NCAA(全米大学体育協会)の1部の中でも下部のサブディビジョンと言われているのがFCS(フットボールチャンピオンシップサブディビジョン)ですが、そのFCSに所属するチームの一つであるサンディエゴ大でちょっとしたお家騒動が・・・。
3月21日、サンディエゴ大体育局は、同大学で10年間HCとしてチームを指揮してきたデイル・リンジー(Dale Lindsey)監督がコーチ職から引退すると公式に発表しました。
御歳80歳となるリンジー監督は学生時代にケンタッキー大とウエスタンケンタッキー大でプレーし、卒業後はクリーブランドブラウンズやニューオーリンズセインツでLBとしてプレー。現役引退後はブラウンズでLBコーチに就任し指導者の道を歩み始めます。
その後はNFLだけでなくCFLやUSFLなどを転々としますが、2000年代に入ると指導の場をカレッジに移し、そして2013年から昨年までサンディエゴ大でHCを勤めるに至りました。
長いコーチング歴の中でも唯一となる監督業を任されたサンディエゴ大では10年間で80勝30敗を記録。これはサンディエゴ大の歴代の監督の中では最多勝利数。また10年間で所属するパイオニアーフットボールリーグ内で実に7度ものカンファレンスタイトルを獲得するなどサンディエゴ大フットボール部でその名を馳せた人物です。
そのリンジー監督が引退するという発表があったのですが、不自然だったのは引退発表の中にはリンジー監督自身のコメントはなく、あったのは体育局長(AD)のビル・マギリス(Bill McGillis)氏の声明だけでした。
しかし・・・
この勇退表明が行われた直後、今度はリンジー監督から思いもよらぬ言葉が。
“I did not f—ing retire. I was shown the door and would like to coach. That’s my story, and I’m sticking to it.”
(私は引退などした覚えは全くない。まだコーチするつもりだったのに追い出されたのだ。これが紛れもない真実だ。)
大学側は「引退」だといい、監督本人は「解雇」だと言っているわけですね・・・。
確かに、過去には引退とは名ばかりの解雇処分という事例は多々ありました。しかしそれは大抵の場合双方合意の上での決断であって、たとえ実質解雇処分でも引退だったり、合意の上での辞任という口裏合わせがあるものなのです。
しかし今回のサンディエゴ大の場合は明らかに双方の主張が異なっており非常に不可解です。
リンジー監督はインタビューの中で、「自分が80歳ということは当然承知しているが、まだまだ監督としてやれる能力は残っている。これまで長いことコーチしてきた指導者が引退した途端に老いていく姿を何人も見てきたが、自分はそんなふうになりたくもないし、引退するつもりも毛頭ない」と豪語しているようです。
一方でADのマクギリス氏は「リンジー監督はファンタスティックなコーチであり、これまでチームの規範となり、サンディエゴ大の目指す価値観を体現して若い学生アスリートたちに教育の大事さを教え、のちの人生の糧になるよう導いてくれる素晴らしい人物です。近い将来リンジー監督の素晴らしいキャリアを讃えるため機会を設けたいと思っています。」とコメント。
しかし双方がこのような状況になってそんな機会を設けることができるのでしょうか・・・。