2012年にテキサスA&M大がBig 12カンファレンスからサウスイースタンカンファレンス(SEC)に電撃移籍した時の驚きは今も覚えています。この時は同じくBig 12所属だったミズーリ大も共にSECに鞍替えしたのですが、まずロケーションから言って従来のチームの分布図から少々外れていますし、何よりもあまりにも両チームがBig 12での印象が強すぎてSECチームとなることが奇妙に思えたからです。
テキサスA&M大がカンファレンスを変えるということは、長らくライバル関係を継続してきた同じテキサス州内のテキサス大とのマッチアップが難しくなることを意味しています。異なるカンファレンス同士なら双方が絶対にその伝統を継続するという強い意思がない限り、交流戦(ノンカンファレンスゲーム)としてテキサス大対テキサスA&M大のライバリーを毎年スケジュールに組み込むのは簡単ではないのです。
一方で例えばジョージア大(SEC)vs ジョージア工科大(アトランティックコーストカンファレンス)やサウスカロライナ大(SEC)vs クレムソン大(アトランティックコーストカンファレンス)などは異なるカンファレンスチーム同士でも長年そのライバル関係を維持し毎年シーズン最終戦で対戦し続けています。そのライバル関係が両チームにとって大きな意味を持つのであれば、毎年恒例のマッチアップとして継続することは可能なわけです。つまりライバリーを続けるか否かはそれぞれのチーム次第な訳ですね。
2003年から2012年までテキサスA&M大の体育局長を務めたビル・ブリン氏は2012年にチームがカンファレンスを乗り換えたのを指揮した人物ですが、当時違うカンファレンスになることになってもライバルのテキサス大との対戦は引き続き行われると思っていました。
「テキサス大の体育局長(デロス・ドッズ)は我々がBig 12を出ることになった時、『テキサスA&M大とは2度と試合をしない』と言ったのです。そしてさらに彼はベイラー大ら同じカンファレンスに所属するチーム達にも我々との試合を組まないようにと釘を刺していたと言います。さらに他の外部からの圧力もありどのチームも我々と2度と対戦しないようにというメッセージが広められたのです。」
裏切り者は完全に切り捨てる・・・。確かに当時はかつてと違ってその総合力が衰えていたBig 12カンファレンス。一方長いことカレッジフットボール界をリードしてきたSEC。Big 12所属チームらとしてはSECに追いつき追い越せと一致団結しなければいけない状況だったのにも関わらず、SECのもつマネーパワーを追い求めて出て行くテキサスA&M大を面白く思わなかったのでしょう。
テキサス大とテキサスA&M大のライバリーは歴史的に見ても大変重要な位置付けをされてきました。テキサス州というフットボールが最も盛んと言っても過言ではない州において、そのフラッグシップチームであるテキサス大と、それに勝るとも劣らないテキサスA&M大の対戦は数々のドラマを生んできたからです。ですからこのような形でこのライバル対決が見られなくなるのはファンとしては非常に残念です。
ただSEC所属となったテキサスA&M大はアラバマ大、ルイジアナ州立大、アーバン大と言った強豪校と毎年対戦しなければならなくなったため、テキサス大と対戦するほどの余力を持っていないとも言えます。それだからか、もしくは恨み節を込めてか、ブリン氏は「我々はもうテキサス大とは対戦する必要はなくなった」と付け加えました。
もっとも、このライバリーの対戦成績は76勝37敗5分けでテキサス大が圧倒的にリードしています。1915年から2011年まで続いた貴重なライバリーでしたが、もしテキサスA&M大が厳しいSECのスケジュールに加えてテキサス大とも毎年対戦していたら、最大の目標であるナショナルタイトルへの障害にもなりかねません。テキサス大に見限られたのはかえってよかったのかも?!