思えない。レスがタックルし損ねて試合に負けたわけじゃないのだから。」と話していました。このファンはこのニュースを聞いて一体どう思ったでしょうか。
2004年にルイジアナ州立大をナショナルチャンピオンシップに導いた、現アラバマ大ヘッドコーチ、ニック・セイバン(Nick Saban)監督はこのルイジアナ州立大の「蛮行」に怒り心頭です。
「過去にナショナルタイトルを獲得し、2度のSECチャンピオンに輝いた男(マイルズ監督)がシーズンを終えることなく解雇されてしまうなんて!!レス・マイルズはライバル関係にあっても一目置く存在でした。彼がルイジアナ州立大で成し遂げた数々の成功を考えれば当然のことです。残念ながらこれが我々が生きる道ということでしょう。」
ただ、マイルズ監督が解雇された経緯の遠い因果関係にセイバン監督が絡んでいるとも言えます。
11シーズンと今年の4試合合わせてマイルズ監督の戦績は通算113勝34敗。勝率は7割7分を超え、これはルイジアナ州立大史上最多の数字となります。それでも彼は解雇されてしまった。その序曲は2011年度のナショナルタイトルゲーム、対アラバマ大戦から始まっていたのかもしれません。2007年以来の全米制覇をかけて臨んだこの試合、セイバン監督率いるアラバマ大はレギュラーシーズン中の対戦での雪辱を晴らす形で21−0という完封勝利でルイジアナ州立大から大金星を奪いました。ルイジアナ州立大を去っていったセイバン監督にナショナルタイトルを奪われたというルイジアナ州立大関係者の苛立ちは徐々にマイルズ監督に向けられていきます。
また同じSEC西地区にあり、ここ数年間で「帝国」を築き上げたセイバン監督はトップチームの監督たちへのハードルをぐっと上げてしまいました。「アラバマ大でできるなら我々でもできるはずだ」と簡単に結論づける大学が増えたわけです。二桁勝利をあげるだけではダメ、毎年ナショナルタイトルを狙えなければどんなに成績が良くてもそのシーズンは失敗とみなされるというとんでもない目標設定がなされたのです。
それは何もルイジアナ州立大だけで起こっていることではありませんが、ライバルであるアラバマ大にやられっぱなしでは面白くないと思う「権力者」が大鉈を振るった形でマイルズ監督が解雇されたと考えても何ら不思議ではありません。
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