目次
クレムソン大(1位)@ ノートルダム大(4位)
クレムソン大とノートルダム大の対決はシーズンが始まるずっと前から既に決まっていたマッチアップでした。当然名門同士の対決とありこの対決が決まった時点で大変楽しみな試合だったのですが、新型コロナウイルスのパンデミックが起きて各カンファレンスが主にリーグ戦のみのスケジュールに移行したせいでどのカンファレンスにも属さない独立校(無所属)のノートルダム大は対戦相手を失う大きな危機に面しました。
そんな折彼らに手を差し伸べたのはACC(アトランティックコーストカンファレンス)。元々アメフト以外の部活動においてノートルダム大はACCと縁があるチームだったのですが、今季のみ限定で彼らがACCに所属することになりました。これは創部当時から独立校を貫いてきたノートルダム大にとって期間限定とは言え歴史的事項となったのです。
そんな理由でこのクレムソン大とノートルダム大のマッチアップはただ単に大御所同士の試合というだけでなく、ACC優勝決定戦出場を占う上でも非常に重要な意味を持つことになりました。
両チームはこれまで4度の対戦経験があり、最後に相まみえたのは2018年度シーズンのCFP準決勝戦だったコットンボウル。この試合では当時1年生だったQBトレヴァー・ローレンス(Trevir Lawrence)率いるクレムソン大が30対3で圧勝。彼らはそのままタイトルゲームでアラバマ大を退けてナショナルタイトルを獲得しました。
そのローレンスは今季ハイズマントロフィー最有力候補として活躍し続けましたが、先週新型コロナウイルスに感染したことが発覚しボストンカレッジ戦を欠場すると今週のノートルダム大も引き続き不出場となることが明らかになりました。試合にはコーチとしてチームに帯同するということですが、チームの大黒柱とも言えるローレンスを欠くことは板で以外の何物でもありません。
彼の代役を務めるのは1年生のD.J.ウイアンガラレイ(D.J. Uiagalelei)。2020年度のリクルーティングクラスで全米でもトップレベルのQBであるウイアンガラレイは身長6フィート5インチ(約195cm)に体重250パウンド(約113kg)という既に超カレッジ級のフレームを持つ大型ルーキー。先週ボストンカレッジ戦に出場し342パスヤードに2TD、25ランヤードランに1TDと初先発としては十分すぎる数字を残しました。
ボストンカレッジ戦では前半に28対13と大きくリードされながらも後半怒涛の反撃を見せて逆転勝利しましたが、これは新人ウイアンガラレイのせいではなく、むしろ手薄なディフェンス陣が大きな原因でした。ディフェンスの中心人物であるLBジェームス・スカルスキ(James Skalski)LBマイク・ジョーンズ(Mike Jones)、DLタイラー・デイヴィス(Tyler Davis)らが怪我で欠場したのが響きましたが、今回のノートルダム大戦でも彼らの欠場が既に発表されています。
これを考えるとノートルダム大にとってこれはまたとないチャンスだと考えるべきでしょう。ローレンスやスカルスキら主要メンバーが欠場ししかも会場がホームスタジアムとあればノートルダム大にとって全米1位チームを負かす上で願ってもない追い風となるはずです。
ノートルダム大が最後にトップ5チームを倒した試合は1993年に行われた当時1位のフロリダ州立大戦(2位だったノートルダム大が31対24で勝利)まで遡らなければならず、以来現在まで彼らは全米が注目する大舞台で成果を挙げることが出来ていません。ともすれば今回のこの状況はこの悪しき風習を断つためにも願ったり叶ったりなわけです。
どちらのチームにとってもたとえこの試合で負けたとしてもACC優勝決定戦に進出する可能性は極めて高いと言われています。ですから今週末の激突が彼らの運命の分かれ道となるとまではいかなそうです。どちらが負けてもACC優勝決定戦で再戦となればそこで勝ちさえすればCFP進出も夢ではないからです。
しかしだからといって負けても結構、というわけにはいきません。特にそれはノートルダム大に言えることです。なぜならもし次にACC優勝決定戦でクレムソン大と手合わせするときにはおそらくローレンスにしろスカルスキにしろデーヴィスにしろ怪我で欠場している選手は復活していることでしょうし、そうなればそのように万全なクレムソン大にタイトルゲームで勝つというのは非常に厳しくなるからです。だからこそ今週末に手負いのクレムソン大に勝っておくべきなのです。そういった意味ではノートルダム大のほうがプレッシャーを感じているはずです。
ノートルダム大はトータルディフェンスで全米8位(先日開幕したばかりのBig TenとMWCを除けば3位)で7位のクレムソン大ディフェンスと肩を並べるほどの力を持っています。これはクレムソン大オフェンスが今季ここまで対峙してきたディフェンスの中でも最も強力なユニットとなります。このディフェンスが1年生で経験不足のQBウイアンガラレイにプレッシャーをかけ続けることができれば、ミスを誘って流れを自分たちに引き寄せることが出来るかもしれません。
またQBイアン・ブック(Ian Book)は今年4年生のベテラン選手。ローレンスのようなNFL即戦力となり得るようなエリートQBというわけではありませんが、彼の経験値とプレーメーカーというよりはゲームマネージャーとしての能力を発揮することができればディフェンス次第でボールコントロールに徹するスタイルで金星を獲得できるかもしれません。
ただもともと才能のあるウイアンガラレイにプレッシャーを掛けることが出来ずにパスと足でやられてしまうと、ノートルダム大はオフェンスが点取合戦をやり合うほどの力を持っていないために苦しい展開となります。
どちらにしてもここまで首位を守ってきたクレムソン大にとっては今季ここまでで最強の相手となるノートルダム大との試合となれば盛り上がること間違いなし。果たして勝利の女神はどちらに微笑むでしょうか?
ジョージア大vsフロリダ大@ジャクソンビル市
昔から「世界最大の屋外カクテルパーティー(The World’s Largest Outdoor Cocktail Party)」と呼ばれてきたこのライバリーゲーム。ジョージア大が5位、フロリダ大が8位とこの試合も上記の試合と同じくらい大規模な試合となります。
ジョージア大は最強の盾を持つ守備力重視のチーム。カービー・スマート(Kirby Smart)監督はかつてアラバマ大で長年ディフェンシブコーディネーターを務めていたこともあり、彼の操る守備陣は今季トップクラス。特にランディフェンスは全米6位(1試合平均の被ランヤードが80ヤード)ということで彼らを走り負かすのは困難です。
一方のフロリダ大は最強の矛を持つ攻撃力重視のチーム。スコアリング(得点)オフェンスでは全米12位となる1試合平均42点というハイパワーな攻撃陣。これを引っ張るのがQBカイル・トラスク(Kyle Trask)と彼の頼れるターゲットであるTEカイル・ピッツ(Kyle Pitt)のタンデム。TEながらピッツはこれまでチーム1位のレシーブヤード(355ヤード)とTD(7)を誇っており、さしずめタンパベイバッカニアーズのトム・ブレディ(Tom Brady、元ミシガン大)とロブ・グロンコウスキー(Tom Gronkowski、元アリゾナ大)ペアのミニチュアバージョン(褒め過ぎか?)。
またフロリダ大のダン・マレン(Dan Mullen)監督はかねてからオフェンスの奇才とも呼ばれてきた敏腕監督であり、相手とのミスマッチをすかさずついてくる頭脳派。この重量オフェンスとジョージア大の鉄壁ディフェンスの対決は必見です。
共に1敗を喫しているため負けたチームはCFPレース並びにSECタイトルゲーム進出レースから脱落。いつもなら会場となるジャクソンビルジャガーズの本拠地TIAAバンクフィールドはフロリダ大の青とジョージア大の赤で真っ二つに割れますが、今年はパンデミックのせいで満員には程遠い状態。スタジアムの盛り上がりは半減以下となるでしょうが、試合の内容はおそらく烈火のごとく熱いものとなるでしょう。
スタンフォード大 @ オレゴン大(12位)
いよいよ開幕するPac-12カンファレンスの試合の中でも優勝候補筆頭のオレゴン大と昨年の負け越しシーズンを挽回したいスタンフォード大の試合は必見。ここまで長きに渡り開幕を待ち続けてきた彼らが一体実戦でどこまでやれるのかを見るいい機会です。
オレゴン大はリクルーティングで近年成功しており、同カンファレンスで最もCFP出場に近いチームとされていますが、今年はパンデミックの影響でDB陣4人中3人がオプトアウト。この状況でオレゴン大が下馬評通りの力を発揮できるのかに注目したいところ。
ミシガン大(23位)@ インディアナ大(13位)
先週ミシガン州立大にまさかの敗戦を食らったミシガン大が今季ここまで2連勝で13位まで順位を伸ばしてきたインディアナ大に乗り込みます。
ミシガン州立大に負けはしたものの、試合の内容自体は決して悪いものではなかったミシガン大。いくらインディアナ大が調子がいいとはいえミシガン大が倒せない相手ではないはずです。しかしもしものことがありインディアナ大が勝ってしまったとしたら、その時はジム・ハーボー(Jim Harbaugh)監督にはさらに逆風が吹き付けることになるでしょう。
アリゾナ州立大 @ サザンカリフォルニア大(20位)
Pac-12南地区では開幕初戦から既に本命チームと対抗チームが激突する贅沢なカードがこれ。サザンカリフォルニア大にはキードン・スロヴィス(Kedon Slovis)、アリゾナ州立大にはジェイデン・ダニエルズ(Jayden Daniels)という二人の優秀なQBが健在。全体的なタレント力で言えばサザンカリフォルニア大のほうが上ですが、ことパンデミック下の現状では何処まで実戦形式の練習が出来たのかは知る由もありません。
またこの試合はアメリカ東部時間12時キックオフ。しかし現地である西海岸では朝9時という超早朝試合。この事もまた間接的に両チームに何かしらの影響を及ぼすかもしれません。
ちなみに・・・
今週も新型コロナウイルスの影響でキャンセルないし延期となる試合が続出。その数は10試合にも上りますがこれは今季開幕以来最多となる開催不能試合の数となります。
ユタ大🆚アリゾナ大
ウィスコンシン大🆚パデュー大
ルイビル大🆚バージニア大
空軍士官学校🆚陸軍士官学校
タルサ大🆚海軍士官学校
ノーステキサス大🆚ルイジアナ工科大
フロリダインターナショナル大🆚UTEP
シャーロット🆚ミドルテネシー州立大
テキサス大サンアントニオ校🆚ライス大
今週10週遅れでようやく開幕を迎えるPac-12カンファレンスですが、ワシントン大/カリフォルニア大、ユタ大/アリゾナ大の2試合が早くもキャンセル。またBig Tenカンファレンスのウィスコンシン大も先週に引き続き今週末も試合開催が不可能となり、来週のミシガン大戦も試合が行えなくなるとBig Tenカンファレンスタイトルゲームに出場できる最低限の試合開催数を確保できなくなってしまいます。
また空軍士官学校と陸軍士官学校のサービスアカデミー対決も開催を見合わせることに。この2チームに海軍士官学校を交えた三つ巴で争われる「総司令官杯」の授与にも影響が出るのかもしれません。
全米で新型コロナウイルスの感染数がまた増加の一途をたどっています。今後もこのように開催不可能となる試合がどんどん出てくるでしょうね。