昨季CBSの名物アナウンサーだったヴァーン・ランドクイスト(Verne Lundquist)氏がカレッジフットボールの実況から引退しました。そしてこの度彼と同じくらいアイコン的存在であったブレント・マスバーガー(Brent Musburger)氏も引退することがわかりました。
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シーズン前に昨季限りで引退することを表明していたランドクイスト氏と違い、マスバーガー氏の場合は今月末のカレッジバスケットボールの試合の実況をもってすべての実況から身を引くということで、実質的に先日のシュガーボウルが彼にとって最後のカレッジフットボールの仕事となってしまったのでした。
カレッジフットボールを代表する「声」
数々のスポーツシーンをその声で彩ってきたマスバーガー氏は2006年にスポーツ専門局ESPNのトップアンカーとして登場すると、2014年にはESPN傘下であるSEC(サウスイースタンカンファレンス)ネットワークの主力アナウンサーとして活躍。「You are looking live!」というフレーズは彼の決まり文句として愛されました。
「(かつて所属していた)CBSから(ESPNの親会社である)ディズニーに至るまで、なんと素晴らしい旅路であったでしょうか。私のスポーツに対する愛情が私に底のつくことのない喜びに満ちた人生を与えてくれました。もちろんスタジアムやアリーナが恋しくなることになるでしょう。その中でもこれまでの時間の中で関わってきた素晴らしい人たちとの時間が一番惜しまれます。」とマスバーガー氏は発表の中で述べました。
現在77歳になるマスバーガー氏の名前が全国区になったのは1973年のNFLの試合をCBSで実況したことに始まります。以来インディー500(アメリカのカートレース)、ワールドカップ、スーパーボウル、リトルリーグワールドシリーズなど多くのアメリカスポーツの実況に携わってきました。スポーツの一大イベントにマスバーガー氏の声あり、といっても過言ではないくらいです。
最近は問題発言も
ただ後年には彼のコメントが世間を騒がすと言う事件も起きています。例えば2012年度のナショナルチャンピオンシップゲームの実況を担当した時、アラバマ大QBのA.J.マカロン(A.J. McCarron)の当時の彼女であったキャサリン・ウェブさん(後に結婚してマカロンに改名)がテレビカメラに抜かれた場面があった時、彼女の美貌を実況してくれたのですが、彼女を褒めちぎる言葉があまりにもしつこくて(笑)話題になったこともありました。
また昨年婦女暴行疑惑で揺れていたオクラホマ大RBジョー・ミクソン(Joe Mixon)の復帰戦となったシュガーボウルでの彼のコメントが配慮に欠けていたと批判を浴びたばかり。ここ最近フットボール選手の女性への暴力事件が取り挙げられており、非常に敏感な時期での発言だったため、彼の発言は目立ってしまったのです。
(*マスバーガー氏の発言とは、要約すると「オクラホマ大のコーチ陣に話を聞いてみれば、みなミクソンは頑張っていると言っています。彼は全米でもトップレベルのRBです。彼に是非セカンドチャンスを与えて挙げて欲しい。そしてNFLで素晴らしいキャリアを送って欲しい」と話した事です。問題は暴行を受けた被害者の事を思いやるようなコメントが皆無であり、ミクソンがプレーすべきかどうかという当時の論調にすら触れる事もしなかったからです)
このコメントが原因で引退を決めたのではないかと言う憶測も流れましたが、ESPNはこれを完全否定。しかし残念ながらこの発言でマスバーガー氏のレガシーが汚されたと考える人もいるぐらいです。
どちらにしても先にも紹介した「You are looking live!」が聞けなくなるのは寂しい限りです。