いよいよ今季のレギュラーシーズンスケジュールも残り僅かとなりました。来週は各カンファレンスの優勝決定戦が行われますが、その大半のマッチアップが既に決まっているとはいえ今週の試合の結果でその大舞台に駒を進めることができるかどうかが決まるチームもいます。そういったチームたちにとっては当然今週の試合は大変重要になってきます。
ここまで新型コロナウイルスのパンデミックと背中合わせの生活を強いられながらもシーズンを過ごしてきた選手やコーチたちにとっては勝っても負けても忘れられないシーズンとなるでしょう。そんなレギュラーシーズン大詰めとなる第15週目の見どころをご紹介します。
目次
The Game of the Week
海軍士官学校 vs 陸軍士官学校
従来この海軍士官学校と陸軍士官学校の伝統の一戦はすべての日程が終わった後の週に唯一のゲームとしてプレーされるのが常でした。しかし今年は新型コロナウイルスの影響でスケジュールが変則となった上に、シーズン中に多くの試合が延期となったためにその振替開催のために今週末にはこの試合以外にも沢山の試合が行われることになっており、その中にこの一戦が埋もれてしまっているところを多少残念と感じてしまいますが・・・。
サービスアカデミーと呼ばれる士官学校はFBS(フットボールボウルサブディビジョン)に3つあり、この2チームと空軍士官学校の3つで「総司令官杯(Commander in Chief Trophy)をかけて三つ巴の戦いを繰り広げます。しかし歴史的に見てこの陸軍士官学校と海軍士官学校のマッチアップは特別。どんなにカレッジフットボールの勢力図が変わり彼らがランクされなくなったとしてもこの試合は永遠に語り継がれていく一戦なのです。
今年はコロナの影響でいつもの会場であるフィラデルフィアイーグルスの本拠地、リンカーンファイナンシャルフィールドでの開催を断念し陸軍士官学校のホームスタジアムであるマイキースタジアム(ニューヨーク州ウエストポイント市)で行われることになります。この試合が中立地でない場所で行われるのは1943年以来となりそういった意味では歴史的な試合となるのです。
そしてこの試合に先駆けて両チームはスペシャルユニフォームを披露。どちらも気合の入っている超かっこいいデザインとなっています。
America's Pacific Division.
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🔗 https://t.co/YRjoP3pfPw#TropicLightning pic.twitter.com/24gefrGISm
175 years of history, tradition, and honor all lead to this.
— Navy Football (@NavyFB) December 1, 2020
The 2020 Army-Navy Uniform#BeatArmy | #BuiltDifferent pic.twitter.com/Ffc5SIkeAZ
そして極めつけは現アメリカ大統領のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏も観戦する「天覧試合」となります。
試合の方はというと、どちらのチームも古き良きトリプルオプションの使い手。ここまで陸軍士官学校は1試合平均296ヤードで全米3位、海軍士官学校は185ヤードで全米45位と今年は海軍士官学校が苦戦していて数字が低めとはいえどちらもランヘビーなチーム。オプション大好きな筆者としては生唾者のマッチアップなわけです。
おそらく試合後のスタッツを見たら両チーム合わせて投げたパスの回数が10以下であっても決して驚きません。ナショナルタイトル関係なし。ランキング関係なし。ただ自分たちのプライドと威厳を掛けて相手を倒すというなんとも純粋なこの伝統の一戦。カレッジフットボールならではの雰囲気を存分に味わいたいと思います。
Top 25チーム
アラバマ大(1位)@ アーカンソー大
全米1位のアラバマ大はレギュラーシーズン最終戦としてアーカンソー大へ赴きます。この試合での勝利はほぼ確定とも言えるでしょうから注目はアラバマ大のアミーゴ、QBマック・ジョーンズ(Mac Jones)、RBナジー・ハリス(Najee Harris)、WRデヴォンテ・スミス(DeVonta Smith)がどれほどの数字を残せるかというところでしょうか。
ジョーンズはハイズマントロフィー候補に名が挙げられており、他の候補選手に差をつけるためにもこの試合でビッグナンバーを叩き出したいところ。また今季RBとして最多TD数(20)を記録しているハリスも年間最優秀RB症であるドーク・ウォーカー賞を手に入れるためにもうひと押しが欲しいところですし、スミスに至っては先週のルイジアナ州立大戦での230ヤード超えのパフォーンスを見せたことで彼もハイズマントロフィー候補に名が上がるほどになりましたから、今週末にさらなる記録を残せばジョーンズとともにトロフィー授賞式に招待される可能性だって残されています。
ただ彼らを指揮するニック・セイバン(Nick Saban)監督は業界で最も規律を求める厳しい指導者として知られており、おそらくチームが個人賞を取りに行くためだけにプレーするということは考えれません。あくまで彼らが目指すのはSECタイトル及び全米王者奪回。それを目指していく過程の副産物として上に挙げた選手たちの記録が伸びていく・・・これがアラバマ大の強さの真骨頂なんだと思います。
ルイジアナ州立大 @ フロリダ大(6位)
もともと10月17日に行われる予定だったこの試合はフロリダ大で新型コロナウイルスが発生して今週まで延期を余儀なくされました。この時フロリダ大のダン・マレン(Dan Mullen)監督は自身のスタジアムを満員にすると豪語して批判を食らっていましたが・・・。
既にSEC東地区を制しているフロリダ大(8勝1敗)にとって現在3勝5敗のルイジアナ州立大はたとえスタジアムが無観客であったしても敵ではないでしょう。翌週に行われるアラバマ大とのSEC優勝決定戦にむけての最終調整としては丁度いいのかもしれません。
またハイズマントロフィー候補の最右翼とも言われるQBカイル・トラスク(Kyle Trask)にとっては投票者たちへのアピールとしてこの試合でとんでもない数字を残しておきたいところです。彼の相棒とも言えるTEカイル・ピッツ(Kyle Pitts)とのホットラインが見ものです。
ジョージア大(9位)@ ミズーリ大(25位)
現在6勝2敗でCFPランキング9位のジョージア大は既に東地区優勝を逃しており、彼らが目指すのはポストシーズンのボウルゲームのラインアップの中でも最上位と言われる「ニューイヤーズ6」ボウルのいずれかの試合に招待されること。そのためのアピールとしてはレギュラーシーズン終盤でランカーのミズーリ大(25位)と対戦できることは幸運と言えるでしょう。
サザンカリフォルニア大からの転校生QBであるJ.T.ダニエルズ(J.T Daniels)が先発を任されて以来ジョージア大のオフェンスはボールを散らせるようになって攻撃に幅が広がりました。強力なOL陣を盾にこのミズーリ大戦でも相手DB陣に挑戦状を叩きつけてくるに違いありません。
一方ミズーリ大は今季初年度となるイーライ・ドリンクウィッツ(Eli Drinkwitz)監督の下ここまで5勝3敗と周囲を驚かす健闘を見せています。それは前評判の高かったドリンクウィッツ監督のフットボールIQの高さを物語る緻密なオフェンスと過小評価され続けるディフェンス陣が上手くミックスされた非常にバランスの取れたチームであるからにほかありません。
注目はQBコナー・バザラック(Connor Bazelak)が強力なジョージア大相手にダニエルズとどれほどの投げ合いを見せることができるかです。
ノースカロライナ大(17位)@ マイアミ大(10位)
ACC(アトランティックコーストカンファレンス)の優勝決定戦は既にノートルダム大とクレムソン大の対戦と決まってしまいましたので、このノースカロライナ大(7勝3敗)とマイアミ大(8勝1敗)の対戦は大局的に見ると意味のないものなのかもしれませんが、おそらく今週行われる試合の中でも最もエキサイティングな試合になる予感がプンプンするマッチアップ。
お互いがパワフルなオフェンスを擁するチームであるため点取合戦が大いに期待できそうなこの試合。ノースカロライナ大はRBマイケル・カーター(Michael Carter)とジャヴォンテ・ウィリアムス(Javonte Williams)の2段構えのランアタックとQBサム・ハウウェル(Sam Howell)のパスアタックを擁する得点力の高いオフェンスを擁するチーム。一方のマイアミ大はQBデリック・キング(D’Eriq King)を中心に若くタレント力なるWR陣で敵陣深く切り込める力を持っています。
マイアミ大は唯一の敗戦となったクレムソン大戦を除き白星を重ねまくって8勝1敗という好成績を残しましたが、先にも挙げたクレムソン大とノートルダム大にスポットライトを奪われあまり話題にあがらない不運なチーム。しかしこのノースカロライナ大戦に勝利して9勝1敗としなおかつクレムソン大とノートルダム大が共にCFP入りを果たせば、マイアミ大がACC代表として「ニューイヤーズ6」ボウルの一つであるオレンジボウル出場が見えてきます。
サザンカリフォルニア大(15位)@ UCLA
CFP15位のサザンカリフォルニア大(4勝0敗)は短いPac-12カンファレンスシーズンながらここまで無敗。このUCLA(3勝2敗)戦を勝ち抜けば同カンファレンス南地区でコロラド大を振り切って地区優勝を果たしタイトルゲームに進出を決めます。
昨年の対戦ではサザンカリフォルニア大のQBキードン・スロヴィス(Kedon Slovis)がUCLAディフェンス相手に515ヤードのパスを記録し粉砕。しかし今年のUCLAは昨年とは一味違います。昨年は文字通りFBSでビリだったパスディフェンスは今年全米で130チーム中61位にまで向上。またQBサック数は全米8位、タックル・フォー・ロス(TFL)は全米16位と軒並み数字を伸ばしています。
今季で3シーズン目を迎えるチップ・ケリー(Chip Kelly)監督体制となって今の所もっとも調子のいいチームである今年のUCLA。果たしてライバルのタイトルゲーム出場の夢を砕くことができるでしょうか。
ユタ大 @ コロラド大(21位)
現在Pac-12カンファレンス戦績3勝0敗(トータル4勝0敗)でタイトルゲーム進出の可能性を残しているコロラド大はユタ大と対戦。この試合は西海岸時間で朝9時(東海岸時間で12時)キックオフと彼らにしてみれば非常に早いキックオフ。それはもともとこの時間に開催が予定されていたオハイオ州立大とミシガン大の試合がキャンセルとなり、この試合を放映する予定だったFOXが急遽その埋め合わせとしてこのマッチアップをねじ込み、そのとばっちりを受けてこの様な早朝キックオフとなったのです。おそらく起床は朝4時台となるでしょうから、選手やコーチ、スタッフらにとっては大きなチャレンジとなります。
現在コロラド大はユタ大に3連敗中。当然この連敗記録を打ち止めにしたいところですが、それ以上にコロラド大としてはこの試合に勝ちサザンカリフォルニア大がUCLAに負ければ彼らのタイトルゲーム出場が決まりますから、この試合がコロラド大にとってどれほど大きな意味を持っているかがおわかりいただけると思います。
注目はコロラド大2年生RBジャレク・ブロサード(Jarek Broussard)。先週のアリゾナ大戦では足だけで301ヤードを獲得。ユタ大ディフェンス相手にどれだけのヤードを稼げるか見ものです。
その他
バージニア大 @ バージニア工科大
「コモンウェルスカップ」をかけて争われるライバリー。バージニア工科大はここまで4勝6敗と負け越しが決定していますが、この試合にも負けて4勝7敗となると今季5季目のジャスティン・フエンテ(Justin Fuente)監督の去就問題にも発展するかも。
テネシー大 @ ヴァンダービルト大
ヴァンダービルト大はここまで0勝8敗。2週間前に女性キッカーのサラ・フラー(Sarah Fuller)さんが出場して話題をさらいましたが、一方でデレク・メイソン(Derek Mason)がシーズン終了を待たずに解雇されるなどフィールド上での出来は惨敗。そんなヴァンディーに対峙するのは同じく期待を裏切るシーズンを送っているテネシー大(2勝6敗)。今季3季目のプルイット監督はここまで通算15勝18敗と古豪復活から遠ざかっており、ひょっとしたらこの試合がテネシー大監督として最後の試合になるかもとも噂されています。テネシー州内ライバルのこの試合に負ければその噂は現実のものとなってしまうかもしれません。
アラバマ大バーミンガム校 @ ライス大
カンファレンスUSAのアラバマ大バーミンガム校がこの試合に勝てばカンファレンス優勝決定戦に出場が決定。負ければその権利はテキサス大サンアントニオ校のものに。
ウエスタンミシガン大 @ ボール州立大
この試合の勝者がミッドアメリカンカンファレンスの優勝決定戦に出場。既に進出を決めているバッファローとの対戦が確定に。
サンノゼ州立大 @ ネバダ大 / ボイジー州立大 @ ワイオミング大
マウンテンウエストカンファレンスの優勝決定戦出場チームを決めるのに重要なマッチアップ。フレズノ州立大(5勝0敗)、ネバダ大(6勝1敗)、ボイジー州立大(4勝0敗)の三つ巴の戦い。試合の結果によって複数のシナリオが考えられます。