カレッジフットボールの光と陰〜リクルート達の苦悩 - ANY GIVEN SATURDAY

カレッジフットボールの光と陰〜リクルート達の苦悩

カレッジフットボールの光と陰〜リクルート達の苦悩

Rashaan Evans

カレッジフットボールという夢の舞台に立つために高校生のリクルートたちは大学チームの甘い言葉に踊らされながらもいずれは自分で自分の進路を決定していかなければなりません。それは気が遠くなるような、期待と不安が入り混じったプロセスであるに違いありません。

カレッジフットボールのリクルーティングは年々熾烈を極めるばかりでなくメディアの注目度も加熱するばかりです。前にも少し触れたのですが、個人的にはこのリクルーティング、特に最終的に行われる「ナショナルサイニングデー(National Signing Day)」の報道などは過大評価されすぎだと思わずに入られません。

【関連記事】ミシシッピ州立大の努力は報われるか

まあ私が好き嫌いに関係なくリクルーティングが報道される日々は続いていくわけですが、一方でそれがチームを強くするためには最重要課題であることも確かです。ですから全米各地で「ブルーチップ」と呼ばれる5つ星選手たちの奪い合いが行われるわけです。

そんな感じで華やかな部分が取り上げられがちなリクルーティングの話ですが、その裏で苦悩しているリクルートたちも大勢います。

ニュージャージー州出身のLBライアン・ディケンズ君の場合。

コネチカット大から熱心なリクルートを受けていたディケンズ君は昨年6月の時点で口頭でコネチカット大への進学を決意し大学側にその意を伝えました。しかし公式に進学に必要な書類にサインする「ナショナルサイニングデー」まで数週間というところでコネチカット大から彼にスカラシップ(スポーツ奨学金制度)を授与するのを取りやめると突然言い渡されたのです。

ディケンズ君がコネチカット大に勧誘されていた時のヘッドコーチはボブ・ディアコ(Bob Diaco)氏でしたが、昨シーズン後にディアコ氏は解雇されてしまい、後任には元コネチカット大ヘッドコーチのランディ・イーゼル(Randy Edsall)氏が復帰。コーチ陣が入れ替わったことによりディケンズ君の選手としての価値が落ちた、もしくは変わってしまったことにより起きた惨事なのです。

【参考記事】コネチカット大次期監督にイーゼル氏が復帰

6月にコネチカット大に進学することを決めていたディケンズ君は以来他の大学とのコンタクトをほぼ絶っていました。故に「ナショナルサイニングデー」を数日に控え、ディケンズ君はスカラシップをオファーしてくれる大学をスクランブルで探さなければならなくなったのです。現実的にいってこの時期からディビジョン1部のチームにスカラシップ付きで進学するのは限りなく不可能に近いです。いくら前任コーチのリクルートであるからといってこれは果たして選手にとってフェアと言えるでしょうか?

シカゴ出身のエリック・スウェンソン君の場合

似たようなことがその前にも起きています。シカゴ郊外出身の高校生だったエリック・スウェンソン君は4つ星OLとして憧れのミシガン大への進学が決まっていました。しかし彼をリクルートしていたブレディ・ホーク(Brady Hoke)氏がミシガン大を追われ、代わりにやってきたジム・ハーボー(Jim Harbaugh)監督によってその夢を潰されます。2年以上もミシガン大に加入され続け、2年前からミシガン大行きを決めていたスウェンソン君にしてみれば、寝起きに顔面パンチを食らったくらい立ち直れないダメージをくらったことでしょう。

【関連記事】リクルーティングの抜け穴とは?

ただ、当時は相当な批判を食らったハーボー監督ですが、時を経てその当時の話を聞くと(NCAAのルールによりある一定期間は話すことができなかったらしい)、必ずしもハーボー監督が慈悲もなくこのような決断をしたのではないことが明らかになりました(もっともこれはハーボー監督側の話ですが)。

要約するとハーボー監督がミシガン大に就任した際スウェンソン君に直接会い、キャンプに参加するように進めたらしいのですが、スウェンソン君がこれを拒否。結局ミシガン大の新コーチ陣はスウェンソン君の実力をテープでしか見ることができなかったのですが、高校3年生シーズンのスウェンソン君のプレーは低下しており、結局ハーボー監督の構想外選手となってしまったということです。それはハーボー監督のアグレッシブなリクルーティングによりスウェンソン君のOLのリクルートのレベルが跳ね上がったことにもよると思われます。

ネバダ州出身のケヴィン・ハート君の場合

一方で周囲のプレッシャーからか、もしくは単なる嘘が取り返しのつかないことになったからか、こんな出来事も起きました。

ネバダ州出身のOLケヴィン・ハート君はその巨漢からワシントン大オレゴン大ネバダ大などの1部チームからリクルーティングを受けました。しかし彼の学校の成績が極端に悪かったため、それらのチームはハート君のリクルーティングを中止します。その時すでに「D1(ディビジョン1部の略)」というあだ名までつけられていたハート君は、成績が悪かったために大学チームが彼への勧誘をやめたということを周囲に伝えることができず、そこから彼は嘘をつき始めます。

そして2008年2月1日、「ナショナルサイニングデー」がやってきます。彼は高校の体育館に多くの先生、コーチ、生徒を集めて彼の進学先発表会を開いたのです。もちろんこの時彼のことをリクルートしていたチームはありませんでした。そして彼はオレゴン大からオファーを蹴り、カリフォルニア大でプレーすることを大々的に発表したのです。

カリフォルニア大進学を発表したハート君。高校挙げてのお祝いムームもつかの間・・・
カリフォルニア大進学を発表したハート君。高校挙げてのお祝いムームもつかの間・・・

しかしその数時間後この嘘話がバレることになります(当たり前ですが)。当時のカリフォルニア大のヘッドコーチ、ジェフ・テッドフォード(Jeff Tedford)監督はハート君のことなど知らないし会ったこともないとハート君の高校へ通達してきたのです。この話が全米中のスポーツニュースの一面を飾ったことは言うまでもありません。

もちろん嘘をついたハート君に同情の余地はありませんが、これもカレッジフットボールのリクルーティングの産物といっても言い過ぎではないのかもしれません。

ちなみにこのハート君、この騒動からフットボールを辞めようとしましたが、カリフォルニア州の短大が彼にセカンドチャンスとしてチーム加入を勧め、そこで心を入れ替えたことが認められ、のちにNCAA2部のミズーリウエスタン州立大にスカラシップ選手として編入することが決まったのです。自分の過ちを認めそこから這い上がるところや、そんな彼に復活のチャンスが与えられたところにアメリカの懐の広さとかを感じますよね。

===

2017年度の「ナショナルサイニングデー」は明日2月1日です。今年も何かドラマが生まれることになるのでしょうか。ただ高校生をスーパースター扱いするのだけはなんとかならないものかと思ってしまいます・・・。

【関連記事】

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