1月9日夜に行われた、今年のCFP(カレッジフットボールプレーオフ)準決勝戦第1戦目のオレンジボウルではノートルダム大がペンシルバニア州立大(ペンステート)を27対24で下して見事1月20日に行われるCFP全米王座決定戦に駒を進めることになりました。
今回はこの激戦となったオレンジボウルを振り返っていきます。
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前半
前半はディフェンシブな展開で両チームともスコアリングに苦しみます。予想通りランを主体に攻撃を組み立てるペンステートに対し、立ち上がりは予想外にもパスをチョイスしてきたのノートルダム大。それが祟ったのか、ノートルダム大の2度目のドライブではQBライリー・レナード(Riley Leonard)のパスをペンステートSゼキ・ウィートリー(Zakee Wheatley)が見事にインターセプト。
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ペンステートはプレーオフにおいてファーストラウンドのサザンメソディスト大(SMU)戦で3つ、準々決勝戦のボイジー州立大戦でも3つのパスINTを記録しており、ウィートリーのこのピックでプレーオフだけで合計7つ目のINTとなりました。
ペンステートの3度目のドライブは14プレーと重厚なものに。途中QBドリュー・アラー(Drew Allar)のパスがインターセプトされるもディフェンスホールディングで事なきを得、さらに攻め込むペンステートでしたが、相手陣内1ヤードラインまで攻め込むもゴールラインを割る事は叶わずFGを選択してまずはペンステートが3点先制します。
ノートルダム大はレナードの機動力と怪我で出場が心配されていたRBジェレマイア・ラヴ(Jeremiyah Love)の二人の脚力を使ってペンステート陳内へ攻め込みますが、レッドゾーンに近づくことはできず、強力なペンステートのディフェンス力を見せつけられることになります。そのノートルダム大が攻めあぐむ中、ペンステートは今度は15プレーという7分強のロングドライブを展開。RBニック・シングルトン(Nick Singleton)、RBケイトロン・アレン(Kaytron Allen)、TEタイラー・ワレン(Tyler Warren)という、ペンステートオフェンスのトリオがランでノートルダム大ディフェンスをジリジリと後退させ、最後はシングルトンの5ヤードランTDが決まってスコアを10対0とします。
TOUCHDAHN NICK SINGLETON
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点差はたったの10点でしたが、強力なペンステートを前にしてこの点差はそれ以上の脅威に感じたであろうノートルダム大はなんとしても前半終了までにこの差を詰めたいところでした。しかし、残り時間2分強で自陣25ヤード地点からの攻撃となった彼らはレナードのパスでなんとか前進をはかりますが、なんとそのレナードが相手選手からのタックルを受けた際に頭部を強打。脳震とう(Concussion)の疑いのため一時退場を余儀なくされてしまいます。
Riley Leonard went into the medical tent for a possible head injury after taking this hit late in the second quarter.
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Leonard was replaced by backup QB Steve Angeli. pic.twitter.com/PAd4UtuNe3
さらにOLの最重要ポジションであるLTを務めていたアンソニー・ナップ(Anthonie Knapp)も下半身への怪我で負傷退場を余儀なくされるというピンチを迎えてしまいます。ただ、レナードの代役として出てきたスティーヴ・アンジェリ(Steve Angeli)は予想外にも落ち着いたポケットワークでパスを成功させ続けレナード不在のノートルダム大のオフェンスをなんとか指揮します。途中サックを食らってボールをファンブルするも味方OLがリカバーする幸運にも助けられ、最後はKミッチ・ジェター(Mitch Jeter)の41ヤードFGをお膳立て。前半を10対3で折り返します。
後半
前半はペンステートが141ヤードをランで稼ぐ中、ノートルダム大はたったの15ヤード。ただレナードとアンジェリのパスが要所で決まっていたためパスヤードはペンステートの53ヤードに対してそのおよそ倍となる107ヤードに。どちらにしても勢い的にはペンステートが完全に試合の流れを牛耳っているように見えました。
しかし後半先攻だったノートルダム大はその最初のドライブで魅せます。ランプレーを連発してガンガン攻め込むノートルダム大でしたが、さらに脳震とうで出場が危ぶまれたレナードが試合に復帰。そして彼は怪我の心配をすぐさま払拭させてくれるような冴えたプレーを連発してくれました。特に控えRBアネヤス・ウィリアムス(Aneyas Williams)へのバックショルダーパスは痺れました。
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そして最後はその怪我から復帰したばかりのレナードがQBドローで3ヤードのランTDを決めます。脳震とうの疑いがあったQBのプレーとしてはなんともリスキーなプレーだと一瞬思ってしまいましたが、オフェンスリーダーであるレナードのこの決死のプレーがノートルダム大の反撃に火をつけたと言えます。
All tied up ☘️
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さらにノートルダム大はレナードとラヴの波状攻撃でペンステート陣内を急襲。途中ペンステートのLBコビー・キング(Kobe King)のパスインターフェアレンスにも助けられ相手陣内2ヤードラインまで辿り着くと、最後はラヴのタックルされても倒れない魂のランでついにノートルダム大がこの日初のリードを奪います。
JEREMIYAH. LOVE. #GoIrish
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これで完全にモメンタムがノートルダム大へ流れてしまうかと思われましたが、返しのペンステートの攻撃ではアラーからワレンへの綺麗な27ヤードのパスプレーで一気にノートルダム大陳内へ侵入すると、さらにもう一人のTEカリル・ディンキン(Khalil Dinkin)への絶妙なパスを決めて一気にレッドゾーンへ。そして最後はハンドオフを受けたシングルトンが素晴らしいビジョンでTDラン。試合を振り出しに戻します。
さらに次のノートルダム大の攻撃でレナードの一発目のパスをDEであるデナイ・デニス・サットン(Dani Dennis-Sutton)がジャンプ一番でインターセプトする離れ技を披露。
DANI DENNIS-SUTTON INTERCEPTION
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このチャンスを逃すまいと一気に攻め込むペンステートはシングルトンのこの日3つ目となるTDランが決まって再びリードを奪い返し、離れかけていたモメンタムを自らの袂に手繰り寄せます。
ただ勢いを止めなかったのはノートルダム大も同じ。第4Qに入り残り時間も半分を過ぎようとする頃、レナードは得意のランとこの日の後半覚醒したかの如く冴えたパスで相手エンドゾーンへ邁進。クリティカルな場面で3rdダウンをコンバートしたり、ダブルムーブで相手DBをフリーズさせたりと完全にオフェンスをコントロールした場面で迎えた残り時間約5分。
右奥に展開したWRジェイデン・グレイトハウス(Jaden Greathouse)は絶妙な足捌きで相手DBを手玉に取ってオープンになるとそれを見逃さなかったレナードがグレイトハウスに完璧なパスをヒット。さらにそれを受け取ったグレイトハウスはSジェイレン・リード(Jaylen Reed)をも見事にかわし、今シーズンのノートルダム大のパスプレーとしては最長となる54ヤードのパスTDを決めて土壇場で同点に追いつきます。
Jaden Greathouse breaking ankles out there like it’s 2k. He got more moves than a Military family 🔥 @NDFootball
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残り時間はあとわずか。どちらかが点をとった方がそのまま勝ち抜けるか、もしくはオーバータイムへ突入するかというシチュエーションを迎えます・・・
互いがパントを余儀なくされ迎えた試合残り時間47秒。攻撃権を手に入れたペンステートは残り時間が限られていたとはいえ、自陣15ヤードからの攻撃で1つでもロングプレーが出てFG圏内へ持ち込めればあわよくば勝利、そうでなくてもオーバータイムに持ち込むというのが定石だったはず。
そんな中迎えた残り時間33秒。アラーはなんと自陣内で痛恨のINTパスを犯してしまいます。
Notre Dame picks off Drew Allar late in the fourth 😳 pic.twitter.com/F0SZvM5fFa
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この絶好のチャンスをノートルダム大が見逃すはずもなく、Kジェターが残り時間を7秒残して勝ち越しのFGを決めます。結局これが決勝点となり、ノートルダム大が激闘を制したのでした。
アラーの痛恨のミス
試合終了間際で起こったアラーの痛恨のパスミス。このプレーではアラーのメインターゲットであるTEワレン(#44)は左サイドのスロットに位置しています。注目は左側のBギャップに構えるLBジェイレン・スニード(Jaylen Sneed)です。
スナップを受けてドロップバックするアラーは明らかにワレンへのパスを狙いますが、ワレンは完璧にカバーされています。さらに他の二人のレシーバーもディフェンダーにぴたりとつかれてアラーはパスを投げることができません。
そしてそこにスニードがブリッツをかけてアラーへもう突進してきます。このプレッシャーを受けなんとかスニードをかわそうとしますが、左にいたRBアレンへのチェックダウンが目に入らなかったのか、足元もおぼつかないままオマリ・イヴァンズ(Omari Evans)にパスを投げますが、アンダースローでこれがクリスチャン・グレイ(Christian Gray)にイターセプトされてしまったのでした。
ペンステートの敗因
上記に挙げた、試合を決定づけてしまったアラーのミスだけがペンステートの敗因というわけではありませんが、この場面で顕著だったのが相手DBを引き離すことができるWRが今季は皆無だったということです。TEワレンは年間最優秀TE賞「マッキー賞」を獲得した選手ではありますが、彼だけではダイナミックなパスオフェンスを構築することは難しいと思うのです。
新しいOCであるアンディ・コテルニッキー(Andy Kotelnicki)氏のプレーコーリングは往々にして機能していましたが、スピードスターが不在だったのはやはり大きかったと思います。実際この試合でポジティブヤードを獲得できたレシーバーは全てTEかRBでWRは全くパスプレーに貢献できていなかったということが言えるのです。
当然アラーの最後の判断ミスは事実として受け止めなければなりませんが、せめてあと1人相手DBをセパレートできる、頼れるレシーバーがいれば試合は変わっていたのかもしれません。ディフェンスは手負いながら大活躍したDEアブドゥル・カーター(Abdul Carter)やデニス・サットンなどを擁しノートルダム大オフェンスを苦しめていました。マッチアップ的に拮抗していたこの試合、もう一駒足りなかったペンステートが悲願のナショナルタイトルマッチへの切符を逃してしまったのでした。
ノートルダム大の勝因
これはひとえにQBレナードのプレーメーカーぶりが勝因だったと言ってもいいのではないでしょうか。
前半終了直前に脳震とうの疑いで退場し、ノートルダム大には不穏な空気が流れたことでしょう。当然ドクターらのゴーサインを受けてフィールドに戻ってきたのでしょうが、それでも身を挺して出場し続け、チームの逆転劇を演出した彼のリーダーシップにチームが引っ張られたということはあるのではないでしょうか?
あとは前半相手にモメンタムを奪われながらも、それに折れることなく後半戦い続けることができたメンタル面も忘れてはならないでしょう。ランでは204ヤード走られ、シングルトンに3つもTDランを許しはしましたし、またアンラッキーなパスインターフェアレンスを取られたこともありましたが、それでも最後まで仕事をして最終的にアラーのあのミスを誘ったわけですから、ディフェンスのチームエフォートは評価されるべきです。
(当然戦術やスキーム的な勝因・敗因はあったと思いますが、そこは素人なので割愛させていただきます笑)
総括
互いが非常に似たスタイルのチーム同士の試合ということでマッチアップ的には拮抗した試合になりました。前半はロースコアでしたが、後半に試合が動き出し、互いがリードを奪い合うという大変見応えのあるゲームでした。
ノートルダム大はこれで2012年度シーズン以来の全米王座決定戦の舞台に立つことになります。これに勝てば1988年以来のナショナルチャンピオンです。1月10日に開催されるコットンボウルでの勝者(テキサス大かオハイオ州立大)との対戦となります。
一方ペンステートは1986年以来の全米優勝を目指していましたがそこまであと一歩及ばず。またジェームス・フランクリン(James Franklin)監督指揮下で大舞台で勝てないというトレンドはここでも拭うことができず、この敗戦でAPランキングで上位5位以内のチームとの対戦戦績が1勝18敗(勝率5.3%)となってしまいまいました。1936年以来のレコードではワースト3の数字です。
ただ、今回の試合はフランクリン監督らが試合中に何かをしでかした、というわけではなかったと思います。当初のプラン通りシングルトンとアレンを軸にしたランオフェンスで相手を崩せていたと思いますし、アラーの終盤のミスの場面でもあの地点からランで攻めるわけにはいかなかったと思いますので、プレーコールは間違ってはいなかったと思われます。
カーターはすでにNFLドラフト入りを表明しましたが、リクルーティングにより選手層は十分なはず。あとはオフシーズンにトランスファーポータル経由で優れたWRを獲得することができれば、来年も再びこの舞台に帰ってくることは可能だと感じました。