イリノイ大の新監督に元NFLタンパベイ・バッカニアーズのヘッドコーチだったロビー・スミス(Lovie Smith)氏が就任しました。
イリノイ大と言えばつい先日(3月5日)ビル・キュビット(Bill Cubit)氏を解雇したばかり。この経緯がちょっといわくつき。
キュビット氏は先シーズン開幕直前に解雇されたティム・ベックマン(Tim Beckman)氏に代わり臨時ヘッドコーチを引き受けた人物です。そしてつい3ヶ月前2年契約で正式にヘッドコーチに就任したばかり。そして今回新しく体育局長(AD)に就任したジョシュ・ウィットマン氏はキュビット氏を解雇。その後釜にスミス氏を据えたのです。
ウィットマン氏がキュビット氏を解雇したのが春季トレーニングが始まる1週間前であった事を考えるとウィットマン氏が何が何でもリーダーシップを変えたがっていたことが伺えます。タイミングを考えるとかなりリスキーな決断だったと言えますが、スミス氏を射止めることが出来た事を考えればこのギャンブルは賭ける価値があったと言うものです。
イリノイ大の新監督となったロビー・スミス氏
しかしスミス氏を招聘する事もまたギャンブルであると言わざるを得ません。スミス氏は1995年にオハイオ州立大のDBコーチであったのを最後にカレッジフットボールから約20年も遠ざかっているからです。
それでもこのリスキーな改革が必要だったのはイリノイ大はここまで4年連続負け越しシーズンを送り、またベックマン元監督がチームに残していった爪痕(ベックマン監督は選手に対する虐待を疑われ解雇されました)に未だ悩まされているからです。
スミス監督といえば前職場であるタンパベイバッカニアーズよりもその前のシカゴ・ベアーズでのヘッドコーチ業で有名です。スーパーボウルにも出場した事のあるスミス氏率いるベアーズは2004年から2012年までで81勝63敗。タンパベイでは2年間ヘッドコーチを務めましたが、上手い事結果が付いて来ず、 昨シーズン終了後に解雇されてしまいました。しかしタンパベイから解雇された理由は成績というよりも内部のいざこざに巻き込まれたというのが本当のところのようです。コーチとしての手腕は折り紙付きで、2012年にベアーズを解雇になった時も10勝を挙げておりスミス監督が落ち目であるとは言い難いです。ちなみにこの10勝という数字、イリノイ大の歴史を紐解くとこれまでなん3シーズンしか10勝以上挙げたことがないのです。
Big Tenカンファレンスで常に下位でくすぶっているイリノイ大ですが、新しいADのもとスミス監督を招聘したということはイリノイ大が本気でフットボール部を強くしようとしているサインだと思います。確かにスミス監督はカレッジレベルでのヘッドコーチ歴はありませんが、単純にコーチとしての履歴書を見ればカンファレンス内でもトップレベルです。不安なのはリクルーティングの経験がほぼないこと。これは凄腕のコーディーネーターを雇うことでなんとかなりますし、何よりも「あのロビー・スミスが監督のチーム」という事実だけでリクルートの目を引き付けることは大いに可能だと思います。
イリノイ大が最後に全米の檜舞台に登場したのはローズボウルに出場した2008年。この年、全米1位だったオハイオ州立大を敵地で破るなど快進撃を見せたのですが、それ以降ランクされているBig Tenチームに対し18連敗中です。このように2008年以降目立った活躍がなかったところ、良くもなく悪くもなかったキュビット監督を正式なヘッドコーチに昇格させたのは無難すぎる決断でした。
ですから新ADであるウィットマン氏の今回の決断は大きな賭けではありますが、賭ける価値のある決断だったと言えます。スミス監督がカレッジレベルで、そしてイリノイ大でどこまでやれるか今から楽しみです。